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古代ダンジョンに潜るその5

「空間切断って何ですの? ミサカお姉様」

「簡単に言えば、この空間に細かい切れ目を入れる魔法だな、けっこうな大魔法で集中力が必要になる、エマ、ウエルテルを救出しておいでもうすぐ魔力切れだ」


 私はミサカの言葉を最後まで聞かずに走り出していた。あっ私では、ウエルテルを運べない。どうしよう。ウエルテルを浮かせて引っ張って戻る。いや、浮かせた板にウエルテルを乗せて飛ばす方が早い。やるしかない。名付けてフローティングボード。

 

 私はウエルテルの体を支えて、フローティングボードの上に寝かせた。板と言っても見えないのでウエルテルが空中に浮いている様に見えるけど。フローティングボードをニコラに向けて飛ばした。私はスケルトンをファイアボルトで燃やしながらみんなの元に戻った。


 雑魚でこれだけ体力と魔力を消費するとなると、雑魚と主人のコンボになると、かなりマズいと思う。ウエルテルはニコラに任せた。ニコラに魔力をトランスファーしないといけない。ヴィクターは爆砕魔道具切れだし、マリアもニコラの元で魔力の充てん中だし。数の暴力はキツいなぁ。


「カオリ、ここの主人殿はどう思っているかなぁ」

「意外だと思っているのでは、私たちが出て来ないのを」


 今度は死者の軍団がやって来た。「ここの主人は慎重な性格の様だ。数は一万というところだろうか。持久戦に持ち込んで、確実に勝利を得る計算だろうな。ここでエマを投入するか」


「エマ、出番だよ」とミカサに呼ばれた。


 ウィンドミルとファイアボルトのコンボで殲滅せんめつだと私は思った。持久戦は避けたい。どうしてもここの階層主に出て来てもらわないと。全力でヤル。


 バイエルン家の特徴全開の攻撃に振り切った戦いを展開した。ウインドミルで死者を、切り刻んで細くなったとこを特大のファイアボルトで燃やし尽くした。一万の軍勢があっと言う前に目の前から消えた。


 これでここの主人が出て来ることを願いたい。霧がさらに濃くなって来た。この階層主がやって来たみたいだけど、マズい精神干渉魔法だ。


 ここは、私の屋敷が見える。父上が抱っこしているのは私だ。「この子はダメだわ、才能のカケラもないわ」「あなたがどうにかしなさい、別に処分しても良いことよ」「この子の名前は?」「あなたが自由につければ良いわよ」


 父上は私に、父上の最愛の妻になるはずだった婚約者の名前、「エマ」という名前を私に名付けた。私にとって最悪で最高の思い出かもしれない。今、私は泣いてる。


 私は母上に抱いてほしくて色々頑張った。夜泣きもよくした。ずっと父上がアヤしてくれていた。ごめんなさい、私、やり過ぎました。父上は本当に寝ずに頑張ったんだ。


 母上は私をまったく見ていなかった。もしかしたら、今の私はこの頃よりは幸せかもしれない。だって母上に心底憎まれているもの。母上の目には私がしっかり見えているから。


「エマ、しっかりして」私は現実に戻った。無数のスケルトンと死者たちがこちらに向かって来ている。ヴィクターもウエルテルもニコラもマリアもまだ過去に囚われていて現実世界に戻った来てはいなかった。


「エマ、私たちでスケルトンと死者たちを引き受ける、エマはここの階層主をお願い」


「ミカサお姉様、私はエルダーリッチとか吸血鬼の倒し方がわかりません」


「この世ならざる者は、浄められれば天界に戻される、エマは既にその方法を知っている」

「階層主への道は私たちが切りひらく、後はエマに任せた」と言うなり二人はスケルトンと死者の群れに飛び込んで行った。

 私は二人が切りひらいてくれた道を走った。


 階層主は私がやって来たので、少し驚いた様に見えた。もっとも顔が骸骨なので、表情はわからないけれど。それとガッカリした雰囲気も伝わってきた。私では役不足なのは十分わかっている。


「お嬢ちゃん、私には物理攻撃も魔法攻撃も通じないけどどうするのかな」

「正直に言ってわかりません」

「そう、それじゃあすぐに楽にしてあげるよ」


 精神干渉魔法だ。薔薇の世話が大変だった。私一人しか世話をする人がいないし、今回は急に旅に出ることになったから、庭師さんにお願いできてなかった。ローレンスさんが手配してくれていると良いのだけれども。


「お嬢ちゃん、どうして薔薇の心配をしているのかな。自分のことが心配じゃないのかな」


「大変だった思い出だったもので、一人で薔薇の世話をするのは大変だったなあって思ったら、庭師の方に薔薇園の世話を頼むのを忘れていたことを思い出しました」


「そうなんだ、一人でたくさんの花の世話をするのは大変だと思うよ」


「お嬢ちゃんの記憶を覗いたら、とりあえず浄化の祝詞のりとが使えるみたいだし、神々からのギフトも貰っている様なので試しにやってみたらと思うわけよ」


「階層主さん、もし成功したら天界に行ってしまうじゃありませんか」


「私も好きで階層主をやっているわけではないのさ。出来れば輪廻の輪に戻りたいの。これって言わば呪いかなぁ、もうね死者たちの愚痴を聞くのに疲れたの」


 階層主さんが言うには、元冒険者でヒーラー役だった。死者の軍団に襲われた際に、他の仲間を逃すために、殿しんがりを務めて死んだのに、ダンジョンマスターがお前をエルダーリッチに任命するって、宣言されたお陰で輪廻の輪から外れてしまったそうだ。


「それではやってみます。『祓えはらたまえカム、ながら浄めたまえカム、守りたまえ、さち、さきわえ』


 階層主さんが、「気持ちいいねえ、数百年ぶりにお風呂に入ったって感じがするよ」そう言うことを言われるとかなり引くのですけど。


「お嬢ちゃん、私、輪廻の輪に戻るので後はよろしく」と言って階層主さんは光になって飛び去って行った。


「エマに聖女の称号を与える。エマが望むならここの階層主になることを許可する」と言う声が聞こえた。


「階層主はお断りします」


「不老不死だし、死者やスケルトンを無限に出せるし、ここにやって来た冒険者をボコボコにしてしかも威張れるよ」


「それがダメならヒーラーの女の子でも良いのでここに残してくれると、魔剣とかオリハルコン製のヨロイとか古代金貨一万枚をあげるけど、どうかなあ」


「お断りします」


「欲がないねえ、人間欲がないと楽しくないと思うよ」とダンジョンマスターの誘惑が終わった。

 メダルは階層主のテーブルの上に置かれていた。それをポケットに入れてみんなの所に戻った。


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