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先遣隊

 私はアカデメイアから聖女国に戻った。


「ヴィクターいる?」


「なんですか、もうこれ以上厄介ごとは引き受けませんから!」


「スライムを使わずに大量に海水から真水を製造する国が見つかったので、教えてあげようと思ったのだけど、ごめんなさい。邪魔をして」


「どこの国ですか! どうやってそんなことができるのですか? エマさん」


 ヴィクター顔が近いし、怖い。


「本屋さんで製造方法が書いた本が売っているそうよ。誰でも知っているらしいの、ドワーフ国で見た電気を使うらしいわ」


「その国の偉い人に頼まれてしまって先遣隊というか、調査団というかを派遣することになってしまったの。誰か良い人を推薦してほしかったわけ。ヴィクターは忙しそうだから、ウエルテルに頼むわ。ごめんなさいね」



「ちょっと待ってください。エマさん」


「僕はですね、そんなうまい話には乗らないようにしています。しかしですね、万一にもです他の誰かを推薦してですね、その人が理解できずに戻ってこられるのは困るわけです。僕が行きます。行かせてください。。ウエルテルには内緒でお願いします」


 ヴィクターが釣れた。


「かなり長い間行ってもらうから、そのつもりでお願いします」


「承知しました」



「ミーアさん、退役したらけっこう生活が大変そうなベテランの兵士さんが、五十人くらいいないかしら?」


「聖女国の軍隊は福利厚生が充実しております。退役後のアフターケアも万全ですので、なかなかそういった方はいないかと思います」


「任務はとても危険で、生きて聖女国に戻れる可能性は低いけれど、生還後は名誉と年金十年分のボーナスありという条件で五十人の兵士を募集してほしいのだけど、ダメかしら?」


「聖女様、ベテラン兵士でないとダメなんですね」


「そうなの、経験値が高い兵士でないとダメ。向こうで何が起こるかわからないから」


「聖女様、募集はしてみますけど、退役直前のベテラン兵士が応募するとはとても思えません。生きて聖女国に戻れないのが前提ですから、死んでこいというのと一緒ですよ」


「それだけ危険な任務なの」


 ミーアさんがダメ元で募集をかけてくれた。結果は一万人越える志願者があった。ウチの軍隊って生粋の聖女軍だった。聖女様のためなら生命を投げ出したい人たちが多数だった。


 私は、同調圧力だと嫌なので、筆記試験とかをしてみた。出題範囲は一般常識と、敵に包囲された場合、いかにして敗戦時逃げるのか? という問題を出してみた。これで本当は行きたくないけど、周りが行くっていうので、仕方なく志願する人は試験に不合格になることで、逃げられる。


 私はどうやったら逃げられるかを考えることは大事だと思っている。一番難しいのは撤退戦だと思っている。


 私はすべての答案を見せてもらった。熱意を感じる答案ばかり。一般常識問題は正答率九割で合格にした。どう逃げるのかと問うているのに聖女様のために最後まで戦いますって解答が本当に本当に多かった。それで、その人たちには私のことを思ってくれるなら、その先にあるであろう戦いにも参加してほしいってコメントを付けて、不合格にした。



 兵舎では不合格答案を額に入れて飾ってる人が多数出たそうだ。意図がわからない。残りまだ千人も残っている。これを五十人にまで絞らないといけない。ということで、体力試験後に私は最終面接試験をすることにした。


 千人を面接するのは無理なので、千人の志願者さんに四十二キロ走ってもらって上位百人の人と面接することにした。長距離走はペース配分と他の走者との駆け引きが大事だ。内緒で私も走る事にした。皆んながスタートしてから私はゆっくり走り始めた。


 しばらく走ると、最初からダッシュで飛び出した人たちが走っていた。


「長距離はペース配分が大事なので、自分のことをよく知らないとこうなります」と偉そうにアドバイスをして、その人たちを抜き去った。


 後ろで、とてもびっくりしてる雰囲気が伝えわってきて、それともう「聖女様に遅るな」って言っている。私はまた戻ってもう一度言った「聖女様のペースではなく、自分のペースで完走すること」って釘を刺した。


 私は次々追い抜くたびに、自分のペースを大切にして、完走するようにとお願いしたと同時に、ケガとかしたら即医務班に申し出るようにもお願いした。次が必ずあるから、無茶はしないようにと、お願いしながら走った。

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