ヒュドラー退治
本当に早朝だった日はまだ登っていない。朝食は宿屋の人にお願いしてお弁当にしてもらった。
ラルフの装備は昨日のまま、キャサリンさんは槍を持って来てるけど、あの槍だとヒュドラーの硬い皮膚に弾かれる。
「キャサリンさん、すみませんがその槍にも魔力を付与します」
キャサリンさんは槍を他の人間に触られるのが嫌だった様だけれども、ラルフに言われて不承不承私に槍を私に預渡した。思った以上に軽い、この槍は鉄製ではなく、魔物の体の一部を槍に加工したものだ。キャサリンさんには魔力があるのだから、魔力が通り易い様にしておこう。抵抗がほぼゼロになった。これでヒュドラーの硬い皮膚も貫くはず。
「キャサリンさん、槍に魔力を込めて下さい」
「ウソでしょう、刃先から炎が出てる」
しまった調子に乗って魔改造したみたい。
「バニラさん、ありがとう」お礼を言われたのでノーカウントにしておく。
沼に着いた。今日はとってもお天気が良くて気持ち良い。ヒュドラーが住んでいる沼には見えない。最近引越したばかりなので魔物が住む雰囲気が出せてないのかも。
「ヒュドラーいませんね」
「俺が小舟を漕いで誘い出す」
「ラルフさん、囮になる前に初手でヒュドラーに喰われますね」
「ダメか?」
「まったくダメです、私が沼を風魔法でかき回す様にするので、ラルフさんはヒュドラーを沼から陸地に上げて下さい」
「承知した」
この人たちよく今まで生きてこられたのが不思議。これってほぼノープランでヒュドラー退治にやって来ている。普通は沼に爆発魔道具とかを放り込んで何とかヒュドラーを陸地にあげてヒュドラーの動きを封じるのが一番の難問だったりする。
私が沼をかき回したら、三つ首のヒュドラーが沼から出て来た。ラルフさんがヒュドラーに向かって大声で挑発している。ヒュドラーが致死性の毒をラルフさんの周辺に撒き散らかしてる。運だけは良い様で少しも浴びてはいない。
ラルフさんからヒュドラーの関心を私に向けさたい。威力を最小限に抑えた火球をヒュドラのに向けて繰り返し放った。首二本は私に向けて毒攻撃、一本はラルフさん狙い。
キャサリンさんは槍に魔力を充填中。ヒュドラーは沼から出て来ないし、とっても困った状態になっている。ラルフさんも疲れて来た様でまずい。
キャサリンさんは槍に魔力の充填を完了した。投げた。刺さったでも浅い。ヒュドラーが体を捩って槍が抜けて飛ばされた。私は槍の回収のためにフローティングボードに乗って落下する槍に一直線に向かった。ヒュドラーの首が邪魔だったので三つともウインドカッターで切断した。キャサリンさんの槍を回収してフローティングボードに槍を乗せてキャサリンさんの所に戻した。
ヒュドラーが沼に潜ろうとしたので、沼を凍らせた。これで準備が出来た。後はラルフさんに戻って来て欲しいのだけれども、凍った沼を上手に滑ってなぜかヒュドラーを、ラルフさんは剣で刺しまくっていた。再生するからまったく意味がないし、毒がかかれば死ぬし、何をやっているのか?
私は相変わらず火球攻撃でヒュドラーに嫌がらせを続けている。
キャサリンさんの槍に魔力が充填された。キャサリンさんはヒュドラーに槍を投げて次に雷雲を呼んだ。槍はしっかりとヒュドラーの背中に刺さった。ラルフさんはまだヒュドラーを剣で刻んでいる。そろそろ、戻らないとヒュドラーもろとも死んじゃうと思う。
槍に雷が落ちた。ヒュドラーは体の内部から破裂した。そしてラルフさんもその巻き添えで飛ばされた。このパーティは運だけで生き残っているパーティだ。神官の人もケガで不参加ではなく、ノープランなのに嫌気がさしたのではと思う。
ラルフさんはやっぱり生きていた。ただ臭うけど、吹き飛ばされてラルフさんは堆肥に突っ込んでいた。
ラルフさんにヒュドラーが動けなくなったのにヒュドラーを剣で刺していたのはなぜかと尋ねたら、面白くてやめられなかったと言う。ラルフさんは冒険者には向いてないので早くやめた方が良いと思う。
キャサリンさんは「バニラさんてヒュドラーの首をいっぺんに全部斬れるんだ、沼も凍らせるし全然、並の並じゃないよ」「世の中には上には上がいるので、私の周囲にいる人から見ると私はまだまだです」
ギルドに戻ってラルフさんがヒュドラーを退治したことを報告した。魔石で記録した動画を見せていた。風景を記録できる魔石、たぶん魔道具っていうのがあるんだ。ヴィクターに聞いてみよう。知らなかった。
どう言うわけか私の周囲に人だかりが出来ている。受付のお姉さんがここのギルド長が呼んでいるので2階のギルド長室に来てほしいと言うのでついて言った。
「あんたバニラさんて言うんだね」
「はい、そうですけど」
「冒険者登録はしてはいないね」
冒険者登録をしてないとヒュドラー退治をしてはいけなかったのか。私は旅をしているフリーの魔女設定にしておこう。
「はい、私はフリーの魔女でして、今回はラルフさんにちょっとしたお手伝いをしただけなので」
「記録を見せてもらったけれど、バニラさんは完璧にヒュドラー退治のサポートの役割を果たしていた。キャサリンがヒュドラーのトドメをさした。ラルフは問題外だが。そう言う事でバニラさんを特別に冒険者登録をしたので、この銀のプレートを渡す」
「報酬は冒険者ギルドに預けておくで、良いかい、必要になれば、どこの国のギルドで引き出せるので便利だ」
「ありがとうございます、喜んで銀のプレートをいただきます」
私は冒険者になった。銀のプレートは黄金のプレート、金のプレートの次だと言う。現在は黄金のプレート持ちはいないので実質、冒険者ランキング第2位との事、私って凄いと思ったしまった。天狗になってはいけない。自重しよう。銀のプレートを首からかけて1階に降りたら、各パーティのリーダーから、ウチのパーティメンバーに入って欲しいと声をかけられた。
ラルフさんを見ると萎れていたので、「私ってまだラルフさんとこのパーティメンバーですよね」と言ったら急に元気になって、「ウチのメンバーにちょっかいを出すな」ってパーティリーダーたちを追い払ってくれた。
萎れていた理由はギルド長が言った様に何の役にも立っていないため報酬はほぼゼロと言われたそうだ。
私はフリーの旅の魔女なのでこの街は出て行くけれども、この街に来た時はギルドに顔出すのでまた魔物討伐に加えてほしいと言っておいた。感激して泣いてくれた。ただラルフさんがこのままだと次までに生きているとは思っていない。
有名人になってしまったので早々この街を出発した。




