呪いのアイテム
「ウエルテル、呪術のアイテムを見つけたのだけど、見てくれるかなぁ」
「ヴィクター行こうか?」
「ウエルテルだけで良いよ。ヴィクターはこの部屋の片付けを」
「ヴィクターは複雑な回路図が大好きなんだよ」
「じゃあヴィクターも来てよ」
「ウエルテル、僕ってエマさんに嫌われてのかなあ」
「いや、遊ばれてるだけだと思う」
ヴィクターはアイテムを見て「性格が最悪な人間が描いた呪術図だ。でもそのお陰で解き方がわかった。ウエルテル手伝って」
一つ目のアイテムを無効化するのに一時間かかった。私は他のアイテムに影響が出ないようにこのアイテムが出す信号を出していた。後三つだ。
総務部内に二つアイテムがあった。仕掛けは一つ目とほぼ同じ。ただし一つ目と同じやり方で解除すると局長は死んでいたと思う。本当に性格が悪い人が作ったアイテムだ。昔の私みたい。
最後の三つ目のアイテムは総務部の外の地面に埋められていた。ゆっくり掘り出した。
「このアイテムって爆発系の魔道具だよ。ワクワクするね。ウエルテル」
ワクワクしているのはヴィクターだけだから。そう言えばヴィクターって爆発系魔道具大好きっ子だったよね。私もだけど。このアイテムもトラップだらけじゃないか。途中で私にはわからなくなった。ヴィクターは地面に図を描いている。
「ここだ。見つけた。エマさん、この点に見えるところを燃やして」
「大丈夫なの」
「大丈夫、でも違うところを燃やすとボンってくるから」
「威力は?」
「総務部の建物がなくなるくらい」
「総務部の部屋に倒れている人がみんな死んじゃうじゃないの!」
私はデカイファイアボルトは得意だけど、点を撃ち抜く極小のファイアボルトって撃ったことがない。慎重に狙いを定めて極小の大きさで、お願い当たってくださいと心の中で祈りながら放った。
「成功。これですべてのアイテムを完全に無効化したけど、これを仕掛けた人間に解除されたのが伝わったから、局長は狙われると思うよ」
「局長にアイテムを渡したのはこの女の人だから」と女の人の似顔絵を二人に見せた。
「エマ、局長の記憶を覗いたのか」
「まあね。そうしないと局長はギアスで死んでいたから」
「凄い美人だ」とヴィクターが声を漏らしていた。
「この美人さんですけど、外国訛りの言葉を話します。手掛かりはこの似顔絵と言葉の訛りね」
「エマ、バイエルンから人手を貸してもらえないかな。聖女国の人手不足は本当に深刻なのと、父上の元部下くらいしかこの女性は探せないと思う」
「私、バイエルンを勘当されたわけで、それとバイエルンはユータリアから独立したことになってるし、当てにはしないで」
天才児レクターが何を考えているのか、私には想像もつかないよ。バイエルンにお願いに行ったところで、私には何ともできないのだけど。行くしかない。でも憂鬱だ。
気が進まないけど、久しぶりにバイエルンに里帰りをした。お付きのメアリーが屋敷から飛び出してきて「お嬢様、大きくなられてと」抱きしめられた。メアリーは私が色々やらかしたせいで、母上にかなり叱責をされていた。お詫びした方が良いのかなあと思ったりもした。
「メアリーは今は誰についているので?」
「私がお仕えするのはエマお嬢様のみです。今は雑用係とでも言うべきか。エマお嬢様の畑、花壇係を自称しています」
「メアリー、ありがとう」なぜか涙が溢れてしまった。
「あのう、レクターに会いたいのだけど」
「レクター様は大広間でお待ちです。ハンニバル様もご一緒です」
私は大広間に入った。こんなに大きなテーブルがここにあったかしら。レクターはそのテーブルの上座に養育係の者に抱かれて待っていた。ハンニバルはその隣で立っていた。
「バイエルンから優秀な人材を多数引き抜いたエマ姉上が何のご用でしょうか?」
さすがレクター、私の訪問の意図が読まれている。諜報に長けた人材がほしいと言っても、おそらく却下だろう。
「レクター、聖女国の真水製造装置の秘密を探っていた女性について調べたいの。聖女国で捜査したいのだけど、そう言う経験がある人が少ないし、既にその人たちは限界まで仕事をしているので、これ以上仕事が増やせないの。できればバイエルンから応援がほしくて、もちろん経費は聖女国が持ちます」




