クラーケンを捕獲するその2
デルフォイさんが私のところにやってきた。なんだろう。
「エマ様、クラーケン狩りに皇帝陛下の同行をお許して頂きありがとうございます。皇帝陛下はとても楽しみにされています。それとエマ様にお願いがあって参りました」
「お願いですか? なんでしょう」
「エマ様はクラーケンを捕獲されるつもりのご様子ですので、魔物捕獲、飼育の許可証を魔物ハンター協会で発行してもらう必要がございます。帝都には魔物ハンター協会がございませんので、隣の街に行って頂く必要がございます。これは皇帝陛下の使者専用の通行許可証でございます」
「デルフォイ、私は隣街の魔物ハンター協会に行って許可証を発行してもらえば良いのね」
「はい、おそらくですが魔物ハンターの資格を取得しないと許可証は発行されないと思います。審査があるはずですが、どのような審査なのかは、私にはわかりません。宿泊の必要もあるかと思いますので、陛下からの下賜金がございましたので、このお金をお使いください」
「デルフォイ、ありがとう。ではさっそく隣街に行って参ります」
「お車はいかがいたしましょうか? 人手が足りませんので運転手は付けられません。申し訳ございません」
「私は飛べるので、車は必要ありませんが、乗ってみたいと思います」
「王宮内に自動車運転試験場がございます。運転免許はそこでお取りください。手配をしておきます」
「デルフォイ、色々気遣ってくれてありがとうございます」
「いえいえ、ディアブロ先輩の視線を私、常に感じております。あまり丁寧なご挨拶を受けると先輩の機嫌をそこねるかと」
「わかりました。覚えておきます」
ディアブロさんて、自分以外の悪魔を私が評価すると機嫌が悪くなる。たぶん、デルフォイさんはディアブロさんの監視対象になっている。
「ゆきちゃん、私、隣街に行ってきます」
「エマさん、私も一緒に行きたいです」皇帝陛下の使者専用の通行許可証だしゆきちゃんが同行しても大丈夫だよね。たぶん。
私はヴァッサで、ゆきちゃんは訓練がてら私の横を走っている。行商の人たちだろうか。かなり驚いていた。申し訳ない。
海底都市同士はチューブで繋げられている。チューブの出口に検問所が置かれている。私が皇帝陛下の使者専用の通行許可証を見せると、あっさり通行を許可された。飛んでくる私とそれに並んで走ってくるゆきちゃんを見て、ものすごく警戒をしていたけれど。
魔物ハンター協会がどこにあるのか尋ねたかったのだけど、尋ねられそうな雰囲気がまったくなくて尋ねられなかった。
帝都の隣街って下町ぽい。お店も多いし、人も多い。兵士ではなく自警団って腕章をした人たちが街の治安に当たっているみたい。私は自警団の人に魔物ハンター協会がどこにあるのか尋ねてみた。
「巡回中、申し訳ありません。魔物ハンター協会はどこにあるのでしょうか?」
「お嬢ちゃん、魔物ハンター協会になんの用があるのかな」優男風の人が尋ね返してきた。
「この子と一緒に魔物ハンターになるので」私とゆきちゃんを自警団の人が珍しそうに見ているのがわかった。
「魔物ハンター協会はこのまま真っ直ぐ進むと魔物の看板が上がっているのですぐに見つかるけど、魔物ハンターになる試験って実際に魔物を狩るのでかなり危険だよ。毎年数人の人が亡くなっているから。止めないけど、気を付けてね。危ないと思ったら逃げれば良いよ。受験料なしで再受験できるから」
「ご親切にありがとうございます」と私は丁寧に自警団の人たちにお礼を言った。かなり心配されている雰囲気が伝わってきたから。この街好きかも。
魔物ハンター協会に着いた。雰囲気は冒険者ギルドそっくりだ。冒険者ギルドをまねた。あるいは元々は冒険者ギルドだったのかも。受付の女性に魔物ハンターになりたいと言ったら奥の部屋に通された。
「あなたたちが、魔物ハンターになるのですか? 登録料はお一人金貨一枚です。それと船の登録料が金貨一枚になります」
「私たちは海底船は持っていません」
「海底船がないとハンター登録ができませんので、購入して頂くことになります。中古は金貨一枚で新造船は金貨十枚になります。中古の場合はノークレーム、返品不可ですのでご注意下さい」




