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クラーケンを捕獲するその7

 アール皇帝からの電話の後、ハンター協会の人がすぐにきてほしいとホテルに飛んできた。


「ハヤテ丸の修理が終わりました。船のカギをお渡しするので、協会までご足労願います」


「わかりました。すぐに行きます。ゆきちゃん船の修理が終わったそうよ」


「それは良かったですね」とはいうもののゆきちゃんはまだ帝都には戻りたくはないみたい。なんだろう。



 協会に寄ってなぜか協会長が一緒に船着場にきたのだけれど、ハヤテ丸はどこにもなかった。はて、協会長さんが船着場を間違えたかもって思った。まあ協会長の面子というものがあるから、私はにっこり微笑んだまま。ゆきちゃんは、むすっとしている。


 協会長さんはにこやかにというか、ややひきつった顔で「少し外見が変わってしまいましたが、この船がハヤテ丸です」という。


 少しどころか、船体の大きさは倍近く大きくなっているし、帆柱? なんてついてなかったし、船首に女神像って、全然違う船になっている。第一あちこち錆まくっていた部品がすべてキラキラ輝いているし、新品の船にしか見えない。



「協会長、これはどう言うことでしょうか?」


「大人の事情ですので、色々おっしゃりたいこともあるでしょうが、よろしくお願いします。皇帝陛下直々に協会に電話がありまして、修理を急ぐようにとのご命令がございました」



 本物のハヤテ丸の修理にまだ時間がかかるので、別の船をハヤテ丸にしたらしい。船の履歴書の名称はハヤテ丸になっているものの初代ハヤテ丸に記載されていた前の所有者の名前がない。この船って新品だと思う。


「協会長、よろしいのですか?」


「はい、帝都にお戻りの際は、魔物ハンター協会は皇帝陛下に心からの忠誠を誓っておりますことを皇帝陛下にお伝えくださるだけで、我が協会の誉れであります」


 私は権力を使って協会から新品の船を手に入れた気分になった。


「船の中をご案内いたします」


「ありがとう存じます」と私は言って船の中を見て回った。大型魚雷が十数本積まれていた。発射管の操作方法も教えてもらった。燃料は海水をただ入れるだけで良いと言われてびっくりしてしまった。初代ハヤテ丸はバッテリーとかいうのを搭載しないとって言われていたのに、その必要がない。二代目ハヤテ丸は最新式になった。大人の事情で。


 海水から真水に空気に電気を作り出す帝国の技術水準にびっくりだ。この技術水準だと天界の人たちに目をつけられるはずだと納得してしまった。


 協会長から二代目ハヤテ丸の鍵をもらった。私もゆきちゃんも操船ができないので、帝都に戻ったら車と船の免許を取ろうと思う。協会長と話していたら船にも免許がいることがわかったから。


 協会長から船のルールブックという本をもらった。海底船が出会った場合、どちらが進路を譲るのかとかが書かれている。なお、お貴族様のほとんどがルールを無視するので大変困っていると言われてしまった。


 二代目ハヤテ丸のお礼は貴族にルールを守らせることのようだ。頑張ってみようと思う。


 協会長から早く、一刻も早くこの街から出て行ってほしいという気がガンガン流れてきている。


「ねえ、ゆきちゃん不機嫌そうだけどどうしたの?」


「私の服が明後日の午後仕上がってきます」という。そう言えば、ゆきちゃんは書店で緻密な絵がたくさん載った、緻密な絵のことをこの国ではフォトグラフという、服のフォトグラフが載った本を熱心に見ていたのを思い出した。


「ゆきちゃん、いつの間に服屋さんに行ったの、私、気づかなかったわ」


「エマさんが、クラーケンのことを調べている間に書店に行ってこの本を買って、この服をくださいって服屋さんに注文を出しました」


「ユータリアの女性の服って絶対スカートなんですよ。だから私はこの通りいつも軍服です」


「ユータリアは女性はスカートってなんとなく決まっているものね」


「この国ではこんな姿もできます。素敵でしょう。エマさん」


「でも、ゆきちゃん、私はこういう可愛らしいスカートも好きだわ」


「エマさんの場合、近接戦はなさらないですから」


「ゆきちゃん、意味がわからないのだけど」


「近接戦だと蹴りをスカートで入れるとつい下着って思ってしまうので、スカートはダメなんです」


 脳筋クランツ王子の影響だろうか。ゆきちゃんが戦闘狂になっている。協会長はすがるような目で私を見ている。早くこの街から帝都に帰ってくれという目で私を見ている。どうしよう。


 デルフォイさんは悪魔だから念話ができるはず。


「デルフォイ、エマです」


「エマ様、何かありましたか?」


「船の修理は終わったのですが、この街を出発するのは明後日の夕方になりそうなのでアール皇帝陛下に伝えてもらいたいの」


「承知しました。ただ、皇帝陛下が宮廷内をウロウロして落ち着きがないので、出来るだけ早く戻ってきてください。それと船は皇帝専用船プリューヒルの隣に停泊できるようにしています。ブリューヒルは目立つので、間違えることはありません。お早いお帰りをお願いします」



「ゆきちゃん、デルフォイさんの許可をもらったから、出港は明後日の夕方にしました。それで良いかしら」


「エマさん、ありがとうございます」とゆきちゃんに笑顔が戻った。

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