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ムーラ帝国その2

 自分のことを料理上手という言葉にたがわず、見事な腕前で猪を余さず解体し、燻製くんせいにするとか言って、猪の肉を円筒形の筒の中に入れた。調理用魔道具だろうか仕組みを見てみたい。


 ヴィクターにこの話をすればすぐに開発するだろうけど。


 私たちは、猪のしゃぶしゃぶと焼肉を食べながら話をした。猪には少々くさみがあったので生姜がほしいかも。


「女性に年齢を尋ねるのはマナー違反なのはわかっているのですが、バニラ殿はどう見ても成人しているようには見えませんが」と僧侶が言う。


「そうですよ。マナー違反です。でも私の場合隠すことでもないので、おっしゃる通り私はまだ未成年です」


「それなのに、銀等級の冒険者とは驚きましたなあ」と僧侶。


「バニラ殿の魔力は、私の魔力量計測器の針を振り切ってしまうので、まったくもって規格外です。できればムーラ帝国に連れて帰りたい」とマジックキャスターが不穏なことを言いだした。


「海底都市ですよね。見てみたいですね。エ……、バニラさん」ゆきちゃん、面白そうだからといって、簡単に食いつくのはやめてほしい。どう考えても、私は研究材料だよ。


「若君、現地の人間を連れて帰るのは、皇帝陛下の許可が必要です。申請だけでもしておきますか?」


「そうしておいてくれ」と剣士が言う。


 私は泳げないし、海には行きたくない。それにお肌を海風にさらしたくない。シミとソバカスができるから。


 戦士が板を取り出して「こちら地上視察班、ファルコン。デルタ応答願います」


「こちらデルタ、元気かファルコン」


「古代ダンジョンの攻略に失敗した。すまない。だが、興味深い現地の人間二名と接触した。帝国に連れて行っても良いか? 許可をもらいたい」


「ファルコン了解した。皇帝陛下に具申するので、少し待て」


「ファルコン、皇帝陛下の許可が出た。現地人二名を伴っての帰還を許可する。ただし、ダンジョン攻略の失敗について問責するとのこと」


「デルタ、なんとか穏便に済むように頑張ってほしい」


「ファルコン、ごめん。オーバー」


 戦士がしょげている。剣士も顔色が悪い。私たちが帝国に行かないととっても大変な目にあってしまいますという空気が充満している。行かないという選択肢は消えたな。


 ゆきちゃんはレンジャーにどういうお魚が美味しいのとか、帝国には美味しいお酒はあるのかと熱心に尋ねてるし。行く気満々だしね。


 私はゆきちゃんのお供で行っても良いよ。日焼け止めとか、髪の毛が塩水で傷まないようにトリートメントとかは用意したいのだけど。


 翌朝、なぜかムーラ帝国の皆さんは魔族支配地域に向かって進んでいる。


「そっちは魔族の土地ですけど。よろしいのでしょうか?」


「心配しなくても我々が君たちを守るので安心してほしい」


 私たちは心配ないのですが、皆さんが危ないのではと思うわけで。私は青色の衣装に、小休憩中に着替えた。魔族支配地域に入る時は、「全身青色の衣装でお願いします」と元魔王四天王の方から言われている。


「バニラ殿、どうされました。服装がなんというか。奇妙」


「この姿ですか? 私のお友だちの好みです。慣れると妖精になった気分になれます」



 私とゆきちゃんが先頭を歩いている。剣士が「僕が先頭をって」とうるさく言ったのだけど、「私の方がこの辺りは詳しいので」っと言って押し通した。協定違反とかされると困るから。


 魔族の集落を避けて間道を選んで進んだのだけど、警備隊だろうかオーガの部隊と出くわしてしまった。ゆきちゃんがムーラ帝国の人が前に出ないように遮っている。


 やめてほしい。オーガの皆さんが片膝ついている。私は急いでオーガさんたちの側に走り寄って小声で立つように指示した。


「大魔王様がこんな間道を進まれるとは。後ろにいるのは冒険者ですか?」


「訳あって、冒険者を海岸まで連れてきた。無用な争いは避けたかったので、間道を選んだ。後ろにいる冒険者は魔族に危害を加える者たちでないことを私が保証する」


「私どもは大魔王様の護衛の任にあたりとうございます。お供が吸血鬼一匹だけでは少々心許ないと愚考いたします」


「私はお忍びなので派手な行列は避けたいのです。あなた方の好意は有り難く思います。通常任務をしっかり行なってください」


「巡回、ご苦労です」


「お言葉をいただき有り難き幸せです」だから片膝つくのはやめてほしいの。

 オーガの皆さんが左右に分かれて私たちを見送ってくれた。大魔王万歳って言いながら。


 私の称号に大魔王が追加されたようだ。おかしいでしょう。勇者でそして大魔王ってあり得ないもの。


「バニラ殿、オーガたちが大魔王万歳っと言っていましたが、どういうことですか?」と剣士が尋ねた。


「さあ、なぜでしょうね」と私は笑って誤魔化すしかなかった。

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