廃墟はいつの間にかゴブリンの巣になっていた
ホーエル・バッハは暗闇が苦手な様で、私たちバイエルンから廃墟に入った。少し入った所で一つ目のメダルを手に入れた。階段を降りる途中、臭いがする。腐敗臭だと思う。動物の死骸が中にある。それとどうも見られている様な気がするので、ウエルテルに「見られているね」と言うと、「ここゴブリンの巣穴になってる」と断言した。
先頭は私、ヴィクター、女の子2人とその後ろにウエルテルの体制で進んだ。奥に行く程臭気が強くなっている。ヴィクターは爆砕魔道具を雑嚢から取り出し、ウエルテルも魔道具を取り出した。
突然、横の壁が崩れてゴブリンの奇襲攻撃が始まった。私が全員をシールドで保護しているのでゴブリンの攻撃はいっさい通らなかった。ヴィクターが両サイド、正面のゴブリン10数匹に魔道具を投下した。ゴブリンはあっさり爆砕した。ウエルテルはゴブリンが出てきた、横穴に魔道具を転がした。煙の魔道具だった。後詰めのゴブリンが飛び出してきた。これもヴィクターの魔道具であっさり爆砕した。ゴブリンが20数体か、ここはかなり大きな巣穴になっているかもしれない。
ここのゴブリンは奇襲ができる程度の知恵もある。ホーエル・バッハのサポートをした方が良いとヴィクターが言い出した。ウエルテルも僕もその意見に賛成だと言う。リーダーは私なので、「メダルの事は忘れて」「ホーエル・バッハのサポートに行きます」女の子2人は「やっぱりこのグループでよかった」とハイタッチしていた。
私は集中してこの廃墟にいる魂と会話をした。ホーエル・バッハの子たちがゴブリンに囲まれている。向こうだ。私たちは走り出した。「人魂」が案内してくれているのだけど、私以外には見えていない。
嘘でしょう。ゴブリンが100匹近くもいる。装備も安物だが着けている。「エマ、ここではファイアボルトはダメだ、天井が崩れる」「わかったウエルテル」ウインドカッターの乱れ撃ち、練習の成果が実ってスッパと切れる。私、今無双をしている。相手はゴブリンだけど。
ホーエル・バッハの子に試供品のエマ特製治癒のポーションを配ったけれど、薬臭いって言われて不評だった。そう言えば市販品は甘い香りをつけていた。今更だけど。薬臭いこれらのポーションは原価近くまで下げないと売れないかもしれない。
もう一つの班も襲われていると「人魂」が言って来たので助けに向かった。元気になったホーエル・バッハの子たちも一緒について来た。メダル探しはどうしたの?
「この廃墟はおかしい、オーガなんかいるはずがない。ゴブリンも多すぎる」
もう一班の子たちが戦っていたのはオーガが3体よく頑張ったけど魔力切れ寸前だ。
「ここは僕に任せて、エマはみんなにシールドを重ね掛けをして、オーガは魔法が使える」
ウエルテルは私のシールドから出ると口でハンカチをくわえ、オーガの足元に魔道具を転がした。オーガは苦しいのか、大きな火球を見境なしに連発していた。突然オーガが倒れた。そこには胴と離れたオーガのクビが3つ落ちていた。どうやったのかがわからない。ウエルテルがしたのは間違いない。切断面は波打ってはいなかった。スパッと切れていた。風魔法ではない。
「ここの空気は汚染されている。直ぐに出口に向かう」「エマ、出口に向かって」
「了解、ウエルテル」
ホーエル・バッハの子たちが仲間を抱えて出口から出た。そこでグッタリしてる子たちに、私は売るほどあるポーションの試供品を配った。やはり臭いがキツいと不評だった。心のメモ帳にポーションの臭いの改善と記しておいた。
ローレンス校長が「出て来るのが早かったね」とユング君にお茶を入れさせて、一人お茶会をしていた。「校長、ゴブリンに襲われました。あそこは大規模なゴブリンの巣穴でした。さらに、オーガが3体もいました」とウエルテルが早口で言った。
「廃墟なのだから魔物が住んでいてもおかしくないでしょう」
「君たちってどうして、冒険者さんみたいに斥候とか出さないのかなあ」
「廃墟なんて迂闊に入ったら死んじゃうよ」
「校長先生が既に入ってメダルを隠したと言ったことで、僕たちをミスリードしましたね」
「さすが、メンゲレ男爵の仕込みだね、ブラボー」
あの母上が手玉に取られたのがよくわかった。ローレンスさんは母上や私よりも更に性格が悪い。




