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私の名前は

 私の名前はエマ・フォン・バイエルン、侯爵家の二女に生まれた。はっきり言ってあまり賢くないし、美しくもない、平凡な女の子でしかない、優秀な兄上と姉上、近い将来には天才の弟、美貌の妹と抜群の推理力を持つ天才と言っていい弟、そして未来予知が出来る彼女が生まれることになるので、家族内の存在感がますます希薄になる運命の私だったりする。


 前の私は性格が歪みまくって、何を血迷ったのか国中の悪党を集めて爆殺して自分が悪党界の頂点に立とうして一人爆死した。でも、私はしぶとかった。5歳の私に死に戻りしたのだから。私の才能って死に戻りの力なのかもしれない。そう考えるとこれで何度目かの死に戻りかと思うととっても怖い。今度は天寿をまっとうしたい。少なくとも爆死する気はない。


 四女の彼女が生まれたら、彼女に、私の未来を尋ねてみたい気もするけど、彼女は人の未来を話すことはない。たぶん彼女は決定した未来以外は話さない様にしているのだと思う。私の場合は爆発魔道具に触れつつある私に決定した未来を告げただけだと思う。


 今度は悪党の頂点になんて立とうとは思わない。周囲に認めて貰おうと空回りしていたけど、今度は私の大好きな事をして勝手に周囲が認めれば良いと開き直った。


 見た目は5歳だけど中身は15歳の私なのだ。今度こそちゃんと生き抜いてやる。優秀な兄弟姉妹がやらない事をやろうと思う。だって相手の土俵で闘ったらどう考えても平凡な私は勝てない。また歪んだ方向に走って死ぬ運命しか見えないもの。死んだらまた5歳の私に死に戻りするかもだけど。死ぬのって怖い。だからもう死にたくない。


 図書室で父上が書いたガーデニングの基本と言う本を読んでいる。父上がガーデニングが趣味だったとは知らなかった。当面する事は私のお庭を自分の手で作る事にした。魔道具作りは、王立魔法学校の幼稚部に入ってから始めようと思っている。あそこ全寮制なので、この家の絶対権力者である母上の手が届き難いから。


 私は、私による私のためのお庭を母上の目を盗んで作ろうと思っている。見つかれば即座に壊されるが、諦めない。何しろ一度死んでるし。


 私は図書室を出て屋敷の庭にいる。庭といっても山はあるし小川も流れている。その庭には村が一つ入っているので、庭と一言で言って良いのか躊躇われる。どこに私による私のためのお庭を作ろうかと探しているとメアリーが尋ねてきた。


「お嬢様何をお探しですか? 私、メアリーが探してきます」


「ごめんなさい、メアリー私でなければ見つけられないものですから」


 土が肥えていて、日当たりがよくて、母上に見つかり難い場所を探している。

ここはどうかしら、土を触ってみる。良い感じ。少し土を掘ってみた。直ぐに粘土層だと水はけが悪いから。ダメだすぐに粘土層だわ。


「お嬢様、手が汚れます」

「メアリー、手が汚れたら手を洗えば良いわけ」

「そう言う意味ではないのですが」

「あなたのお仕事を取ったりしないわ、たぶん増えると思うわ」


後は、専属庭師のオージーイさんにお願いしてお花の苗と、今の私でも使えるスコップを貰おうと。5歳の私ってほんとうに力がない。もう少し体を鍛えないと。お腹なんかかなりプニュプニュしてるし、これはダメだ。


「お嬢様、自分のお腹を揉んでニマニマするのはどうかと思います」


 お腹を揉んで顔がニマニマしたら変態ぽいな。ちょっとしくじった。


 湧水を見つけた、ここが良いかも。粘土層はかなり深い所にあるし、うん、ここに私のお庭を作ろう。ここが良い。


「ここに私のお庭を作る事にしたので協力してくださいメアリー、お願い」


「協力はしますけど、お庭は作りは庭師のオージーイに作ってもらえば?」


「それだと、本当のお庭にはならないの。もちろんオージーイさんに協力してもらうつもりよ。オージーイさんにはガーデニングの先生になってもらうつもりです」


「お言葉を返すようで申し上げ難いのですが、奥様がそれを知ったら、間違いなくお止めになります」


「今は大丈夫だと思うよ。色々と忙しいから」


 間も無く天才になる弟が母上のお腹に出来るはずなのだから。

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