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ムーラ帝国の魔女たち

「帝国には魔女はいないはずなのに……。数代前の皇帝陛下が邪教狩りをして、公式発表では全員処刑されたはず。歴史書にもそう書いてあった。我が家の口伝では、この結界を張ってくれた魔女様もその犠牲になったと聞いていたのですが」


「邪教狩りですか?」


「魔女は帝国の神と違う神を信仰しておりました。帝国の国教を信仰しても魔術が使えない。魔女が信じている神を信仰すると魔術が使える。表向き国教を信じている振りをして実際は魔女の神を信仰している者も多かったと聞きます。魔術、魔法が使える方が便利ですから」


「便利なので、信者が増える。魔女様もそれを気にして選ばれた者しか信者にしなくなりました。それが良くなかった。みんながなんとか信者に選ばれようとして、貢物やはら派手に頑張って目立ってしまいました」


「そのことは国教を信じている者にしてみれば脅威以外なにものでもない。法律で魔術、魔法を何度も禁じました。しかし、魔女信仰は広まるばかり。結局魔女狩りが皇帝公認で行われてしまいました」


「そうそう、思い出したことがあります。魔術、魔法がまだ違法ではなかった時代、海水を真水に変える魔術があったと聞いたことがあります。宮廷内にある禁書庫にその方法を書いた本があると言われておりますが、本当のところはわかりません。もし今もその魔術を使っていればワシの工場はなかったかもしれませんね」とおじいさんは笑った。


「魔女様がこの工場の結界を張ったのですよね?」


「この工場は元々海洋生物の研究所でした。そのため管理者に許可された者以外の立ち入りが禁止されておりました。それで先先代の所長、私の祖父ですが、魔女様に結界を張っていただいたしだいです。あそこにございます四つの石が結界の要なのですが、そろそろ寿命のようです」


「エマさん、魔力をプレゼントしましょうよ」


「ゆきちゃん、突然何を言い出すの!」


「ここは重要拠点施設です。セキュリティは万全にしておかないといけないと愚考いたします」


「そうだけど、あのう石に魔力を注いでも良いですか? もちろんお代はいりません。そうですね。海洋生物に関して読んでも大丈夫な記録を読ませてもらえると嬉しいのですが」


「軽く百年以上前に書かれた記録ですけど、そんな古い記録で良いのですか?」


「はい、もしかしたらクラーケンの生態が書かれているかもなので」


「では、その条件で魔力の提供をお願いします」


 私は魔石に魔力を注入した。どの魔石もほぼ空の状態だった。これで後百年程は結界を維持できるはず。


 転移の結界かあ、どんな魔法陣なんだろう。宮廷内にある禁書庫にそれが記された記録があれば良いな。禁書庫の閲覧許可がほしい。デルフォイさんに頼んでみよう。もしダメって言われたらディアブロさんから話してもらおうかな。


「エマさん、顔がニマニマしてもの凄く悪役顔になってますよ」


 私は顔を整えた。そして笑顔を作った。


 私はおじいさんが探し出してくれた、海洋生物の記録を読んでいる。隣でゆきちゃんはフォトグラフの本を見ながら、自分に似合う服の絵を描いている。楽しそうだ。羨ましい。


 クラーケンはある場所に移動して幼生を海に放出すると、元の縄張りに戻ると書いてあった。ある場所を突き止めようとクラーケンを数年間に渡って観察したものの、移動速度があまりに早いのと、クラーケンが海流を操るので、追跡を断念したと書かれていた。


 通常、クラーケンは巣穴にいる。決まった時間に出てくることはなく、捕食する時だけ巣穴から出てきてエサを探す。エサを食べると巣穴に戻る。巣穴の前にエサを置いて置いても食べることはなかったと書かれていた。


 別のクラーケンが縄張りに入ったことには敏感で、すぐにそのクラーケンと戦う。どちらかのクラーケンが縄張りから出るまで戦いは続く。しかし共喰いはしないと書いてあった。


 クラーケンの幼生が小型クラーケンに成長するまでには十数年はかかる。私の成長促進魔法で大幅に短縮できるか実験してみたい。


 中型クラーケンを捕獲する方法、やったあ。当たりを引いた。鋼鉄製の檻を二つ用意する。一つ目の檻が変形したら、電流棒でクラーケンをもう一つの檻に入れて、変形した檻を取り替える。ええ、めちゃ面倒くさい。


 手間だ。檻自体に電流は流せないものか? 要研究だ。研究するのはヴィクターだけれど。

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