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各派閥ごとの演習と春季大行軍その3

 春季大行軍で亡くなった生徒30人、全員が凍死だった。手足の指を切断したもの87人。行方不明者が15人。亡くなった生徒は、王党派と無派閥の生徒たちがほとんどだった。多くのホーエル・バッハの生徒たちは装備が良かったこともあって軽い凍傷で済んだ。しかし、暗闇を極度に怖がるなど、心に大きな傷が残った。自力で下山したのは、私たち3名のみ。王立魔法学校創立以来の大惨事として記録される。


 この大惨事を起こった原因はホーエル・バッハ派閥に属している教師が下見に行き、山の状況を派閥には正確に報告したが、学校長、大行軍の直接の責任者には例年通りの山の状況と嘘の報告をしていたためだった。

 

 その教師はこの様な大惨事になるとは予想していなかった、王党派の生徒が軽い凍傷になる程度の嫌がらせをするつもりだったと必死に抗弁したものの、王党派はもちろん、自分たちの子どもの心を傷つけられたホーエル・バッハの親たちの怒りが収まるはずもなく、即日処分された。その教師の親、家族、親族も連座制を適用されて一斉に処分された。


 校長は辞職し謹慎処分。大行軍の直接の担当者は免職の上10年間の禁錮刑が言い渡されけれども、その教師は言い渡された翌日自死した。


 私たちは、王家より多くの生徒の生命を助けたとの感謝状が贈られた。まったく嬉しくない。


 学校は一月閉鎖されることになった。父上から学校が閉鎖されている期間屋敷に戻ってくる様にと手紙が来たが、私は寮に残るとことにした。学校の図書室は開いているので、集中して受験勉強をするつもりだった。


 私は図書室で受験勉強をしていると、ヴィクターがやって来て、二年生の授業は行わない。課題図書のレポートを提出するだけになりそうだと言う。正式発表は新校長の赴任後らしい。


 この有り様では、王立魔法学校の学校長の成り手はいないのではないかと思う。学校が完全に崩壊している。特に二年生の多くは学校の閉鎖が終わった後も休学するらしい。場合によってはそのまま、派閥が運営している学校に転入するみたいな話が流れている。


 ミカサから、一時帰国するのでエマもくる様にとの命令が出された。拒否権はないとの事だった。マア、多少は予想はしてたけど。ミカサには必ず帰国させてくれる事を誓ってもらった。拉致する気が満々だったから。それと一度黄金の国を見て見たかったしね。


 ヴィクターとウエルテルはお留守番と言う事でかなり不服そうだった。ミカサには二人とも逆らえないからって、私にグチグチ言うのはやめてほしい。


 私、ミカサ、カオリさんが船に乗った。これが海か。バイエルンは内陸部なので海を、私は見たことがなかった。


 ヴィクターとウエルテルが「土産待ってるよ」って叫んでいたが、聞こえなかったことにした。男の子がほしいお土産ってわからないし。黄金とかは絶対買えないから。

 

 潮風ってベタベタする。沖に出たらそれほどのベタベタ感はないそうだ。でも毎日髪を洗いたくなるみたい。けれども船では真水は貴重なので、ミカサでも髪を洗うのは一週間に一度程度。カオリさんはメイドなので、国に着くまで洗えないそうだ。私はどうしたら良いのだろう。


 船が港を出て沖に向かった。確かに潮風の感じが変わった。ベタつく感じは減った。それにしても、この船はかなり揺れる。沈まないかとても心配になる。たまにクラーケンと言う魔物も出ると言うし。不安しかない。


 船の両側にイルカという魚みたいで魚ではないと言うよくわからない生き物が泳いでいる。イルカは好奇心が旺盛なので船に併走して泳ぐこともあるそうだ。


 私の知らないことばかり。夜は星を見ながら進む方向を決めている。私にはどっちが北やら南やら太陽が出ていないとわからない。


 私は船に酔わない体質みたいで普通に食事が出来ている。カオリさんは顔色が悪い。ミカサは元気いっぱいでクラーケンでも出て来ないかなあって言う。私に一口サイズに切ってもらって焼いて食べたいそうだ。クラーケンって言われてもわからないし、未だにスパッと切れないので、お好みの大きさに切れるかどうか。

「クラーケンが出たぞ」と言う声が甲板から聞こえた。

「エマ、行くよ」

「はい」と言ってミカサの後をついて行くとデカイ、ヌメヌメして白い生き物が長い足をうごめかしている。気持ち悪い。

「エマ、ウインドミル」と言われたので、クラーケンに向けてウインドミルを放った。四角く切れたクラーケンをミカサが回収している。なんか臭う。


 一口サイズに揃えられたクラーケンの切り身が焼いて出されてきた。臭いはない。お醤油というソースに軽くつけて食べたら、意外に美味しかった。ミカサがご機嫌だ。でも変なことは言わないでほしい。無事にヒノモトに着きたいから。

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