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冒険者たちその2

「私のシールドをあっさり抜けてくるとは。しかもなんの抵抗もなく」


「私はこう見えても王立魔法学校を優秀な成績で卒業しましたから」


「ほう、バニラ殿は貴族でしたか」と僧侶が言う。


 しまった余計なことを言ってしまった。


「ゆきちゃん、もう拳での語らいは良いでしょう! こっちは済んだし」


「もう、終わりですかあ」戦士さんかなりくたびれているから。ゆきちゃん、空気を読もうね。


「エマ殿とゆき殿がこのパーティに加わってもらえば、ダンジョンの攻略は可能ではないか?」とマジックキャスターが言い出した。


「大規模パーティでないと無理なダンジョンに私たちが加わっただけで攻略できるわけがないじゃないですか」


「そうだろうか? ゆき殿の尋常ならざる攻撃力とエマ殿の底が見えない豊富な魔力があれば可能だと思うのだが」


「お二人はそう考えたからこの古代ダンジョンに挑むことにされたのではないでしょうか?」さすが僧侶だ。話の持って行き方が上手い。


「そうなんですけど、私は虫が苦手でして。虫の多いダンジョンには入れないです」


「エマ殿が無理なら、ゆき殿を貸してもらえないだろうか?」


「私がこのパーティの攻撃の要。私の魔力切れ状態は一時間。その間をゆき殿に支えてもらえれば、前に進める」と剣士が言う。


 ゆきちゃんのお父さんとお母さんが怒ると思う。お父さんとお母さんだけではなくダンジョンで働くみんなが怒ると思う。


「ゆきちゃんどうする?」


「両親が怒るので、魔物を殺したら。里帰りができなくなるのでお断りします」


「ゆき殿、何をおっしゃっているのかまったくわかりません。なぜ里帰りができなくなるのと、ダンジョンを攻略することとが関係するのでしょうか?」


 ゆきちゃんの実家がダンジョンにあるからとは言えない。


「両親が不殺生の誓いを立てているのと、私も、魔物であろうとなんであろうと生命を奪うのは好きではなくて。もっぱらその役はエ……、バニラさんなので」


 ゆきちゃんが、私を悪者にした。


「ゆき殿は防御専門ですか。残念です」剣士が気落ちしていた。


「このダンジョンですが、太古の悪魔が住んでいると言われているのに、よく攻略しようと思いましたね」


「太古の悪魔は勇者によって滅せられたと噂で聞きました。あなた方もそれを聞いてこのダンジョンに来られたのでしょう?」


「私たちは、そのような噂は聞いていません。私たちはちょっとした腕試しです。太古の悪魔はそこそこ強い相手だと生きて返すと聞きました」実際に生きて返してもらえた。嘘は言っていない。


「所詮、噂は噂だ。適当にホラを拭いて回っている奴が色々言っているだけだろうよ」レンジャーさん、ナイスフォローです。ありがとう。


「ところで、ずっと気になっていたのですが、皆さんが付けている紋章はここら辺では見ない紋章なんですけど」


「エマ殿は紋章に詳しいのでしょうか?」と僧侶


「そこそこ詳しいかもしれません」


「古文書には割と書かれている紋章なのですがご存知ないですか?」


「そうですね。伝説の帝国の紋章に似ているかもしれません」


「天地がまだちゃんと分かれていない時代、大地震があって一夜でなくなったという帝国の紋章にですね」


「ほほう、さすが貴族ですな」とマジックキャスター。


「私、神話とか伝説が好きで学校の図書室で、そういう関係の本をよく読んでいました」


「その帝国の名は、なんとその本に書かれていましたか?」


「幻の帝国と書かれていたと思います」


「その一夜でなくなった帝国はムーラ帝国と呼ばれていました。我々はそのムーラ帝国の帝国臣民です」とマジックキャスター。


「その帝国は地震で海に没したとその本には書かれていましたけれど」


「海に没したお陰で我々は海の中で暮らすことになったんですよ!」と不機嫌そうにレンジャーが言う。


「海に没したのではなく、海の中に引きづり込まれたが、正しい言い方だと思います」と僧侶。


「誰かにムーラ帝国が滅ぼされたのですか?」


「突然のことでかなりの臣民が亡くなりましたが、滅ぼされたとは言えませんね。我々が生きておりますし、海底では我々の家族が暮らしておりますから」とマジックキャスター。


「皆さんは海底に住んでいるわけですか? 空気とかお水とかはどうされていますの?」


「海水から作ります。何の問題もありません」


「我々の先祖はこういうこともあろうかと避難シェルターを備えておりましたから」


 冗談だと思って聞いていたら違うみたい。この人たちって本当に海底で暮らしているらしい。

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