ギルド長に報告
「そう言う事で、今後は少女が望まない縁組とか奉公とかの話があれば、少女は誘拐せずにその少女の親たちを地獄に連れて行く事にするそうです」とこれが契約書ですと私とヘヴィモスさんとの間で結んだ契約書をギルド長に渡した。
「バニラさん、あなたの本名はエマ・フォン・バイエルン様で間違いないのですね」
「冒険者名はバニラですが、本名はエマ・フォン・バイエルンです」
「この契約に文句を言う者はいないでしょうね。最後にエマ・フォン・バイエルンを害する者はヘヴィモスが責任を持ってその者に地獄の責苦を与えるって書いてありますから」
これを書かしたのはディアブロさんな訳で、ヘヴィモスさんはそう言う事はしたくないって最後まで抵抗してたからヘヴィモスさんは悪くない。ギルド長には言えないけど。
「このエマ様の隣に座って『ヘヴィモス君』と言っている方はどなたでしょうか?」
「ええと、私の執事をされているディアブロ様です。本来なら執事とかはしない方なのですが、色々と事情がありまして」
「私には古代の悪魔に見えるのですが」
「さあ、私には素敵な紳士にしか見えません」と笑って誤魔化した。
討伐依頼は果たしていないので、報酬はなしとの事だったが、ギルドが危険手当は出すと言う。私は辞退したのだが、私のバックにヘヴィモスさんとディアブロさんがいるので、タダ働きをさせると悪魔に目をつけられるかもしれないので、受け取ってほしいと言われた。金貨30枚が私のギルドの口座に振り込まれた。なんかカツアゲしたみたいな気分になってしまった。
「エマ様、しばらくこの地に滞在していただく事になります。ご領主様から呼び出しがあるかと思いますので」
「ここの領主はホーエル系の貴族なので、バイエルンの娘が勝手に結んだ契約などお構いなしに破るのはわかっていた事なので問題はない」
私は娘たちを悪魔に攫われた親たちの代理で行ったのでペナルティはゼロだったりする、契約違反をした場合のペナルティはヘヴィモスに一任されている。娘たちの親、領主、教会関係者、ギルド長あたりまでは何らかのペナルティの範囲に入る。
契約を破れば私にペナルティがと思うだろうが、ヘヴィモスの保護下にある私にペナルティがあるはずがない。ディアブロさんが押し込んだ契約はそのための保険だったりする。
領主が悪魔ヘヴィモス討伐に兵士5000人を投入したとギルドから連絡が入った。そして、ここの領主で、病気で寝込んでいるはずのコンフォート伯爵から私に屋敷に来るようにとの通知が、討伐に出発してから数日後にギルドにもたらされた。
「ご病気が回復されて何よりです」と私は丁寧に挨拶をした。コンフォート伯爵はムットした表情になったものの貴族らしく表情を隠した。
「エマ・フォン・バイエルン嬢、病気見舞い大儀であった。今はこの通り元気になった」
「エマ嬢、この契約書はどう言う立場で悪魔と契約したのか尋ねたい」
「コンフォート伯爵様、娘を悪魔に攫われた親たちの代理として結びました」
「この契約を破るとエマ嬢に何か起こるのか?」
「私には何も起こりません。私は親の代理人に過ぎませんし、マア、親たちが請願に行った人たちあたりには何かしらの代償が支払わされるとは思います」
「コンフォート伯爵様は既に悪魔ヘヴィモスを討伐すべく兵士を送られたので、契約違反とは関係なく、何らかの代償を支払う事になりますが」
「悪魔ヘヴィモスは攫われた娘を解放していない」
「攫われた娘たちは既にバイエルン家で保護されています。悪魔に攫われた娘は最悪火あぶりになるのがこのご領地の慣わしとのことですので」
「この様な事態を招いた責任をとってもらいたい」
「コンフォート伯爵様、既に悪魔ヘヴィモスはアンデット15000の兵士をご領地に向けて出兵しましたので、私に出来ることはございません」
「コンフォート伯爵領をアンデットの軍勢に蹂躙されるのを見ているだけと言うのか!」
「王家並びにホーエル・エル・バッハ家に救援要請をされればよろしいかと」
「王家からは悪魔との私的な問題は当家で対応する様と返事が届いた」
「ホーエル・バッハ本家からは、内乱の鎮圧で兵が動かせないゆえ、しばらく持ち堪えるようにと返事が返って来た」
「すべて、その方の責任ゆえどうにかせよ」
「伯爵領様、アンデット15000の兵士をどうにかするのは私には無理でございます」
「バイエルンの兵士をここに派兵する様にそなたが要請せよ」
「間に合わないかと思います」
「ではどうすれば、アンデット15000の兵士が止められるのか?」
「一つだけ方法がございます」
「それは何か?」
「ご領主様のクビをアンデットの軍勢に投げ込めば、アンデットの軍勢はヘヴィモスの元に帰るはずです」




