土魔法勝負
土魔法って苦手なんだよね。私は土ボコしか出来ないし。
知らなかったよ、土魔法って大地に祈りを捧げてから呪文を詠唱するのか。大地に祈りを捧げずに、呪文を詠唱すると土ボコが出来るだけ。それが大地に祈りを捧げてから呪文を詠唱すると、初めて私は砂ゴーレムを作れた。
初等部に転入して良かったと思った瞬間だった。めちゃ初歩の初歩で躓いていたのがわかった。
「エマ、あなた土魔法使いなの、こんなにたくさん砂ゴーレムを作っているけど」
「私は風魔法使いなんだけど、面白くてついたくさん作ってしまったの」
伯爵令嬢のお供のみなさんがたくさん砂ゴーレムを作って私とハイディを襲わせようと頑張っている。残念、魔力不足で、砂ゴーレムがマトモに動かない。勝負を挑む前に自分の魔力量を把握しないとこう言う失敗に繋がるのよ。反省してもらおう。私は、砂ゴーレム軍団にお供のみんなさんを襲撃する様に命令した。
「エマ、みんな砂まみれで泣いているし、そろそろ止めたら」
「そうだね。みんな頭から砂をかぶって悲惨なことになってるよね、つい昔を思い出して悪ノリしてしまった」
私って相変わらずのイジメっ子だと思う。お供が惨敗したので、ボスが激怒して大人並みの大きさの砂ゴーレムを作った。で、そのゴーレムはお供の子たちにパンチを浴びせている。失敗したから制裁するのはわかるけどやり過ぎだと思うな。
「エマ、おかしくない」
「あの子、ゴーレムを止めようと呪文を詠唱しているのに、ゴーレムが止まらないの」
「ああ、アレは魔力が暴走しているのかも。ボスが魔力切れを起こさない限り止められないね」
上級魔法に下位の魔法使いの魔法を解除する「ディスペル」って魔法があるけど、初等部で教える範囲には当然入ってない。高等部3年生のギリギリ範囲の内容でかつ難易度は極めて高い魔法だったりする。私も知識としては知ってるけどやった事はない。
担当の土魔法の先生は所用で現在不在で止める人がいない。私はハイディをシールドに入れているので2人には被害はないので、傍観している。
「ハイディ、あなたも何かしなさいよ。あなたも伯爵家の娘でしょう!」
逆ギレしてる。勝負を挑んだ相手に救援要請って普通しないでしょうに。アレ、ハイディが大人並みのゴーレムを作ってボスのゴーレムに組み付いた。ハイディちゃんやるじゃないの。
ハイディがかなり苦しそうなので、私の魔力を少しトランスファーしてみた。拒否反応はでてない。これならイケるとハイディに魔力を供給し続けた。
ボスが魔力ギレで倒れた。ボスの砂ゴーレムは砂に戻った。土魔法勝負はハイディの勝ち。ただボスのお供の子たちはギャン泣きしてるし、ボスは失神してるのでかなり悲惨な状況にはなっている。担当教師は始末書では済まないと思った。
「エマって私に魔力をくれてたよね」
「ハイディが苦しそうだったし、つい出来心でしました。ごめんなさい」
「謝って貰わなくても良いの。助かったから、でも、私たちって初等部よね?」
「初等部ですね」
「初等部のあなたがどうして中級魔法の魔力供給が出来るのかしら?」
「出来てしまうわけで、なぜかと言われても困るの」
「エマってこの国の人じゃないよね、エマのアクセントってお隣の国のアクセントだと思うの」
「ええ、私はお隣の国で育ったの、隣の国は内乱が起こったので叔父様を頼ってこの国に来たの」
「ガーデン男爵家って王族の家臣で領地はないの、知っていた?」
「すみません、知りませんでした」
「エマ、あなたの叔父様のガーデン男爵様はもうすぐ破産するみたいね」
「ハイディ、あなたよく知ってるわね」
「昨日ね、父上から手紙が来たの、弁護士に依頼して潜入調査員を学校に派遣したので安心する様にですって、その子の名前も書いてあったわ。破産費用を肩代わりする代わりに名前を借りたと書いてあったの」
ハイディの父上殿、娘に内密の調査ではなかったのか? ネタをバラしてどうしたいのかな?
「あなたのお父様が知らせたのなら守秘義務違反にはならないわね、私はあなたのお父様から依頼されてこのクラスに転入して来た調査員で、私の本当の名前はエマ・フォン・バイエルンって言います」
「イジメの調査結果だけど、ハイディがイジメられていると言うより、一人空回りしているおかしな伯爵令嬢がいるだけだと書こうと思っていたのだけど」
 




