リザレクション、番犬が番兵になる
「ヴィクターの囮計画が無理だとすると打つ手がない。
「今朝、聖女様、酒場の従業員が見つかりました。残念ながら死体で、先を越されました」
「急にお金回が良くなかった人間を捜査していたところ見つかり、今日、逮捕の予定でしたが、朝方、川に浮いているのが発見されました」
「ミーアさん、その人の死因は溺死ですか?」
「いいえ、首を絞められたことによる窒息死です。死んだ後川に投げ込まれたようです」
「それは良かったです。問題ありません。その人に色々尋ねて見ましょう」
「聖女様、死体に質問をしても答えてはくれないと思いますけど」
「死者蘇生を行います。このことは私たちだけの秘密にしてくださいね」
酒場に勤めていた男の死体を見た。綺麗に死に化粧もされていた。野良魂が男に宿るけど、ともかく情報がほしい。これでまた、私は人外に近づいてしまうけど。いまさらだし。どうせ結婚も無理だし、少しヤサグレそうになった。さてと気分を入れ替えて私は祈った。「リザレクション」
男に血の気が戻った。呼吸も始めた。
「目覚めてちょうだい、尋ねたいことがあるの」
「もうちょっと寝かせてくれ。後もう少しなんだ」
私は男の頭に水を降り注いだ。
「おい、もう少しで飯にありつけたのに」
「ご飯はあげるから、あなたが前はなんだったとかわ言わなくて良いので、今、あなたが宿った人間のことが聞きたいの」
「腹減った。あんた、なんか食わせてくれなきゃ俺は何も喋らないから」
「お肉で良いかしら」
「あっ、それでよろしく」
「おい、あんたこの肉、生じゃないけどどう言うつもり」
「自分の姿をよく見て。生肉食べたらお腹壊すわよ」
「確かに、毛もないし、尻尾もない。爪もなければ、牙もない。俺はもう生きてはいけない」
「これからは、人として生きてちょうだいね」
男は肉を一口で食べて一言「美味い」
「あんた、この肉をもっとくれよ」
「私の質問に答えたらね。あなたが今宿っている男のことを話してくれるかな」
「おお。この男の名前はゼフという。街ではそこそこ名前の通った悪党だ。その割には盗んだ物を取り上げられたり、殴られてばかりだな」
「最近までは酒場で用心棒として働いていたという割には料理私作ったり、酒を運んだりしている」
「あなたの雇い主の名前はわかるかしら?」
「長官って呼ばれている男がたぶん雇い主だと思う」
「顔はわかるかしら?」
「いつもフード付きのマントを着ていて顔を隠しているので、わからないが、右の頬に剣かナイフで切られた痕がある。
「長官という人はあなたになんか言ってなかった?」
「しばらく、姿を隠す。金はそれまで少しずつ使うようにと言っていた」
「女の人はいなかった?」
「女は一人もいない。男の子が一人いるだけだ」
「この絵姿の女の人はいないかしら?」
「女じゃない男の子だ」
「ありがとう。あなたは今からゼフという男として生きてください」
「嫌だ、俺の名前はマルクル。ご主人様が付けてくれた大切な名前だ」
「ご主人様のところに俺は戻るよ」
「マルクル、あなたね、今の自分の姿を見てちょうだい。ご主人様はきっと悲しむと思うよ」
「確かにそうだな。この姿では番犬はできないものな」
「ねえ、マルクルこの屋敷で、番兵をしてみない? ちゃんとご飯はあげるから」
「俺を飼ってくれるのか?」
「雇ってあげる」
「なあ、ご主人様、微かにだが長官の臭いがこの屋敷から臭うのだけど」
「えっ」
「俺は鼻だけは良いんだ」
「ミーアさん、今日外部から入った人がいるのかしら?」
「明日はバザールの日ですから中庭にいつもの商人たちが準備に来ています。全員身元が確かな商人ですけど」
「商人以外、その従業員、荷物の運搬業者はどうかしら」
「そのチェックは商人に任せています」
「ウエルテル、長官の狙いは何かしら?」
「当然、真水製造装置の総責任者だね」私たちはヴィクターを見た。
「エマさん、僕、下宿に戻って爆発魔道具を持ってきます」
「ヴィクターそんなことはしなくて良いのいつも通りしてほしいの」
「エマさん、僕のことを知ってますよね。僕には攻撃能力が欠けていることを」
「ヴィクターには悪いと思うのだけど、大人しく攫われてほしいの抵抗せずに。
「エマさん、僕のこと嫌いですよね」




