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大スランプのエミル君登場

「最近さ、僕の呼び出しも無視してさ、お稽古に来ない困った子がやっときたので、僕は嬉しいよ」と声が聞こえた。


「無視はしてませんよ。ちゃんとですねお手紙で欠席の理由をお伝えしています」


「おかしいな、精霊の王からの定時連絡が抜けるしさ。どういうことなのかな」


 青い小鳥さんが冷や汗を流していた。


「エミル神様、私、エマ様を止める際に力の大半を使ってしまい、定時報告が難しくなりました」


「そうなんだ。ユグドラシルには送っているのにね」


「エミル君、そういう遠回しでのいじめは私は嫌いです」


「わかったよ。それじゃあ奉納の舞を一指し舞ってみて」


 私もいつも精霊さんたちと一緒に、隙間時間には舞の稽古はしてるのだから。


「残念、前回と変わっていないね。これは特訓コース行きかな!」



「エミル君、新しい物語の執筆で忙しいのでは」


「今、大スランプなの」


「エマ様、この方は神殿で見た神像そっくりなんですけど」


「エミル君は創造神で芸術の神をやってるの」


 アズサちゃんが倒れた。


「エマが悪いよ。説明が杜撰すぎる!」とエミル君がアズサちゃんを気の毒そうに言う。嫌味が入っているのもよくわかる。私がどう説明しても創造神ってスーパーパワーワードを言えば普通の人は意識を失うと思うわけ。でも、こんな風に言ってしまうエミル君がかなり煮詰まっているのは伝わってくる。



「エミル君、大スランプってどういうことですか?」


「プロットは完璧なんだよ。キャラの設定も万全なのに、キャラがまったく動かない。キャラにやる気がないというか、プロットを作り直さないとキャラが動いてくれないの。こういうのって初めてだよ。キャラが反抗期に入ったみたい」



「そういうことで、エマのお稽古を見ることにしました」


 それって私に八つ当たりしているだけでは。猛烈に厳しいお稽古になる予感。何度舞ってもダメ出しの嵐に私は見舞われる。そうでなくてもほとんど褒めてもらえないのに。ハアー。


「地獄だ」あれデルフォイさんの気持ちがわかったかも。理不尽なこの世界が地獄なんだ。



「エミル君、あのうちょっと見てほしいものがあるの。少し待っててもらえるかな」


「良いけど」


 私はイアソーさんにエミル君が出てきたことを伝えて、虫かごを持ってエミル君のところに戻った。


「この虫かごを見てほしいの」


「懐かしい。僕が独り言を言うのに作った言葉だよ。イアソー読める?」


「おおよそですが。完全には理解できませんでした」


「だよね。でもこの独り言言語を知っている子って、あの子かなあ」


「はい、最初の御使みつかい今はディアブロっと名乗っております」


「あの子ね。名前がないんだよ。僕がつけようとしたら、断固拒否だって。あの子が最初の御使で、最初に僕に反抗した子。


「へえ、わざとこの術式を完成させていないや。ここに一文字入れないと、その一文字を間違えるとゲームオーバーって、最悪だ。あらゆる努力をすべて一瞬で無駄にする。反抗期をこじらせちゃったみたいだね」


 エミル君は一文字を入れるた。空白? にΩの文字を躊躇ためらいなく入れた。何も起こらない。

「ひねりなしか? 裏の裏を考えて表になったのかなぁ」


「おそらく私の性格を読んでだと思います」


「イアソーなら裏の裏の裏にするものね」


「御意」


 エミル君のおかげで最大の危機が去ったみたい。


「キャラが反抗期をこじらせると、こうなるのか! ヒャホーキャラが生き生き動き出した。じゃあね、またね」


 エミル君が行っちゃった。私の最大の危機も去った。お茶が飲みたいって思ったらディアブロさんが苦い顔をして登場した。


「本日の茶葉はある神がマズイと言った茶葉にしてみました」


 私は一口慎重に飲んでみた。「あのう美味しいですけど、ディアブロさん」


「当然です。その神は極度の味音痴ですから、微妙な味が感じ取れない貧乏舌です。あんなのに仕えるなんてごめん被ります」


 イアソーさんが苦い顔でディアブロさんを見ている。そして一言「不敬だ」と言う。


「イアソーは薬を飲み過ぎてバカ舌になったのは気の毒に思う。貧乏舌とバカ舌はお似合いだよな」と憎まれ口を言いつつディアブロさんは消えた。


「エミル様は飲めれば良い、食べられれば良いという神ですから、味を極めたいディアブロとは合わない」


「私は御使としてエミル様に作られた。しかしディアブロはエミル様から勝手に生まれた。ユグドラシル様同様に。ディアブロは本来御使ではなくエミル様の分け御霊。おそらくエミル様の独り言が実体化したのがディアブロと名乗る者」


「ディアブロの役目はすべての御使を統括するのが奴の役目」


「ディアブロさんが絶対やりたくない役目ですね」


「ええ、勝手にダンジョンを作って管理人だと言って、引きこもったまま出て来なかったのにエマに会ったら嬉々として出てきた」


「自由を愛する方ですからね。私は束縛しませんから」


「神の御使として作られた私には意味不明ですがね。ともかく虫かごの最難関をクリアできたので半年後に魔王城にくれば虫かごの解呪が終わっているはず」そういうとイアソーさんは自室に戻っていった。

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