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フツ国その後、ウイル国王復帰

 私はフツ国の国境警備をやめた。私がしなくてもレオン上級大将(今は元帥)の兵士がやっているから。フツ国では、レオン上級大将の軍が貴族の傭兵軍を撃破って、平民派が貴族派に勝利した。けれども勝利の美酒を呑むことなく、レオン上級大将のクーデターで、平民派の主要なメンバーはレオン上級大将によって逮捕され、即座に内憂外患罪で処刑された。クーデター成功後レオン上級大将は自らを元帥に昇進させた。


 貴族たちは傭兵とともに他国に逃げた。貴族で残ったのは国王と王妃の二人だけ。レオン上級大将としては、国王のみの処刑で王妃は罪に問わないと宣言したのだけれど、王妃本人が夫婦ともに責任がある、国王も王妃にも責任が当然あるので二人一緒に処刑してほしいと嘆願したため、レオン元帥は不承不承ふしょうぶしょう国王、王妃、二人を同時に処刑をした。


 私は、国王と王妃にユータリアに亡命してほしいとお願いしたのだけれど、貴族たる者が誰一人責任を負わないわけにはいかないと断固拒否されてしまった。で、仕方なく、来世でも夫婦になるかそれとも家族になりたいかと尋ねたら、国王は夫婦を希望して、王妃は妹を希望した。王妃は生まれた時からあなたと一緒が良いと言ったので国王の顔は真っ赤になっていた。


 素敵な夫婦だ。うちの親もこんな夫婦だったら良かったのに。


 ユグドラシル君は「それなら双子の兄妹きょうだいにしてあげよう」と約束してくれた。これで良かったのだろうか?


 私も十二歳になった。後三年で成人になる。貴族の娘は十五歳になれば婚約してそのまま結婚ってことになっている。しかし、今の私の肩書きは王妃なわけで結婚どころか婚約も無理。


 ディアブロさんの一言が気になって仕方がない。私みたいな人間なのか精霊なのかよくわからない存在を妻にする物好きがいるかどうか? いないよね。王妃だし。聖女だし、ついでに勇者だよ。私は普通の女の子になりたかったのに。どうしてこうなった。



 書類上の夫のウイル国王がようやく政務に復帰したので、私の摂政の役割は終わった。そういうことで、気のまったく休まらない王宮から聖女国にウエルテルとグレイ君を連れて帰ろうとしたら、ウイル国王から待ったがかかった。



「エマ殿はどうぞ聖女国に戻られよ。しかし、グレイ卿とウエルテル卿は余の直臣に取立てたので困る」


「陛下、グレイ君は構いませんが、ウエルテルはダメです」


「エマ様、そんなあ僕はエマ様の臣下じゃないですか」とグレイ君が嘆いていた。グレイ君は私の友人枠ではないのでごめん。


「なぜ、ウエルテルはダメなのか?」


「真水製造装置の総責任者ですから、聖女国で溜まりに溜まった仕事をやってもらわないと余人を持って変え難しです」ウエルテルの顔から血の気が失せた。ヴィクター、一人ではやっぱり無理だったの。ごめんウエルテル。


「真水製造装置かあ。これも外交の分野とも言えるか。しかも最重要な問題。ウエルテル卿が真水製造装置の量産の目処めどがついたら王都に戻してほしい」


 ウエルテルの顔を見たら微かに首を横に振っていた。


「ウイル国王陛下、善処いたします」


「外交はグレイ卿とウエルテル卿の二人が担っている。恥ずかしい話、私の臣下は外国の使節に命令すればそれで済むと思っている者が大半。今、見どころのある者をグレイ卿とウエルテル卿が教育してもらっているところだ」


「グレイ卿、私の命令です。早く後継者を育てて聖女国に戻って来てください」


「エマ様、それって十年は戻れないですよ」


「里帰りはきっと国王陛下も認めてくださるわ。心配しないで」たぶん、きっと、おそらく、もしかしたら認めてくれるかもしれない。私にはわからないの。ごめんねグレイ君。



 ウエルテルと聖女国に向かって飛んでいる。ウエルテルにはドラちゃんに乗ってもらい、私はヴァッサなので、人に見られても困ることはない。少しはあっても良いかも。


「ねえ、ウエルテルいつ叙位じょいされたの?」


「昨日、男爵に叙位されて、一時間後に子爵に陞爵しょうしゃくされた、グレイ殿も男爵に叙位されて、一時間後に侯爵に陞爵されて、しばらく呆然としていた」


「急なお話だったのね」


「僕たちが国王の臣下に教えている様子をウイル国王が見て、臣下に尋ねたら、爵位も持たない者言うことなど聞けるかと言った人がいたので、僕たちに爵位が与えられたわけで。爵位があっても聞く気のない人は聞かないとは思うのだけど」


「爵位どうのこうの言ってる段階で終わってると、私も思うわ」


「育ちそうな人はいるの?」


「五人かな。僕たちの説明についてこれているのは。年齢って関係ないんだと思った。高齢者の人でも僕たちの説明を理解した上でさらに鋭い質問をしてくる人もいる。その人を教授にしたいのだけど、断られた」


「どうして? やってもらえば良いじゃない」


「前国王の臣下だった人で、前国王の元に行きたいからここで学んでいるだけって聞かないんだよ」

「そうかあ。じゃあオットさんに手紙を書いてもらうことにするよ。ちゃんと業績を上げたら会いに来いって」

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