冒険者になったので
私は冒険者になったので、宿屋ではなく冒険者ギルドが経営している宿泊施設に泊まる事が出来る様になった。支払いはギルドに預けたヒュドラー退治の報酬から支払われるので実質無料。当然食事代、飲み物代も支払わなくて良い。とっても気持ちが良い。しかも冒険者ランキング実質第2位の銀のプレート持ちなので待遇が良いわけで。問題は銀のプレート持ちは王都に集まっているので、依頼が山積みで私に幾つか片付けてほしいと、ギルド長からお願いされること。それが面倒くさい。
今回の依頼はヘヴィモスと言う悪魔を退治してほしいと言うもの。近隣の村から少女を誘拐している。おそらく食用にしていると思われる。領主に悪魔退治を依頼したらそれは教会に頼めと言われて断られた。教会に依頼したら軍隊で討伐する必要があるので領主に頼めと言われたのでギルドに話が回って来た。これはタライ回しって言うヤツだ。この依頼は冒険者には無理だ。銀の冒険者でも黄金の冒険者でも無理だ。悪魔は不死だし、ヘヴィモスって数百年はこの世界にいる悪魔なので人の手には負えない。
私の場合、お茶しか淹れないけど数千年もこの世にいる悪魔さんが執事をしてくれてるから、ディアブロさんが一緒なら生きては帰れると思っている。ディアブロさん頼みはキツいけど。ともかく記録用の魔石を持ってヘヴィモスの所に行く事にした。
雑魚のアンデットがわらわら出てきたのですべて浄化してあげた。私はこれでも聖女の称号持ちな訳で。ヘヴィモスさんはどこかなって思ったら目の前にお屋敷が現れた。
私を出迎えに数人のメイドさんがやって来た。みんな可愛い。食用ではなく鑑賞用で誘拐しているのかも。
「私はエマ・フォン・バイエルンです。ヘヴィモス様にご挨拶に伺いました。ヘヴィモス様のご都合が良ければお会いしたいのですが」
「お待ちしておりました。エマ様」
私はメイドさんたちに案内されて客間に通されてお茶を出されたら、ディアブロさんが現れて、私に出されたお茶を飲んでしまった。毒でも入っていたのか?
「さすがヘヴィモスです。良い茶葉を使っている」味見に来たのかよ!
「エマ様、ヘヴィモスより美味しいお茶でございます」そう言われてもヘヴィモスさんのお茶を飲ませてもらってないから比べられないです。
「お久しぶりです、今回の設定はセバスそれともセバスチャンでしょうか?」
もの凄く温厚な紳士が客間にやって来た。この方がヘヴィモスさんなの、ディアブロさんとやはり知り合いだったみたい。
「今回の私はディアブロと言う設定なのでよろしくヘヴィモス君」
ヘヴィモス君だってやはりディアブロさんの方が格上ですか。
「初対面では実はないのですが、初めましてエマ様」
「初めまして、ヘヴィモス様」
「さっそくですが要件を」
「それでけっこうです」
「まだ、何も話していませんけど」
「ヘヴィモス君は先を見通す悪魔ですので言わなくても伝わります」とディアブロさんが説明してくれた。
「攫って来て少女たちは全員解放します。それでよろしいでしょうか」
「はい、それで結構です」あっけない。ミッションコンプリートだ。記録映像を確認した。ちゃんと録画されていた。
「それは困ります」と少女たちが一斉に叫ぶ。
「ディアブロさん、ヘヴィモスが少女たちに魔法か何かで少女たちに言わしたの?」
「ヘヴィモスはその様な事はしません。『悪魔名鑑の奇悪魔編に極めて善良な悪魔で有名だ』と掲載されているほどの悪魔界の異端です」
「みんなさん、村には帰りたくないのですか?」
「はい」これまた全員揃って返事が返って来た。
「どうして帰りたくないのですか?」
一人の少女が「売られるからです」
この国では人身売買は違法なのだけれども、取り締まりがザルだ。子どもは親の所有物って考え方が一般的なのは私でも知っている。
もう一人の少女が「領主様の所に行かされます」
この子は領主のオモチャにされるのか。これでは村に帰りたくないはずだ。
「私としては、村に帰りたい方は帰れば良いと思います、決めるのみんなさんですから」
「エマ様、ありがとうございます」とこれまた一斉に練習でもしていたのだろうか?
「ディアブロ様、私が探し当てた最高級の茶葉で淹れたお茶はいかがですか」
「最高級茶葉ですと、頂きましょう」
ディアブロ様だって格上は違うね。お茶が出された。とっても良い香り、味も最高だわ。隣でディアブロさんが苦い顔になっていた。
「ヘヴィモス君ちょっと良いかな、お嬢様少々失礼します」
お茶で負けたからって喧嘩で勝とうとかはダメだよとって心の中で言っておく。
ヘヴィモスさんが「ありがとうございます」ってお礼を言われた。心の中もヘヴィモスさんて読めるの? 凄い。あっなんかディアブロさんが更に苦い顔になった。ディアブロさんが最高ですよ。ディアブロさんの表情が柔らかくなった。良かった。




