各派閥ごとの演習と春季大行軍
クラスでの演習は不可能になったため、学年ごとにある派閥対抗での演習が行われている。無派閥の者は小派閥に毎回振り分けられている。私とヴィクターとウエルテルの3人はバイエルン派閥に分類されて演習を受けさせられている。通常は相手と同じ人数になるように無派閥の生徒が臨時参加していた。けれども今回の演習はホーエル・バッハ派閥と当たる。
ホーエル・バッハは40名の大派閥なので、ウチには助っ人の無派閥の生徒が37名が入るはずだったが選ばれた全生徒たち全員が拒否したため、私たちは魔道具の使用が認められた。最大派閥に目を付けられている私たちの助っ人にはなりたくないのはよくわかる。
魔道具の使用が認められたので、ヴィクターのファイアボルトの代用魔道具、魔力感知追尾型炎魔道具一型をヴィクターは絶賛製造中。
ウエルテルは、致死毒の魔道具を作るわけにはいかないので、呼吸困難になる魔道具をこれまた絶賛製造中。これもかなり危険だけど。ウエルテルはちゃんと救急処置をとれば後遺症は残らないと恐ろしいことを言ってくれる。
演習が開始された。私はヴィクター、ウエルテルをシールドに入れて防御役に徹した。ヴィクターの魔道具は面白いように相手に当たって爆発している。かなり火力が強いので、当たった子はが気の毒に思えた。
ウエルテルの魔道具はヤバい。近くに落ちただけでバタバタ生徒が倒れて行く。ホーエル派閥のみんなさんは開始10分でリザインしてしまった。大量に残ったこの危険な魔道具をどこに保管すべきか悩むことになった。
私、ヴィクター、ウエルテルの3人は特別枠に入れられ演習への参加が認められなくなった。「触らぬバイエルンに祟りなし」との格言ができた。
春季大行軍が実施される、まだ残雪の残る雪山の山頂まで登る。その途中で遭遇した氷雪系の魔物を刈って、倒した魔物の一部を切り取って麓で待機している教師に狩った魔物の一部を提出して、狩った魔物が多いものほど得点がもらえる。ただし、氷雪系の魔物は山から下ると溶け始めるので、下山は迅速にと言われた。登山は単身でも良い。単身だと得点はそのまま成績に反映される。グループだと得点をグループの人数で割られてしまう。
私は単身で登山するつもりだったが「エマさん、僕たち魔物との戦闘は不向きなのでよろしく」ってヴィクターとウエルテルが私を含めてグループ登録していた。二人とも私におんぶに抱っこをするつもりだ。けっこうムカつく。
山に登り始めたものの、かなり雪が残っていた。先頭はヴィクターが歩き、真ん中は私、その後ろはウエルテルが歩くことにした。山の中腹まで登って来るとヴィクターの腰近くまで、私だと首の高さまで雪が積もっていた。面倒くさいのでファイアボルトで雪を吹き飛ばそうかと私が言うと雪崩になるからやめてほしいとウエルテルに止められた。
私たちより先に出発したグループの足跡とかがまったくない。ヴィクターが後のグループも自分たちの大変さを思い知れって元に戻したのではと言う。そんな魔力の無駄遣いをせずに協力しようよって思った。
悲鳴が聞こえたような気がした。ヴィクターもウエルテルも聞こえたみたい。「道を踏み外して谷に落ちたみたいだ」とウエルテルが言う。雪で見えなくなっているけど、両側が谷になっていることもあるので、ゆっくり、足元を確認して進むことにした。みんな浮遊魔法が使えるはずだから、無事だと信じたい。
「雪崩が来る」とヴィクターが言ったので、私のシールドに二人とも入れた途端、雪に埋まってしまった。炎の魔法でゆっくりと雪を溶かしながら雪の上に出たものの周囲は霧で何も見えなくなっていた。ウエルテルがこれは動いてはいけない。雪洞を作って霧が晴れるまで待機するのが良いというのでその指示に従った。ウエルテルってけっこう頼りになる。見直した。
魔物ではない雪ウサギを私が捕まえたので、「料理長」のヴィクターがウサギ汁を作ってくれた。ヴィクターも頼りになる。見直した。
 




