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【閑話】魔物のトレイン

 ハヤテ丸はすんでのところで、魔物のトレインに巻き込まれずに済んだ。急ブレーキをかけたのでシートベルトをしていなかったアズサちゃんは前方に吹っ飛んだけれど。デルフォイさんは慣性の法則を無視してその場に浮いていた。


 女の子たちは説明通りちゃんとシートベルトをしていて無事だった。説明、注意はよく聞いておかないとね。


 私は虫の知らせなのか、なぜか座席に座ってしっかりシートベルトをしていた。ただちゃんとベルトを腰にせずにお腹に回していたので一瞬息が止まった。以後気を付けたい。



「神殿の結界を少し解いただけなのに、少々魔物がダンジョンから漏れましたね。定期的にダンジョンの魔物を駆除しないと、中級以上の魔物が増えてますね。雑魚の魔物がいない。しばらくはこの海域は海底船の運航を停止しないとダメですね」


「白亜の街は大丈夫なの?」


「あの程度の魔物では都市の結界は破れません。ただ、白亜の街周辺の街は海底船が食料品を運んで来ないので、ただでさえ、白亜の街の住民を受け入れて食料品が不足しているのに、船が来ないとなると、街の人たちは大変だとは思います。でも、これは皇帝陛下の責任ではないので」


「そうね、皇帝陛下の責任ではなく、私の責任です。私がなんとかしないといけません」今、駆除するのはダメだ。優先順位は、先ずはアール君に報告。アズサちゃんに異端審問会議に私が魔女ではないことを証言してもらってからにした方が魔女疑惑が晴れてから動きやすい。


 あと、私一人で駆除するとゆきちゃんが拗ねるのは明白だし、もしかしたら、アール君も駆除に参加したいかもだし。クラーケン退治では良いところがなかったからね。


 私たちは魔物のトレインをやり過ごして、帝都に戻った。



「神殿より戻りましたが、また神殿付近の海域に現れた魔物の集団を討伐に向かいます」


「ゆきちゃん、用意して」


「了解です」


 アズサちゃんは一週間の休暇をレオニーさんからもらっていた。里帰りという理由で。実際は異端審問会議に報告するために。私的には魔女認定されて婚約が解消されてもまったく困らないので良いのだけど、デルフォイさんが余計なことをしたのでややこしいことになりそうなのが怖い。


 予想通り、アール君が魔物退治に食いついた。「朕も行く」で、隣で控えていた女官が小声で「皇帝は無闇に動くものではありません」と一言言っただけで黙り込んでしまった。


「陛下が十歳になられたら、月に一回程度は狩りに行けます。それまでは体を鍛えなければ、エマ様に笑われます」


「朕は頑張って体を鍛えることにしよう」とアール君は決心を固めたようだ。脳筋クランツみたいになってほしくないので、勉強も頑張ってほしい。



 ゆきちゃんが水着姿でハヤテ丸に乗っている。「魔物狩りなんだから軍服の方が」って言ったら、「リゾートしに行くのに、仕事服ってないですよ」とゆきちゃんに抗議された。解せぬ。


 魔物の大群が白亜の街の結界、その隣の街の結界に取り付いて大変なことになっている。魚の魔物たちが結界をガリガリかじっている。その音が不快だ。街の人たちは不快どころではなく恐怖しかないだろうけど。


「エマさん、ひと泳ぎしてきます」と言ってハヤテ丸から魔物がうじゃうじゃしている海をゆきちゃんは気持ち良さげに泳ぎだした。すぐさま、高速魚雷のような流線形の魚の群れがゆきちゃんに襲いかかった。


 ゆきちゃんは二匹の魚の尾ひれを掴んでぶん回している。あまりに早くて海流が渦巻き状態になって、海底の岩やらがガンガン巻き上げられている。おそらく海面付近はヤバいことになっているかもしれない。


 岩が海から飛び出して、魔物の魚が空中を泳ぐみたいな感じになっているかもしれない。この後始末は誰がするのだろうか? ゆきちゃんはリゾート中だし、私は仕事中だったね。私がするんだ。私はいつの間にか遠い目になっていた。がしかし、私は思い付いた。


 水が回転すると遠心力で魔物が外に放り出される。服の汚れが水が回転することで、服から離れたら、服は綺麗になる。洗濯機ができるかも。足で踏んで汚れを落とす式の洗濯機をずっと考えていたけど、こっちの方が簡単にできる。帝国にも洗濯機はなかった。これは売れるかもしれない。忘れないようにメモをしておこう。


「エマさん、街の結界に張り付いていた魔物はいなくなりましたけど、どうします?」


「あっ、ゆきちゃん、お疲れ様。そうだね。中級以上の魔物を掃討して、海上に巻き上げた岩やらの後片付けをして、帝都に戻りましょうか?」


「神殿の結界と連動しているダンジョンはどうします?」


「あれって、アラームだと思うの。神殿の結界が破られたら、魔物のトレインが起こるって仕組みになってると思うの。魔物のトレインが起こらないと神殿の結界が破られたことがわからないから。ダンジョンはそのままで良いわ」


「了解です」


 私たちは中級以上の魔物を駆除して、海底から吹き上げられて海中、海面に漂っている色々なものを硬化魔法で固めて、圧縮した。その結果一つの島ができた。ゆきちゃんが命名した「エマアイランド島」と、島っていらないような気がするのだけど、まあいいかな。

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