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とある男爵の独り言

 今度は長女を事故死で暗殺、そして長男は病死に見せ掛けて暗殺とはエンドラも(たが)が外れたなあ。二女をさっさと殺せと言う命令が来ているが、私はまったく気乗りがしない。侯爵家の出身なのにその魔法は計算されて美しささえ感じる。彼女は逸材だと思う。


 長距離走の際、暗殺部隊でもトップクラスをぶつけてみたが苦もなく全滅させられた。しかも誰も死んではいない。殺そうと思えばいつでも殺せたのに慈悲を掛けられたと言って大半の連中が部隊を抜けた。本来なら始末の対象だが、誰が彼らをヤレルのか、私がするのかごめんだ。エンドラが私を殺すと言うのなら、やってみるが良い。侯爵家をこの国からなくすようなスキャンダルを流してやるから。

 

 王家は既に弱体化している。大貴族を暗殺すれば復讐されて潰されるだけだ。エンドラにはそれが見えていない。時代は変わった。金のあるものが貴族より上に立つ時代が近い。


 私とエンドラの関係はギブアンドテイクだった。しかしいつの間にかエンドラは私を自分の臣下だと勘違いし始めた。エンドラと会った当初は聡明な令嬢だったのだけれども、今は愚かとしか言えない。あれとは縁を切った方が良い。


 私はあの侯爵家の逸材と手を組もうと考えている。


「ミカサお嬢様、エマ様、メンゲレ男爵と言う方が面会を希望されています」

「メンゲレ男爵か」

「はい、その様に名乗っております。連れて行った者たちも当人だと申しておりました。カオリは僭越(せんえつ)ながらお嬢様の護衛任務につかせていただきます」


「ミカサお姉様、メンゲレ男爵とはどう言う方なのでしょう?」

「エマを襲った連中の指揮官だ」

「私を直接殺すために来た?」

「逆だ、エマの母上、エンドラと手を切って私の庇護下に入りに来たと思う」


「ミカサお姉様はそのメンゲレ男爵を庇護下にお入れになるつもりですか」

「面白い話が聞けるのでそのつもりだ」


「ミカサ様、エマ様、お目通りが叶い恭悦至極に存じます」

「メンゲレ男爵、私はこの国では客分ゆえそのような丁寧な挨拶は無用だ」

「初めてお会いします。メンゲレ男爵。エマ・フォン・バイエルンです」

「私はエマ様とは何度も会っております。お忘れでしょうか」

「私は競技場でお見かけしたようには思いますが、それ以外では」

「私、大木に登っておりましたところ、突然大木がばっさり切られて危うく死にそうになりました」

「あの節は競技中でしたので、助けに行けず申し訳ございません」

「私こそ、不調法を致しましたこと心より謝罪致します」

「それぞれ、事情がございますので、謝罪には及びません」

「寛大なお心遣いありがとうございます」

「私どもの部隊もほぼ壊滅致しました。今後はエマ様に絡むような事はございませんので、ご安心下さい」

「メンゲレ男爵、そのようなことをすれば母上がお怒りになりますけれども、よろしいのでしょうか」

「エンドラ様とは長いお付き合いでした。しかし私はエンドラ様の臣下ではありませんので、ご心配なく。第一エンドラ様の手足の大半は失っておりますから、最低でも一年ほどは動けないかと思います」


「私はしがない一介の男爵に過ぎません。どなたかの庇護下に入らないと貴族社会から追い出されてしまいます」


「それでこの国の客分たる私の庇護下に入りたい」

「私、この国の貴族には蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われておりまして、ミカサ様の庇護下に入らないと国外に亡命しないといけなくなります」


「メンゲレ男爵、面白い話が聞きたいのだが、話してもらえるだろうか」

「ある程度まででしょうね、それをミカサ様が面白いと思うかどうかは正直言って分かりかねます」

「メンゲレ男爵、護衛は必要か」

「無用でございます、これでもこの国一番の部隊の長でした」

「エマ様にお願いがございます。私には一人息子がおりまして、エマ様と同級生でございます。後ろから散々マジックアローとかファイアボルトをエマ様に放っておりましたので、頼める義理ではないのですが、エマ様の庇護下に置いてほしいと思います」


「ご当人はどう思いで」

「失敗すれば死と言うのが家法ゆえ、当人は処分待ちのため、まだ会っておりません。本人の意向は分かりません」

「エマ様が気に入ればお側に置いて、気に入らなければ当家で処分します」

「明日にでも魔道具回路研究部に、行かせます。致死毒の魔導具を作るのが得意な子です」


 ほとんど脅しなんですけど、私の側に置かなければその子は死ぬわけですよね。これって初めから断れない。

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