二年生の指導、内乱の様子
俺は平民に教えて貰うのは断わるという頭の悪い連中が二年生にはやたら多かった。頭にきたので、ニコラをバカにした連中には追尾型ウインドカッター(改)で追い回してやった。ウチのヒーラーを舐めるな! 反省点もある。魔力切れで動けなくなった連中を回復させているのはニコラだった。ごめん仕事を増やした。ニコラは気にしていないみたいだった。バカにした連中もその後は多少は大人しくなった。
二年生の指導をしてみて、攻撃に特化した生徒が多すぎる。バックアップする子がいない。ディフェンスが脆すぎる。私は徹底的に防御せざるを得ない様にバカスカ攻撃した。必死に防御魔法を研究した様で攻守のバランスが良くなった。それに比例して手加減なしの、あるいは考えなしの攻撃バカと言う二つ名が私に献上された。昔の私はそうだったから、受け入れている。
内乱が小康状態に済んでいるので、一年生、二年生の生徒が減る事は少なくなったが、それに比例して、バイエルン家が、王家を蔑ろにしていると言う貴族が多くなってきた。領主(仮)、実際にはハンニバルだが、バイエルン家はもう各貴族の揉め事には介入しない方針を宣言した。王命は等しく各貴族が拝命するべきで、バイエルン家のみがその栄誉を独占してはならないともっともらしいことを言っている。
王家はバイエルン家に敵対していた貴族に派兵を要請した。その貴族にしてみれば、バイエルン家の評判を落とすのが目的なので、派兵などとんでもない事なのだが、王命に反すれば反逆罪が適用される。そうなると、その貴族の領地にバイエルン家の兵士が派兵される。その領主がイグノー教徒を弾圧していれば、イグノー教徒が主体のバイエルンの兵士が何をするのかは明白だったため断れずに派兵する羽目になった。
当然、そうした貴族の兵士の士気が低い上に統率が取れていない。さらに貴族が兵士への給与の支給を渋る、食糧の補給すら満足に行われないため、現地調達と言う名目で掠奪行為に走る部隊が多い。現地の住民に多大な被害を与えている。結果、紛争は泥沼化し長期化した。
王家の権威はガタ落ち。派兵した貴族は現地住民から恨まれるというハンニバルの目論み通りになっている。
ハンニバルに内乱を終わらせたいのだけれどと、相談したところ、姉上が現地に入って紛争を起こしている連中をミンチにすれば即座に終わりますと言ってくれた。
私を魔王にしたいのか。執事のディアブロさんに相談すれば喜んで手伝ってくれそうだ。私のお茶を淹れる以外は紛争地域で色々やって遊んでいるみたい。
以前のようにバイエルンの兵士が紛争地域に駐屯して貰えないかとハンニバルにお願いしてみたけれども、王家の信頼度が落ちすぎている。内容はどうあれ王家が貴族に命令して紛争地域に軍を赴かせるのは、王家の権威を高める。バイエルン家は派兵要請のあった貴族に睨みを効かせるのでダメだと言われてしまった。
ハンニバルは王家の軍隊に入りたいと、王家にお願いしているそうだ。しかし、ハンニバルは天才だけど未だ三歳の幼児なので、軍ではなく王子のお付きならと言われたらしい。王家もバイエルン家の跡継ぎのハンニバルを王城に入れられれば、バイエルン家は今も王家の忠実な臣下である事を世に示せるので、ハンニバルが王子のお付きになるのは大歓迎なのだ。しかし、ハンニバルは王子のお付きは御免だ、とにかく軍隊に入れる様に協力してほしいと言う。
私も三歳で軍隊に入るのは無理だと思うので。私はお付きで良いと思っている。どうしてハンニバルは軍隊に入りたがるのかがわからない。第一、王家の軍隊って見栄えだけの軍隊なので、あんなとこに入ってもお飾りになるだけなのに。
ハンニバルに「彼女」の事を尋ねたら未だに一言も話さないと言う。姉上も妹たちを避けるのではなく、会った方が良いと注意をされてしまった。私は、エリザベートにも、「彼女」にも会っていなかった。エリザベートには会いたかったけれども、エリザベートは母上のお気に入りだったので会わせてもらえなかった。「彼女」は怖かったので会っていない。
エリザベートには会おう。「彼女」にも頑張って会おうと思う。「彼女」に会って私の何度目かの未来を尋ねてみようか? やっぱり怖い。