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アント教授

「ダルトン、こんな夜分になんだい。しくじったのかね。家族がどうなっても知らないよ」


 アント教授がダルトンさんを脅迫した。ちゃんと魔石に録音ができた。これは証拠になる。


「アント教授、お久しぶりです。エマです。特別医師免許を取得しました。お陰さまで晴れて医師を名乗れます」


「エマ王妃様。おめでとうございます。ダルトンどういうことだね」


「ダルトンさんは私の患者でして、早急に手術が必要なのに逃げ回りましてですね。事情を問い詰めましたら、アント教授との契約を果たさないと、と言うので、私がその仕事を引き受けることにしました。でも前金の金貨十枚は返金させてもらいますね。もらい過ぎなので」


「移植用の心臓は用意しますけど、いつ必要なんでしょうか?」


「エマ王妃、ダルトンが何を言ったか知りませんが、移植用の心臓とはなんのことでしょうか? 私の専門は内科なのはご存知ですよね」


「はい、存じております。外科の腕前も確かなこともです」


「立ち話もなんですので、どうぞお入りください」


 アント教授の家に入れてもらった。召使いだろうか? それとも用心棒かな男の人が一人だけ家の中にいた。


「エマ王妃にお茶を」とアント教授が言ってしまった。


 ディアブロさんが登場した。召使い兼用心棒の人が即座に反応してディアブロさんにナイフを投げた。見事にディアブロさんの額にナイフが刺さっている。死んだよね。間違いなく死んだよね。私は止められないから。ごめんなさいね。


 召使い兼用心棒さんの体が二つに分かれている。そして綺麗に心臓が取り出されて空中に浮かんでいた。血は一滴もこぼれていない。


「エマ様、本日のお茶はカラコラムというお茶でございます。フルーティーな香りが特徴です」


「ディアブロさん、額にナイフが刺さったまま説明するのはちょっと勘弁してほしいです」


 ナイフが消えた。何事も起こっていないみたいだけど。実際には空中に拍動する心臓が浮かんでいるし、男の人が縦に真っ二つ切断されている。私の隣でダルトンさんは失神して床に倒れていた。心臓に悪影響がでるかな。心配だ。


 私はお茶を飲み干したら、ディアブロさんは消えた。


「エマ王妃、これは一体どう言うことでしょうか」


「想定外ですが、元気な心臓が手に入りました。アント教授良かったです。これでダルトンさんとの契約は完了ということで、お願いしますね」


「小箱はありますか? アント教授」


「小箱ですか。この箱はどうでしょう」


 魔法陣ぽい装飾のあるそれらしい木箱がアント教授から渡された。私はちょこちょこと冷温保存の魔術回路図を箱の裏に書いた。その木箱に空中に浮いている心臓を入れた。


 太古の悪魔の魔法だよ。この心臓は数百年は動きそうだ。


 真っ二つにされた男の人をくっつけてみた。こちらも魔法で、心臓がなくても動く仕様になっていた。簡単な命令には従えるみたい。


「そこに座ってと男の人に言うと」


「はい、ご主人様」と言いつつ椅子に座った。


「エマ王妃、どういうことでしょうか? この者には心臓がありません。死者ですぞ」


「そうですね。人間がゴーレムになってしまいました。召使いのお仕事はできそうみたいで良かったです。それで、私は、アント教授の副業について文句は言いません。この小箱はお返ししますね」と心臓の入った小箱をアント教授に渡した。


「エマ王妃、あなたは聖女などではなく悪魔でしたか」訂正はしたいけど、ダルトンさんとその家族の安全を考えると否定しない方が良いか。


「ダルトンとその家族は私の眷属なので、もし手を出せば私は容赦しません」


「悪魔の眷属に手を出す馬鹿はいませんよ!」


「まあ良い。取引きといきましょうか。エマ王妃、心臓の移植手術を手伝ってもらいたい。私は、どうしてもこの手術を成功させたい。万一失敗したら、副反応は覚悟するのでエマ様に死者蘇生をお願いしたい。その代わり密売人組織には私が責任を持ってダルトンとその家族に手は出さないように指示します。約束します」


 お金持ちの心臓移植の手術かあ。気乗りはしないけど、アント教授が執刀する手術は見てみたいとは思う。


「良いですけど、条件が一つあります。手術はクルト診療所で行うとこと」


「承知しました。エマ様」なんだその期待に満ちた眼差しは、私はあなたの手術を見るだけのつもりだよ。



 失神したダルトンさんをフライングボードに乗せてクルト診療所に戻った。


「クルトさん、心臓移植の手術を一件引き受けてしまいました。心臓は悪魔の魔法で動く心臓を手に入れたので、それを使うつもりです」


「エマさん!」とクルトさんは絶句してしいた。

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