長官捕獲計画その3
長官さんたちを乗せた船を港の空き地に置いた。ウエルテルが念のため船員、長官さんの部下を光のロープで縛った。
木箱に入れられた製造部の人たちを保護した。ヴィクターも保護したけど、私には一言も言わずというか無視されたというか、ウエルテルに抱きついていた。
面倒くさい連中がやってきた。バイエルン秘密部隊の人たちがやってきて、この船もろとも長官さんたちを寄越せて言っている。
「バイエルン家当主レクター様は、エマお嬢様は一度だけバイエルンのわがままを聞いてくださるとおっしゃってました。お約束を守ってください」
「そうね。バイエルンは私たちに存在しない女の人を探させて、私たちが長官さんたちを一網打尽にしようとしていたのに、長官さんたちを強襲しようとしたりとか、はっきり言って応援ではなく邪魔しかしていないわけ」
「軍事機密とやらはどうぞ持って帰ってください」
「レクター様からは、男の子を連れてくるようにとの命令がありまして、男の子だけでもバイエルンに連れ帰りたいのですが」
「この子のギアスは私が封印したので、使えないです。それと私、この子が気に入ったので、美少年でしょう。臣下にしたからレクターにそう言ってね。それとも私からレクターに役立たずの部隊が送られて来て迷惑したって報告されたいのかしら」
「それはご勘弁ください。一族全員処刑されてしまいます」
レクターは名探偵ではなく暴君確定だ。
バイエルンの部隊は沢山の書類を持ち出して闇に消えた。
「長官さん、あなたの名前を教えてくれるかしら」
「私は認識番号6457329だ」
「長官は軍人なので、認識番号以外言わないように訓練されています。長官の部下も同じです」
「あなたも軍人なの?」
「私は数学者です。私の名前はルイスです。本来ならば父がこの計画に参加するはずだったのですが、参加直前に亡くなり、私が急きょ参加することになりました。父は魔術と数学の関係を研究していました」
「レヴィの弟子だな」と青い小鳥さんがポツリと言った。
「父は数式の意味を考えながら組み立て、物を浮かしたり、消したりできたのですが、私にはできません。父の研究ノートには数式が一部欠落があって、外部に父の研究が漏れても使えないようにしていたのだと思います」
「ギアスはたまたま父が研究しているところに私がいて、すべての数式を映像として記憶できました」
「お父様の研究ノートは?」
「悪用されてはいけないので、父の死後燃やしました」
「ルイスさんと長官さんとの関係は?」
「長官は父のスポンサーです。魔術ではなく科学ですけど。父は軍の学校で数学を教えていました」
「呪術のアイテムはお父様がお作りになったの?」
「祖父の先生から贈られた物をコピーして、私が少しアレンジしました。爆発するように」
「お爺さまも数学者だったの?」
「父に魔術を教えたのは祖父でした。ロ国では手品師だと祖父は見られていました」
「私は催眠術師としてこの国に連れてこられたました」
「私のギアスは私より意思の強い方、例えば長官には効果がありません。意思の力が関係しているのではと思っています」
「ルイスさん、私の先生はあなたと同じ種類の魔術を研究しているのだけど、会ってみたいですか?」
「それはもちろん会ってみたいです。けれども私って捕虜ですよね」
「長官さんたちは捕虜ですけど、さっきバイエルンの指揮官にも言ったけれど、私はあなたを臣下にしたいの」
「私のギアスはず封印したと言われましたが、そうなると私の使い道がないわけでは」
「ルイスさん、私と契約してくれるかな。私の許可なくギアスは使わないって」
「もし、私がその契約を破ったら?」
「魔法契約だから、あなたの体がボンってなります」
「契約します」
「ここにサインをして。はいこれで契約成立です」
「あのう、ルイスさん」
「何ですか? ヴィクターさん」
「この二枚の絵なんだけれど、どちらもルイスさんなの?」
「見せてください。すごいですね。どなたが描いたのでしょうか? 私そっくり」
「僕にはどちらも似ていないように思うのだけど」
「妖艶な女性は口元をお化粧で強調すると、この特徴のない女性は目元の特徴をお化粧で消した私にそっくりです」
ルイスさんはなぜかウエルテルの方を見た。ウエルテルは目を逸らしていた。




