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帝国使節団のお披露目

 ウエストランドに到着するとカバラさんが、ウエストランド王室の馬車を用意してくれていた。従者は誇り高き緑のエルフさんのサラクさんとお久しぶりの案内人さんとドックさんとネコさん。


 四人ともカバラさんの下でよく働いてくれているという。案内人さんは財政担当、サラクさんは弓の指南役として、ドックさんとネコさんは下町の情報収集を担当していたそうだ。


 私が、帝国使節団の団長だと、とてもややこしいので、聖女という肩書きに変えた。そういうことで使節団の団長は、失敗すると後がないルーデンドルフさんが務めることになった。とはいえ交渉するも何も協定書にミーアさんの副署をもらうだけなんだけど。


 協定書には帝国全権代表エマ・デゥ・クローデル。聖女国君主エマ・フォン・バイエルンとすでに署名がしてある。こんな協定書って成立するのだろうか? どちらも私が署名したものなのだけど有効なんだろうか心配だ。


 剣士さんたちには晩餐会とか色々な行事に参加してもらう予定になっている。何しろ伝説の帝国から来られた国賓なので、皆さんにお披露目をしたい。まずはウエストランドの国王陛下との謁見。ウエストランド国王は国政はカバラさん任せで、教会に入りたがるので困っている。家族を守れよとつい思ってしまう。


 私は別室で謁見の間の様子を壁のスクリーンで見ている。私がいると、国王への口上は私がしないといけなくなるから。ルーデンドルフさんに任せた。


「ウエストランド国王陛下、拝謁できて恭悦至極でございます。さて、ウエストランドとの国交についてですが」


「ムーラ帝国よりの使者ご苦労であった。この国を自由に移動することを許す。詳細はそこのカバラに尋ねるが良い。今宵こよいは王室主催の晩餐会を楽しんでもらいたい」



「国王陛下、御退場」とカバラさんが国王を謁見の間より退席させた。


「使節殿、協定内容は聖女国と同じで結構。国王陛下の署名と私の署名で発行することになっております」


「本日は晩餐会なのですが、エマ様に尋ねたところムーラ帝国の料理が大変美味しいと聞きました。できれば料理人を貸してもらいのですがどうでしょうか?」


 剣士さんがレンジャーさんを見つめた。


「了解です」とレンジャーさん。


「カバラ殿、料理人の派遣の件は承知した」


「ありがとうございます」


「ウエストランド王国は、実質的に聖女国に併合されておりますので、聖女国の玄関口とでも思ってくださると良いですよ」


 私としてはウエストランド国王に頑張ってほしいと思っている。私は、他国を併合する気はまったくないのだから。ぶっちゃけ聖女国だけでもう手一杯なので勘弁してほしい。


 カバラさんはウエストランド王国の宰相なのに、気分は聖女国の代官になっている。困ったものだ。


「ムーラ帝国は滅んだと思っている国民が大半なので、この後、皆さまにはパレードに参加していただきます」


「承知した。お前はパレードには参加せず晩餐会の料理の準備を手伝うように」


 レンジャーさんは嬉しそうに頷いた。パレードに参加するのが嫌だったようだ。


 ムーラ帝国がウエストランドに国交を求めて来訪した件は諸外国に衝撃を与えた。使節団の服装、武器が地上の諸国と大きく違っている。晩餐会での料理もムーラ帝国風にアレンジしたものだと紹介された。その料理の美味しさに、参加者は仰天していた。ちなみに私は別室でゆきちゃんと二人で食べている。とっても落ち着いて食べられるのが嬉しい。ヴィクターの分も取り置いてある。ヴィクターは食べられないから。


 ヴィクターは超嫌がっていたけれども聖女国臨時公使として晩餐会に参加してもらった。色々情報を集めて貰っているので食べる暇がない。


 剣士さんたちから、さまざまな情報を得ようとウエストランド駐在の各国の外交官が、ひっきりなしで挨拶にやってくるので、剣士さんたちは食事ができないでいる。レンジャーさんに剣士さんたちがお部屋で食べられるよう、料理を残しておいてほしいとお願いした。


 ルーデンドルフさんは、各国との国交は帰国後皇帝陛下に上申しましょうと言って、保留扱いにしている。私としては、しばらくの間は、帝国と貿易ができる国はウエストランドと聖女国とできたらヒノモトの三ヶ国に限定して、その三国で帝国の商品を仕入れて各国に売りたいと思っている。


 戦車とかの最新の武器は聖女国が独占するつもり。他の国には旧タイプの武器を輸出したいと考えている。私は、聖女国を軍事大国にするつもりはないけれども、レクターのバイエルンの動きが不穏だから。どうしても王家直轄地への侵略をやめようとしない。


 ウイル国王は何度も侵攻をやめるよう、バイエルンに使者を派遣している。その度に王家の権威は失墜している。母上からもレクター、ハンニバルに侵略をやめるようにと手紙が送られている。それも二人は無視。レクターの意図がまったくわからない。


 バイエルンがユータリア王家を潰すのを、私が、黙って見ているはずがないとレクターはわかっているはず。レクターとは一度話をしてみたい。クランツが対バイエルンとの戦争を計画しているのは公然の秘密だったりする。バイエルンと王家との戦端が開かれてからでは遅いもの。

 

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