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レクターの要求、「彼女」の予言

「私が女王に成り上がったのはレクターの暇つぶしの結果なのね」


「そうとも言えますが、私としては姉上に女王になってもらいたかった。今後、姉上から色々便宜をはかってもらう必要かあるので。私の目的は、私の研究施設を姉上に作ってもらうこと。そして潤沢な研究資金を私に提供していただくことです」


「もしレクターの要求を私が飲まなければどうなるのですか?」


「そうですね。王家絶対主義者の皆さまに立ち上がってもらってユータリア全土を大乱の渦の中に叩き込むよう画策しましょうか?」


大旱魃かんばつ中、せっかく育て作物が焼かれ、ユータリア各地に多くの餓死者が出ることになるのは間違いないでしょう。聖女様」


「レクター、あなたって本当に悪魔も真っ青な考えを持っているのね」


「お褒めいただきありがとうございます」とレクターは微笑んだ。私の背筋が冷やりとした。


「レクター、あなたはなんの研究をしたいのかしら?」


「姉上は知らない方が良いかと思います」私にはレクターが碌でもないことを考えているのはわかる。


「人体実験は許可しませんから」


「ほう、姉上は私の心が読めるのですか? お約束はできませんが、できるだけ善処します」と言ってレクターは目を細めて私を見た。気圧されている乳幼児に、マジでレクターの目が恐ろしい。


「承知しました。レクターが医学部を卒業したらあなたの研究所を作りましょう」


「姉上、どうして私が医学部に進学するのがおわかりになったのでしょうか? 妹と同じ能力をお持ちなのですか?」


「さあ、どうでしょう」


「姉上、特別進級制度を作ってください。私は三年で医学部を卒業しますから。ですので、三年後に私の研究所が完成しているよう用意してくださいね」


「特別進級制度ってどういう制度なの?」


「私に医学部を受験資格を与えるための制度です。私の頭の中には入試問題の解答がすべて記憶されています。最高に難しい試験にしてください。採点も公開でお願いします。私以外の受験生も受験できるようにしてください」


「内乱で受験できなかった受験生が多数いるようですから」


「承知しました。あなたが私のために受験参考書を作ったのを忘れていました。私が医者になれたのはレクターのお陰です。遅まきながら感謝しています」


「いえ、どういたしまして」


 私は冷や汗をかきながら、レクターの部屋を出た。今度は「彼女」が呼んでいるそうだ。「彼女」の部屋にきてほしいと「彼女」付きの侍女に言われた。最近やっと「彼女」も話すようになったそうだ。主にレクター相手に。今のバイエルン家でレクターを止められるのは「彼女」だけと言う。乳幼児に支配されているバイエルン家。私は、二人とも怪物だと思ってしまった。


 私は深呼吸をして「彼女」の部屋に入った。「彼女」は侍女たちに外に出るように言った。人払いをしたのに「彼女」は念話で話しかけてきた。「姉上はどうしていつも危ないことを無自覚でなされるのですか? 私、理解に苦しみます」とお小言から「彼女」は始めた。


「人払いをしているのだから念話でなくても良いのでは」と話題を逸らそうとしたら「レクターの兄上に私は監視されています。人払いもかたちだけです。誰かがこの部屋には必ずいますから」と「彼女」は微笑みながらその目は冷たく私を見ている。怖い。私は冷や汗を流している。


「私、何か危ないことをしたのかしら?」


「帝国と関わりをお持ちになって皇后になりました」


「それは成り行きでどうしようもなくて」


「そうでしょうか? 姉上は考えることなくで感覚で行動されています」その通りなので反論ができない。


「帝国には熱核爆弾があります」


「はい?」


「帝国の熱核爆弾のスイッチは八歳の皇帝が持っています」


「それって危ないのではないでしょうか?」


「とっても危険な状況だと言えます。姉上が帝都に戻らなければ、癇癪を起こした皇帝が熱核爆弾のスイッチを押します」


「それって世界が滅んでしまうよね」


「はい、世界が滅びます。姉上の無自覚な行動の結果で」私の冷や汗は最高潮に達している。


「どうしよう」


「姉上には期待しています。頑張ってください。しくじればこの世界は滅びますから」


 私は軽いめまいを覚えている。ともかく、早く帝都に戻らないといけないのはわかる。でも、地上でもやることが多い。帝都に引きこもってはいられない。


「デルフォイ、エマです。皇帝陛下の様子はどうですか?」


「また、落ち着きがなくなって宮廷内をウロウロして、爪噛みが見られるようになってきました。できるだけ早くお戻りください」


「デルフォイ、可及的速やかに帝都に戻ると皇帝陛下に伝えてください」


「承知しました。帝都と地上との間に電話回線が有れば、皇帝陛下とエマ様が直接お話しできるのに」とデルフォイさんがため息をついていた。

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