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メルティちゃん

「ゆき先生、ええとですね、俺かヤンのどちらがメルティさんのお水を運ぶのかが決まらなくて」


「あんたたちバカなの。ジャンケンで決めれば良いじゃないの」


「ジャンケンで決めようとしたのですが、三回勝負が五回勝負になって、いつまで経っても決められなくて………」


「わかった。二人ともメルティさんのお世話係はクビです。今からアール君のお母さんのお世話をしてくださいね。以上です」


「ゆき先生、そんなあ」


 ゆきちゃん、とてもマズイです。


 アール皇帝陛下はポカーンとした表情で完全にフリーズ状態になっていた。


 私がヤン君とダン君からコップと水差しを受け取ってメルティちゃんの病室に運んだ。時間稼ぎ。どう説明して良いのかまったく思い浮かばなかったから。


「メルティさん、体調はどうかしら」


「とっても良いです。ただ、なんでしょうか? 変な夢を見ます」


「それがどうしても思い出せないのです」


「怖い夢のようで、そうでない夢です」


「私は今も夢を見ているのでしょうか?」


「エマ先生の周りがキラキラ輝いて見えます」


「メルティさんって精霊眼だったの?」


「はい? 精霊眼ってなんですか?」


「精霊とか妖精とかが見える眼のことを魔法使いの間では精霊眼って言うのよ」


「手術の後から、精霊というのですか? そういうものが見え始めました」


「メルティさんは手術の影響で普通の人には見えないものが見えるようになったみたいですね」


「エマ様が大魔法使いだったから、私も影響を受けたということでしょうか?」


 悪魔の心臓を移植した副作用とは言えないから、私が悪役になっておこう。最近悪役をすることが多くなってきたような気がする。たぶん気のせいね。


「私が大魔法使いかは別にして、あなたの手術ではかなり魔法を使いましたから、その影響はあると思います」


「父も母も普通の人です。私だけ特別になるのは怖いです」


「メルティさん、私にも精霊が見えます。私の場合は生まれてからずっと見えているので、逆にいない方が不思議だったりします。でも、普通の人には見えませんから。こういうお話は見える者同士で話しをするようにしています」


「メルティさんも魔法学校に入学したら良いかもです。見える人たちの学校ですから」


「お断りします。私、お友だちと別れたくありません!」


「そうでしょうね。ただ、メルティさんは徐々に魔法使いの世界に入ることになると思います。魔法をちゃんと制御しないと、周囲の人に迷惑をかけてしまいます。私がその方法を教えて差し上げても良いのですが?」


「私は、魔法使いになってしまうのですか?」


「おそらく」


「魔法の制限ができないとどうなるのですか?」


「例えば、メルティさんが、何かに怒ったとしますね。それが物であれ人であれ壊してしまうかもしれません」


「私が、お母様のバカって私が怒ったら、お母様が大けがをするということですか?」


「その心配はありませんけど、ただお母様の周りにある家具、食器類は必ず壊れます」


「私が小さい頃、よく癇癪かんしゃくを起こしていました。すると必ず花瓶が砕けました。テーブルの脚に小指をぶつけた時は一瞬でテーブルが消えました」


「エマ様、私が魔法の制御ができれば、今までと同じ暮らしができますか?」


「それはメルティさん次第ですね」


「どういうことですか?」


「魔法でお父様やお母様、大切なお友だちを守れるとしたら、メルティさんどうしますか?」


「魔法を使うと思います」


「そういうことです。では、この指輪を中指にはめてください。今見えている精霊は見えなくなります。癇癪を起こしても物は壊れません」


 私は魔力を大気中に発散させる指輪をメルティちゃんにはめてもらった。なかなか魔力濃度が濃い。早く魔力制御の訓練をしないと指輪だけでは、制御できない。


「ありがとうございます。エマ様」


「メルティさんは私の一番弟子にしますから、そのつもりで」


「私が大魔法使いの弟子ですか? 嬉しいような怖いような気分です」


「そうそう、ヤン君とダン君がメルティさんのお世話係だったようですが?」


「あのう、私、男の子が苦手なんです。ヤンさんもダンさんもよくしてくれるのですが、困っていました。頼みたいことも頼めないので」


「それは良かったです。ヤン君とダン君にはお隣の患者さんのお世話係になってもらったので、メルティさんのお世話はコゼットさんとメリンダさんがこれからはします」


「ありがとうございます。師匠」とメルティちゃんが笑った。美少女の笑顔の破壊力はすごい。私も真似してみたい。私はどうせ悪役顔なので無理なのはわかっているけど。

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