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スコット大使、本国に報告する

「スコット大使はロ国の者たちがこの国に入るのを知っていたのですね」


「ロ国のボートが一隻どこかへ向かったのを見ただけで、ユータリア領に入ったかどうかは確認していません。そうですか。ウエストランドに潜入したのですか」


「逮捕されて良かったですね。王妃様」


 私はイン国大使館に来ている。大使一人だけの大使館なので、宿屋で二部屋借りて一部屋はスコットさんの寝室。もう一部屋が大使館というなんちゃって大使館だけど。



「ロ国の長官という方を逮捕しましたが、何かお聞きになりたいことはございますか?」


「とくにありませんが、いつロ国がプロシに攻め込むのかは多少気になります」


「ロ国がプロシに攻め込むのですか?」


「どちらも陸軍大国で大陸での覇権を争っていますから衝突は必然です。フツ国が混乱している内にプロシがフツに侵攻し、ロ国がその隙にプロシに侵攻する。我が国としてはプロシを支援しないと、大陸での軍事バランスが崩れるのは不味いですから」


「そんなことよりですね。私は気付いたのですよ。ユータリアに不足している物をです」


「武器ですよね」


「武器は王家からエミール銃三千丁のご注文がありましたけど、ハア。それ以上の注文は期待できません」


「スコット大使、今、エミール銃三千丁の注文が王家よりあったとおっしゃいましたが、王家にはお金がありませんが」


 王家は現在、王都周辺の直轄地からの税収しか収入がない。その直轄地もホーエル・バッハとバイエルンが徐々に進出しているので、領地自体が減少中。聖女国から融資を受けることでなんとかやってる状態なのに。銃を買う余裕があるなら聖女国の借金を返せよと言いたい。


「十年間の分割払いで、担保は王家直轄領の一部、代金は銀三千キロとなってます」


「私が一括でお支払いします」イン国の領土をユータリアに置いてはいけないもの。


「王妃様がそれで良いのなら、それで結構ですけど」


「それでですね。ユータリアに不足している物は水と食料です」


旱魃かんばつですから、それはイン国も同様では」


「我が国はとくに水も食料もさほど不足していません。海外の植民地から輸入しているので」


「問題はですね、我が国から水と食料をユータリアに送る距離です。遠いので、水も食料も輸送輸送途中に傷んでしまうことです」


「それで私はひらめいたのです。冷凍すれば良い。ユータリアには室内温度を管理する技術がある。それを貨物室に応用することをです」


「こんな風にでしょうか?」スコット大使の部屋をすべて凍らせてみた。


「王妃様、突然、部屋を氷漬けにするのはやめてください。びっくりするでしょう!」


「すみません、つい面白そうなのでやってみました」


「そうです。この部屋のように凍らせてしまえば、水も食料も輸送できる。王妃様、寒いので元に戻してもらえますか」


「あっすみません、気付きませんで」


「問題はですね、このことを報告書に書いてもですね、本国は絶対に信用しないということです」


「そういうことで、百聞は一見にしかずです。叔父の貨物船でユータリアに銃三千丁とお酒を輸送してもらいます。で、その船に冷凍室を設置してほしいのです」


「銃三千丁はわかるのですが、どうしてお酒を運ぶのでしょうか?」


「王城で売れると思ったからですが、酒飲みは新しいお酒が大好きですよね。それと強いお酒だと長旅でも傷まないという理由もありますが」


「船はウエストランドに向かうようにしてください。王都近くの港だと船を改造しにくいので」


 ウエストランドに着いても聖女国で船を改造するので手間は一緒なのだが、王都近くの港だとクランツに銃もお酒も勝手に持っていかれそうなので嫌なのだ。


「そうなんですか? そういうことならその旨手紙に書いておきます」


「スコット大使、それで冷凍室を設置する代金はいかほどを考えておられるのでしょうか? まさか無料とか、甘いことを考えているのではないでしょうね?」


「もちろんタダでお願いします。これは見本ですから、この船を見た人間は絶対に欲しがりますから。そこで利益を得られるはずです。これは僕のアイデアなので、僕としてはアイデア料が欲しいくらいです」


 スコットさんて本当に商人だわ。


「無料とはいきません。銃三千丁の代金を銀二千キロにしてください。ユータリアではすでにエミール銃改を製造中です。射程はエミール銃が二百メートルならエミール銃改は二百五十メートル。しかも魔法で狙った物に必ず当たるオマケ付きです」


「良いですよ。銀二千キロで全然問題ありません。あのう、そのエミール銃改を我が国に輸出する気はないですか?」


「今のところ、輸出する予定はございません」


「輸出できるようになったらまず一番に我が国に声をかけてください。約束ですよ」


「銃三千丁の代金は銀二千キロですね」


「少々お待ちください。これが新しい契約書です。ここにサインをお願いします」


 契約書にはしっかりとエミール銃改は先ずイン国が購入すると明記されていた。読みようによっては独占契約とも読める。


 スコットさんて本当に商売人だと思う。

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