危険な学校
母上がホーエル・バッハ家を襲撃したせいで、王家の弱体化が誰の目にも見える様になったてしまった。貴族はその欲望のまま、勝手気ままに他の貴族と争っている。もはや王家にはそれを止める力はない。国中が動乱に渦に巻き込まれ始めた。
学校の雰囲気も◯◯貴族派、王党派とか様々な派閥に分かれてギスギスした雰囲気が蔓延している。演習の授業も生命の危険があると言う理由で中止された。
父上から手紙が来た。三女のエリザベートを出産した直後から母上が領内からいなくなったので、くれぐれも私の身辺を注意する様にと書かれていた。
母上のことだから学校を全部焼き払う可能性もあるので、ミカサに相談したら、既に母上はこの学校の下女として入り込んでいて、校長とミカサの監視下にあると言う。
母上、貴族としてのプライドはどこに行ったのでしょうか? 既にことは露見しているので直ぐにバイエルン領に戻ってほしい。もうこれ以上他人に迷惑をかけないでほしいと私は心から願った。
一方のエンドラも下女として学校に入り込んだものの、命令される事に慣れていないので悉くメイド長に反抗していまい、
学校外の使いに出される事が多く、学校内部に入れない。下女生活三日目、エンドラはキレた。
学校の外から学校全体にファイアボルトをぶっ放そうとしたら、学校全体が炎対策の結界に覆われている事に気付いた。そして自分の周囲すべての方向からマジックアローが放たれようとしている事にも気付いた。
エンドラは逃げた。エンドラは初めて自分が無力な存在なのを噛み締めながら逃げた。
このままだと、私は消される。今まで何十人もの敵を屠ってきた自分が必死に逃げている。無様すぎて死にたいくらいの気分で逃げた。
私にはまだハンニバルがいる。ハンニバルならアホズラも無名の国の姫君を屠ってくれるに違いない。その思いだけがエンドラの心を支えていた。いつか必ず、ハンニバルと私でアホズラと姫君を殺してやると、繰り返しつぶやいていた。
バイエルン領に逃げ帰るとハンニバルの教育も放置して寝込んでしまった。エンドラはようやく正気に戻った気がした。もう王家は長くないかもしれないと。
バイエルン家も王家の番犬ではなく、王家と対等な家になった。三女のエリザベートを第五王子の第一夫人にしたいと王家より打診があった。王家は長くは持たないけれども、我がバイエルン家は王家の忠臣なのは変わらない。エンドラは、エリザベートと第五王子の婚約を受け入れた。
父上からの手紙には、王家に嫁ぐエリザベートの未来は明るくないので、私にも協力するようにとお願いの言葉が綴られていた。そして母上がまたも妊娠し、しかも双子だと書かれていた。父上と母上って一体全体どう言う関係なのかと、
不思議に思った。男女の中はわからない。遂に四女の彼女が生まれる。私の知っている未来が大きく変わっている。
学校長はエンドラが領国に戻った事を確認すると演習も再開された。更に、演習が中止されていた代わりに、魔物が多く棲息しているザッツ平原での一月に渡るキャンプが行われると発表された。
派閥同士で争っていれば間違いなく魔物に喰われるキャンプが行われる。一週間分の糧秣の携行は許可されたが残りの日数は自分たちで水、食料を確保しなければならない。
教師は、ベースキャンプにおり、生徒がリタイアを宣言した場合のみ救助にあたる。リタイアした生徒は、すべての成績が1ポイントになる。学年トップであってもこのキャンプでリタイアすれば最下位に転落する、まさにサバイバルキャンプが実施される事になった。
「エマ、私もあなたのグループでキャンプすることにしたから、楽しみだわ。カオリもついて来るから、別にいなくて良いのだけど」
「それは楽しみですわ。ミカサお姉様」ミカサは一学年上なので、一年生対象のキャンプには参加できない。校長の疲れた姿が思い浮かぶ。私のグループは、
ヴィクターとウエルテル、女生徒に私は人気がないのか、男の子の参加希望者はいたものの、女の子の参加希望者はいなかった。かなりしょげている。女の子ってグループを作るものだった。私、それに入ってなかった。
ザッツ平原にやって来た。魔法学校初の一年生による一月のキャンプが行われる。このキャンプは学校内のギスギスした雰囲気に危機感を持った校長の判断と言われている。
生き残るためには敵とも手を組まないと生き残れないのを体験させるためだろう。そうペナルティが厳しいので、高位の貴族で学年上位陣ほどリタイアを躊躇うだろうから。
ザッツ平原には大型の魔物の他にもこの世ならざるもの、生者を憎む死者の群れが黒の森にいると言う。夜になればこの世ならざるものがザッツ平原にも現れる。魔法学校の一年生が生き残れるだろうか? 校長の判断は正しいのか? まだ狙った所に攻撃魔法を当てることができない一年生が生き残れるだろうか。
 




