ミカサとウキヨエ
少々大人向けの内容が混ざってます
どうやったら同じ回路図が描けるのかとぶつぶつ部屋で独り言を言ってたら、ミカサがこれなんかどうって絵を見せてくれた。同じ絵だまったく同じ絵だけど、えええええーーーーー男の人が女の人の上に乗っているし。
「ミカサ、この絵は何」
「芸術ね。ウチの国のウキヨエって言うの、凄いでしょう」
「これってもしかしたらテーマは子作り」
「結果として子どもが出来るかもだけど、必要な知識だろう、相手が上手な人だととても気持ち良い」
6歳児が見てはいけないものを見てしまった。中身が16歳の私は興味津々なのだけど。
「ミカサお姉様は、その、もうしたの」
「したけど、相手が下手だったので痛かったから、股間を蹴り飛ばしてやったら『ひどいです』って言いながら逃げて行ったよ」
「女性への気遣いと言うか、人として尊敬出来る人でないとダメだね。たいていの男の子は、目が血走ってて、鼻を膨らませて迫って来る。そいつはボコボコにした方が良いと私は思ってる」
6歳児は聞いてはいけないことを聞いてしまった。でも中身は16歳の私は心の中にしっかりメモしておいた。
「男の子はすぐに襲って来るからダメね。その点女の子は下着を見せ合ったり、たくさんお話してからベッドに入るからリラックス出来るから良いと思いわよ」
ミカサ、それを6歳児の私に言って良いのか。私はまだ第二次性徴とかもまだだ。お腹のプニュプニュは鍛えたので、締まった体になったし、毎日校庭を走っていたお陰で足の筋肉もついた。私は6歳の児童の体ではなくなってはいる。でも、6歳の女の子に話して良い内容かどうか判断に苦しむ。
「この絵なんですけど、まったく同じ絵が二枚ってどうやって作ったのでしょう」
「私も詳しいことは知らないけど、元になる下絵を版木に彫刻刀で彫ってゆく」
「彫刻刀と言うのは」
「この国では見かけたことはないが板を掘る道具、線に合わせて様々な刃の型がある。下絵を作って裏返して板に下絵を写して板を削る。版木の完成。インクを版木に付けて、その上に紙を載せると何枚でも同じウキヨエが出来る」
回路図の下絵を描いて銅板にその図を写してから、銅板を彫って薬液を流す、あるいは下絵を初めから切り抜いておいて、ペンで切り込み部分を薬液で銅板に描くとか出来れば、魔導具の品質は向上するはず。ミスがかなり減る。これは使える。
「ありがとうございます。ミカサお姉様」
「エマの悩みが解消されると私が嬉しい」
魔導具回路研究部に来たものの、今日はとっても気が重い。私の生命を奪おうとしていた実行犯に会わないといけない。そしてその子を私の庇護下に置かないと、その子死ぬ運命だから。でも、その子が私の庇護下に入ることを拒否すれば、それはその子が自分の運命を選んだことなので、お節介は焼かない。そのつもりだけど。
「ウエルテル・フォン・フロイセン、入ります」
とっても元気な声の男の子が部室にやって来た。
「なかなか、居心地の良さそうな部室ですね。私はメンゲレ男爵家の三男で、ウエルテルと申します。父よりお聞きでしょうが、ここを放り出されると、私は父によって処分されます」
この子も父親同様、私を脅迫してるよ。
「私は魔導具全般の知識がございますので、お役に立つかと思います」
「この回路図は着火具ですね、これはいけませんね。小さく出来ない。使用回数を1,000回程度、1,000回使用したら壊れる事を前提にして、回路図を描き直すとこうなります」
ヴィクターの顔が真っ赤になっているよう。
「ウエルテル君、魔道具が壊れる前提で設計するのはどうかと思うけど」
「道具はいずれ壊れますし、壊れればまた買ってもらえます」
「魔道具は壊れない様に設計しないと、欠陥品を作るわけにはいかない」
「欠陥品ではありません。使用回数に制限があるだけ、第一クズ魔石を使うわけですから1000回使用すれば魔石に蓄えられている魔力がなくなります」
「魔石が交換できるようにすれば良い」
「そんな事をすればそれこそ仕組みが複雑になって壊れやすくなります、君はバカなの」
カオリ先輩が楽しそうにその様子を見ていた。
「エマ様、我が家ではいつも父と兄がああ言う風に言い争っています。どちらも正しいことを言っているので、平行線です」
「最後はエマ様がどう判断するかです」
最後は私が決めるのか。私としては壊れ難くて、安くて、たくさん作れるのが良いのだけど。どちらも一長一短があって悩むよ。




