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ヴィクター発電機を作る

「ヴィクター、クラーケンのエラを獲ってきたよ」


「僕、この大きさのエラが百枚ほどほしい」


「それは無理。超大型クラーケンのエラでこの大きさだから無理」


「中型、小型のクラーケンのエラはもっと小さいと思うよ」



「エラの貼り合わせってどうするのだろうか? にかわで貼り合わせができるのだろうか? 帝都で売っている真水製造機の膜には貼り合わせた跡がなかった」とヴィクターがぶつくさ言っている。


「ねえ、ヴィクター、帝都で真水製造機を売っているの?」


「ああ、大中小用途に応じた製造機を売っている。問題は大型は現地で組み立てること、完成までに軽く一年はかかる。中小の製造機は月産一台で予約が半年先まで入っていること。それと店によっては塩分が完全に取り除けてない製造機を売っている。そういう店は他より安いし納期が早いのですぐにわかる。でも注意が必要」


「ちゃんとした製造機を売っているお店と代理店契約をして私たちが責任を持って売るってことで、製造台数を増やせないかな」


「僕は作りたいのだけれど」


「私は早く普及させたいの」


「ふむ、発電機から作ってみるか。発電機がなければ真水製造機は動かないし」


 ヴィクターはしばし考え込んだ。「発電機は必要だけど、魔石から電力を得るのか、それとも科学に基づいて電力を得た方がどちらが良いのだろうか」



「両方必要だと思いますよ。ヴィクターさん。ユータリア以外の国では魔石が取れないですから」


「ゆきさんの言う通りだ。両方必要だね」とヴィクターの顔がが輝いた。



 私はゆきちゃんを連れて帝都にあるその販売店に、代理店契約をしたいと申し込んだ。答えはダメ。


「ムーラ帝国以外でも真水製造機は売れます。私が売ります。利益の半分は差し上げます」


「お嬢さん、そういう問題じゃあないんだよ。ムーラ帝国でも買いたい人は多い。水は毎日必要だからね。バカ高い値段になっているのは、欲しい人が多いから。ウチももっと作ってほしいと、あの頑固者にお願いしてるのだけど、月産一台は変えようとしない」と販売店の人もため息をついていた。


 作ってる人はこの人ですよねと、販売店の人に確認をした。「お嬢さん、よく調べられたね。びっくりだよ」



 私は呆然として真水製造機を作っている工場の前に立っている。「嘘でしょう! 結界が張られている」とつぶやいた。結界は弾くタイプの結界ではなく別の場所に飛ばすタイプの結界だった。工場に入れないよ。


「ムーラ帝国には庶民の生活には魔術、魔法はないと思っていたのですが、庶民の中にも魔法使いがいるようですね」


「エマさん、さてどうしましょう? 帰りますか?」


「待つしかないでしょう。外出することもあると思いますから」とは言えどこから出るからわからないから、アール君に貸している兵士百人で工場を取り囲むしかないか。



「あのう、内にご用ですか?」とポニーテールの女の子が私たちに声をかけてきた。


「真水製造機を作ってほしくて」


「それなら販売店さんに言ってください。おじいちゃんは作ってるだけですから」と女の子は微笑んだ。


「販売店には行ったのですが、半年待ちだと言われました。お金なら倍額でも支払いますから、毎月一台買いたいのです」


「おじいちゃん、自分のペースでしか仕事をしないので、それは無理だと思います。もうすぐおじいちゃんがお昼を食べに工場から出てくるので、話してみますか? お昼ご飯を食べたら、おじいちゃんのお昼寝タイムなので、話せませんから」


 小柄で瓶底びんぞこメガネをかけたおじいちゃんというには失礼な初老の男性が結界から出てきた。


「おじいちゃん、お客さん。真水製造機を毎月一台買いたいって」


「お嬢さんたち、ここは工場であって、販売店ではない。製造機はあの店と独占契約をしているので、売ることは不可能なの。わかったかな。この後、ワシはだな、孫娘が作ったお昼ご飯を食べて、一時間の昼寝になっておる」


「販売店さんにはちゃんとお話は通しました。販売店さんも注文に応じきれないって嘆いてました。もっと作ってほしいのに毎月一台だけだって」


「別の職人に依頼すれば良いって言っている。ワシは特許も取っていないし、製造法は公開している」


「ワシしか作れない機械ではない」


「存じております。でも他の職人が作った機械にはどうしたわけか塩分が含まれています」


「それは、その職人の腕が悪いわけで、ワシは何も隠しておらん、おそらくだが、膜の品質が悪いだけではないかなあ」


「従業員の方はいらっしゃるのでしょうか?」


「従業員はみんな引き抜かれて、今はおじいちゃん一人です」

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