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ムーラ帝国その5

 うわー、五人とも悲惨。髭は伸び放題、食事は碌に食べていないみたいで頬がこけていた。しかも手枷に足枷って、酷すぎる。


「冒険者バニラ、彼らを連れてきたぞ」と威厳を込めてアール皇帝陛下が言う。


 近衛兵の皆さんも全員戻ってきた。広間が男臭い。ほとんどあの五人の体臭だけど。


冢宰ちょうさい様、あの五人にお尋ねください、私たちが何者なのかを」


「お前たち、なぜ、こんな危険な者たちを連れてきたのか? 大変なことになってしまったではないか」 冢宰さん、床に座り込んだまま、愚痴っても仕方ないでしょう。



「冢宰閣下、冒険者バニラを名乗るものは魔族の王、大魔王でございます。また、ゆきを名乗る者は人間にあらず、高位の吸血鬼でございます。ムーラ帝国と魔族と共同であの者たちに復讐できる好機かと愚考して帝国に連れて参りました」とマジックキャスターが言う。


「マジックキャスターさん、私は吸血鬼には襲われましたが、エ……。バニラさんに救われて吸血鬼にはなってません!」とゆきちゃんが怒っている。マジックキャスターは僧侶の後ろに隠れた。


「冒険者バニラ、その方は魔族の王なのか?」


「陛下、魔王はまだ生まれておりません。それで私が王ということになっているみたいです」


「冒険者バニラ、その方は魔族よりも強いのか?」皇帝陛下の目がキラキラしている。


「そうですよ。バニラさんはダンジョンを一人で攻略するくらい強いです。視察団の皆さんが攻略に失敗したダンジョンを一番最初に攻略したのはバニラさんですから」とゆきちゃんが言わなくても良い事を言っている。


 ゆきちゃん、私が攻略した古代ダンジョンは一つだけだし、あれを攻略っと言って良いのか悩む。とくにディアブロさんのいたダンジョンではお茶を飲んだだけで終わっているの。


「冒険者バニラ、帝国の財宝はあったのか?」


「ありませんでした。太古の悪魔が隠しているように思いました。よろしければ直接ご当人に尋ねてくださいませ」


「ディアブロさん、お茶にします」


 大広間に特大の食卓テーブルが用意されてディアブロさんが私の横に立っていた。


「懐かしいですね。デルフォイ君。まだ君は冢宰なんてやっているのかね? いい加減地獄に戻って書記の仕事をしてもらわないと、周囲が迷惑なのだけれど」


「ベルゼル先輩、学園卒業以来ですね」


「デルフォイ君は臆病で、私が後ろからワって声をかけただけで泣き出したほど。私の卒園式の時に彼は無断欠席をしようとしたのです。あれほど可愛いがってあげたのに。でも探し出して参加してもらいました。素敵な思い出です」


「ベルゼル先輩が僕のお尻に蹴りを入れた上での『ワ』でしょう。そんな先輩の卒園式に誰が出席するものですか。それなのに無理矢理椅子に縛りつけるなんて、酷すぎます」と冢宰さんが、涙目で抗議をしていた。


「デルフォイ君、今の私の名前はディアブロなのでそのように呼んでほしい。エマ様のお茶が済めば、昔話でもしようじゃないか」


「ベル……。ディアブロ先輩、今エマ様って言いましたか?」


「今、私がお仕えしているのはエマ様だからね」


「ふふふふふふふふ、お前たち、悪魔の中の悪魔であって悪魔界の貴公子であらせられるディアブロ先輩がお仕えするエマ様を帝国にお連れして、どう責任を取るつもりなのか?」


 冢宰さんが壊れた。


「ディアブロさん、冢宰さんと幼なじみなんだ。しばらく冢宰さんとお話ししてきても良いですよ。


「流石はエマ様です。エマ様のお許しも出たのでデルフォイ君、ちょっと話そうか」


 ディアブロさんは、冢宰さんの後ろに回り冢宰さんのお尻を蹴りながら大広間を出て行った。ディアブロさんって小さい頃はイジメっ子だったんだね。


「冒険者バニラ、そなたはあの有名な女王エマなのか?」皇帝陛下の目のキラキラ度が上がって眩しい。


「申し訳ございません。私がエマだとわかると、皆さん緊張されるので、私の冒険者としての名前を言いました」


「エマ殿は、天界に攻め込んだと聞いたが、それは誠か?」


「天界にお話しに行って、ちょっとした手違いで天界の建物を壊してしまっただけで攻め込んではいません。誤解です」私の意思ではやってはいない。やったのはイアソーさん。私は無罪のはず。



「朕や父上が地上に行くと天界の者が帝国臣民を攻撃すると冢宰が言うが誠のことか?」


「天界の方々と地上には手出しはしないとの協定を結びました。しかし海底都市についての取り決めはしておりません。とは言え海底都市を攻撃すれば地上にも当然被害が出ますので、おそらく、天界からの攻撃はないかと思います」


「ならば、父上が地上に行っても問題はないな」


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