魔道具回路研究部は今日も賑やか
エマ研究部という、私を暗殺しようとしていた集団がなくなってから、私をストーカーする人たちはいなくなった。誰にも見張られずに過ごすことができるようになって、私はとっても幸せな気分になっている。
メンゲレ男爵が言ったように母上からの刺客は学校対抗試合以降いなくなった。母上はメンゲレ男爵が離れたため、新たな暗殺集団を育てているのだろう。もうそんな事をする時代ではないと思うようになって来た。
メンゲレ男爵の三男のウエルテルが話すこの国の事情を聞いていると、間も無く貴族が威張り散らす時代は終わる。新たな資本家と呼ばれる富裕層が国を取り仕切る時代になるだろう。王家も大貴族もいずれ没落するか、飾りとして富裕層に取り込まれるだろうと言い放った。
「ウエルテル、ここは貴族の牙城だし、君も貴族の端くれでは」と言ったら、「貴族の称号は使えるので、使いますが、貴族の常識とやらは、くだらないので無視します」と言う。
ミカサはこの子には時代が見えていると大いに褒めていた。ミカサも外国の王族ではないのか。不敬とは思わないのかと思ってしまった。マア、私も貴族の常識をぶん投げた人間なので大きなことは言えないけれど。
ヴィクターはこれからは貴族ではなく、富裕層とやらが気にいる魔道具を作らないとって、ウエルテルの影響をモロに受けている。しかし彼の一品、手作り魔道具へのこだわりは捨てていないので、富裕層からのオーダーメイドの魔道具店を将来持つ気がして来た。私も彼に出資して儲けさせてもらおう。
着火魔道具の売れ行きは順調過ぎて怖いくらい儲かっている。ウエルテルが開発した、銅板プレス式作製機のお陰で着火具の量産が更に加速し、価格も大幅に下げられた。類似品はその価格の低下に耐えられずに撤退した。結果売り上げは大きく伸びた。
ウエルテルから、もっと何かアイデアはないのかと、言われているけど、汚れた衣類を入れると勝手に洗い出す洗濯魔道具とかのアイデアはあるのだけれど、井戸から水をくむ必要があるので、ラストワンマイルの問題が片付くまで製品化出来ない。自動ドアは既に試作段階に入ったので、メンゲレ男爵が経営しているお店に設置してもらう予定になっている。
ヴィクターとウエルテルが毎度毎度、部室で議論するので私はうるさくてなかなか勉強ができない。そろそろ、部員には私が最難関大学の医学部を受験することを話しても良いと思っている。そうすれば多少静かにしてくれるだろう。甘いかなぁ。
私が医学部を目指すと発表したら、全員が笑いだした。私自身も笑ってしまった。「私が大学に進学出来るとすれば学部は、母上の手の届かない医学部しかないの」って言ったら静まり返ってしまった。
「エマさん、今の成績では学校推薦は出ないので、入試が受けられないと思うよ」
「知ってるよ。学年上位10番以内の生徒しか医学部に受験出来ないことは」
その学年10位に入っても落ちるのが医学部だったりする。数年に一度、合格者ゼロって事もある。医学部への進学を志し30歳にして合格した人もいると聞いた。
もっとも合格したらすんなり卒業できるかと言うと、卒業式がたまにない年があったりするのが医学部だったりする。難関中の難関が医学部。その医学部に飛び級で入学した弟のレクターの天才振りがわかってもらえると思う。
平凡な少女でしかない私が進学できるような所ではないのは、この私が一番知ってたりする。
「エマさん、お金も地位もある、あなたが、何も医学部に進学する必要はないと思うのだけど」
「ウエルテルの言う通り。でも医学部を目指すって約束したし、受験はしたいの」
「お嬢様にお話してみます」
「カオリ先輩、裏口入学とかは望んでいませんから」
「ミカサお嬢様はエマ様にそのようなまねはしません。良い先生を紹介されるだけだと思います」
「良い先生ですか?」
「良い先生だと思います、人によっては害以外もたらさないかもしれません人ですが。毒も使い用で薬にもなりますから」
全員一致で私には医学部の受験すら無理って言われた。前の私の時に比べて成績は良くなったものの成績は真ん中より上でしかない。あれだけ、母上がつっききりで勉強させた兄上が学年12位、姉上が13位だったのだから。無理って言われるのも納得だよ。