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戴冠式

 戴冠式にまで後三日。各国の要人がやってきている。警備の方は、魔族の兵士の皆さんが頑張っているので、トラブルは起こっていない。ただ、私を見ると「大魔王万歳」ってやるのはやめてほしい。


 戴冠式直前になって、イン国の船に乗ってメイ国大使とリーベン国大使とフツ国のネー元帥が戴冠式に参列するとやってきた。正式に外交文書を交わしているのはイン国だけだったので、メイ、リーベンを招待するのは省いたのだが。かなり強引に乗船したらしい。まさかイン国と仲が極めて悪いフツ国の代表がイン国の船でくるとは思わなかった。


 イン国の新しい大使、アラン伯爵によると、ロ国とプロ国からも船に乗せるようにと要求があったが、ロ国については以前、ユータリアに来航した実績もあるのだから、ロ国から直接代表を送れば良いと答えたそうだ。プロ国にはフツ国の代表が乗船を拒んでいるので、無理だと答えたとのことだった。フツ国はプロ国を断る理由にされていたが、ネー元帥は戴冠式に参列できれば良いので、イン国の好きにさせたらしい。


 スコット前大使は戴冠式には参加せず、独立したての小国の大使として赴任するらしい。


 ネー元帥がレオン皇帝から親書を預かってきたので見ると「いつ結婚式を挙げようか?」レオン皇帝らしい冗談ジョークが書いてあった。本当はレオン皇帝自身が参列するつもりだったのだが、暗殺の危険性が高いとネー元帥が反対するので残念ながら今回は見送ったそうだ。「できればもう一回戴冠式をやってほしい」と最後に書いてあった。レオンさんらしい思考だ。人の迷惑を考えろよ。



「エマ女王陛下、親書には書いておりませんが、フツ国でエマ女王陛下のための儀式を行ないたいと皇帝陛下は考えておられます」結婚式をするつもりだよね。ミカサが知ったら、レオンさんが危ないと思う。


 バイエルンからは父上がやってきた。「聖女国にレクターから書状がきてね。私にバイエルン領主として参加してほしいと、それと養女になった母上とともに参列してほしいと書いてあった」

「エンドラが嫌がるなら、私一人で参列するつもりだよ」と父上は聞かれないように小声で私に言う。母上は公式には行方不明なので。母上の話はタブーだったりする。


「母上は王宮でエリザベートと常に一緒です。私とは一言もお話しにならないので、参列はされないかと思っています。私は、母上にしてみれば、エリザベートが王妃になるのを邪魔した者ですから」と私も声を潜めて父上に話した。側から見るとかなり不自然な姿に見えるだろう。


「一応、エンドラと話してはみるよ」



 戴冠式当日、ウイルから何か国政について抱負を語ってほしいと言われた。ウエルテルに原稿をお願いしたがあっさり断られた。「エマの言葉で話すべきだ」と正論を言われて黙るしかなかった。


 ウンウン唸っていたら、侍女がドレスの下に着る「コルセットがきついですか?」とか聞かれた。「大丈夫です。出るとこも出てないし、食欲がなくてあまり食べてないから」って答えたら、食事の用意がされた。食べられる時間はこの先ないらしい。


 軽食をとりながら、私の抱負を考えた。平和な日々の中、庭いじりがしたい。畑を耕したいのが私も望みなんだけど。これって私的な抱負で国政の抱負ではない。私としては戦争はもう嫌だし、飢饉も御免。難民が生まれるのは断固拒否。国中が緑の世界になってほしいかな。それを上手に言えれば良いのだけど、私は賢くないので纏められない。困った。


 戴冠式が始まった。ウイル国王が位を私に譲位すると宣言をして、王冠を私の頭に乗せてくれた。意外に軽かった。さて、私のスピーチの時間がきてしまった。


 壇上から参列者を見ると壮観だ。一体全体何人の人がこの場にいるのだろうか? 母上も苦い顔でバイエルン領主の席についていた。緊張する。私は一回深呼吸をした。



「私はただ今ウイル国王陛下から王冠をいただきましたが、この椅子に長く座るつもりはございません」会場全体にざわめきが起こった。


「私には自分が国政を担える人間だとはとても思えません。しかしながら、後二回は大旱魃かんばつくること、そしてその後には大雨がきます。ユータリアが混乱していてはこの危機は乗り切れません。各国の協力がなければ多くの犠牲者が出ます。医者としてそれは許せないのです。救える命は救いたいのです」


「私の女王の任期は四年をここに宣言します。その後は頭の良いな皆さまで考えてくださいませ。女王をやめた後私は庭師として農民として、そしてたまに医者として働くつもりです」

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