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トレインを引き起こした者の正体

 レクターのお付きの人に医学部受験の教科書を渡した。レクターは最初の数ページを読むと、お付きの人に書記を呼ばせて、口述筆記し始めた。どうしてそんなにわかりやすく教科書を要約できるの。さすが将来の名探偵です。


「お姉様、口述筆記した写しは随時送りますから」

「ありがとう。レクターそうしてもらえると嬉しいです」私はレクターに教科書を預けた。解読を丸投げした。自分でできないとは思っていない。ただ何年かかるかわからないので。受験までには間に合わないだけ。


 三日に一度教科書の要約がレクターから届くようになった。ダイキチさんにそれを見せると「これりゃあスゲエ、教科書に書いていない最新の知識も脚注に書いてある」って驚いていた。この写しが欲しいというので私が写したらあげることにした。


 私の周辺は静かだけど、たまに自分たちの派閥に入ってほしいと言ってくる生命知らずな子がいた。すべてカオリさんが笑顔で始末して、殺してはいないと思いたい。


 レクターのお陰で医学部受験の勉強は進んでいる。学年十位以内も大丈夫そう。優秀なライバルたちが、内乱で生命を落としているから。実家に急きょ呼び戻された生徒はたいてい帰って来なかった。それが良いとは私は思っていない。悪役令嬢は卒業したから。ただ私は幸運なだけだと思っている。


 メンゲレ男爵のお店の改装祝いに参加した。初の魔力感知型自動ドアのお披露目だ。あれこの魔力はザッツ平原で感じた魔力に似ている。誰の魔力だろう。ええ、メンゲレ男爵の魔力のパターンと一致した。メンゲレ男爵ってまだ私の生命を狙っているわけなの。


「メンゲレ男爵、ザッツ平原にいらっしゃったでしょう」

「はい、変異体の魔物数千体を引き連れてザッツ平原でエマ様御一行をお待ちしておりました」

「メンゲレ男爵、まだ私の生命を狙っておられるのですか?」

「いいえ、まったく、今後ともよろしくお願いします」


「ではなぜ、魔物を引き連れてザッツ平原に来られたのですか」

「あの魔物たちはエンドラ様の研究の成果です。飼うにしても数千体は無理です。侯爵家からの資金援助もなくなりました。しかも並の魔法はレジストしてしまう。さらに毒が効かない、だったらエマ様たちに始末をしてもらえれば費用はゼロ。名案だと思いまして、はい、そう言う事です」


「つまり、処分するのが大変だし、費用も掛からないのでザッツ平原まで連れて来た、あとは私たちが片付ける」


「魔物の変異体って通常の魔物の三倍の餌代が掛かるので大変でした」


「母上はどうして魔物の変異体の研究をしていたのでしょう?」


「魔物の軍団を編成する予定でした、王家の軍体は弱体化し過ぎて戦うのは無理ですから」

「王家は既に自分の身を自分では守れない状態です、エンドラ様は魔物の軍団で王家を守ろうとしていました」「ただ、魔物は興奮すると敵味方関係なく暴れだすので実用化には至っていませんが、研究は現在も続けています」


「それにしてもウサギの魔物はファイアボルトでは燃えないはずでした、狼もあんなに簡単に切断されるとは、ガッカリでした」灰色熊に至っては勝手に死んでしまうし、正直言って研究を継続しても意味があるのかとても不安です」


「エマ様たちは人外ですよね、そう思えば研究も無駄ではないと思えます」


「メンゲレ男爵、かなり失礼なご発言では、ミカサ様やカオリさんは確かに人外レベルですが、私は極々平凡な娘です」


「失礼しました。でも、エマ様はご自分のことがあまり分かっておられない」


 私は平凡な少女なはず。並の魔法使いより、魔力量が多いだけ。頭もよくない。容姿は悪役令嬢ぽいし、メンゲレ男爵は私を過大評価し過ぎ、人外ってひどい。将来の夢は、庭師兼業農家なのに。


 魔法感知型自動ドアはとても珍しいと評判になった。他の魔道具師が見せてほしいと度々言って来るので、高額商品を3点を購入したら見せることにしたらしい。魔道具師の年収が飛ぶ額。しかも十分間しか見せない。メンゲレ男爵が元暗殺部隊の指揮官だったとはとても思えない。


 自動ドアの回路図を描いたのはウエルテルとヴィクターの二人で、最終確認はカオリさんがしていた。私には難し過ぎて、試作品の感知装置を貸してもらって勉強する様にって言われている。魔道具回路研究部の部長なのに落ちこぼれている。みんなについて行きたい。でもね、魔道具作りは趣味だし、私は庭師兼業農家になるのだから、そんなに頑張らなくても良いよね。きっと良いに違いない。


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