ミレーヌの怒り
「なぜ、お兄様がなぜ内憂外患罪で処刑されなければいけないのですか!」
「フツ国が平和になるためにこんなに一生懸命やっておられるのに」
「レオンは私に亡命するように言ったのか?」
「はい、魔法でどうにかできないかとも」
「俺の意思を変える魔法があるのか?」
「ギアスを使えば、フランソワさんは私の命令に死ぬまで従う魔法があります」
「俺にそのギアスを使うのか?」
「私は人の意思を支配するつもりはありません」
「それはありがたい」
「ミレーヌ、エールが呑みたい。持ってきてくれ」
「承知しました。お兄様」
「エマ、ミレーヌにギアスをかけて自死しないようにしてくれ、お願いだ」
「俺の我儘にミレーヌを巻き込みたくはない。ミレーヌには長生きしてほしい。幸せになってほしいのだ」
「フランソワさんが一緒ならミレーヌさんはいつも幸せだと思いますが」
「俺たちは両親を早くに亡くして、兄妹二人きりで生きてきた。俺はミレーヌの兄でもあり父親でもあるんだ。ミレーヌだけは助けたい」
「わかりました。ミレーヌさんにギアスをかけますが、ミレーヌさんの望むギアスにします。私は魔法で人の気持ちを曲げたりはしませんので」
「ミレーヌさん、ちょっと来てください」
「はい、お兄様エールです。エマ様何かしら」
「フランソワさんにミレーヌさんにギアスをかけるように頼まれました。ギアスというのはミレーヌさんのお願いを一つだけ叶える魔法の事です」
「それなら、いつまでもお兄様と一緒でいられるようにしてください。お願いします」
「承知しました。ミレーヌさんフランソワさんと手を握って、二人ともこの箱を見てください。フランソワさん、表情が硬いですよ。笑ってください」
「二人とも死んではいけない」と私は二人に呪いをかけた。
「はい、お二人の絵姿です。この箱は写真機という魔道具です。これはミレーヌさんの写真、これはフランソワさんの分です」
「お兄様、もう少し笑ってくれないと、本当にもう二人の写真が台無しです。エマ様ありがとうございます」
「俺は、絵姿を作ってくれとは頼まなかったぞ!」
「私はミレーヌさんの願いに応えました。いつまでもこの写真のように一緒にいられるようにです」
「生きるも死ぬもお二人は一緒です」
「ミレーヌ、行くぞ!」
「どちらへですか?」
「俺にもわからないがここにいてはいけない気がする」
「私がお留守番をしてますから、兄妹仲良く行ってらっしゃいませ」
「お兄様、そんなに強く腕を引っ張らないでください。痛いです」
フランソワさんとミレーヌさんが家から出て行った。フランソワさんは海岸に向かっている。私が念のために用意をしていたボートに向かっている。ここにいると間も無くレオン将軍の部下がやって来て二人をバラバラにする。
扉をノックする音が聞こえた。
「鍵はあいてます」
「失礼する。フランソワ革命軍総司令官殿に面会したい」
「今、お散歩中ですけど」
「妹のミレーヌ殿はどこに?」
「ご一緒にお散歩中です」
「家の中を探せ」と指揮官が言うと数名の兵士が家の中を家探しし出した。
「家具とかそんなに乱暴に扱わないでください」
「大尉、いません」
「お嬢ちゃん、二人はどこに行ったのかな。痛い目にあいたくなければ素直に話すことだ」
「それは誰に向かって言っておられるのでしょうか? この状況で」
大尉の部下は全員光のローブでぐるぐる巻になって倒れていた。大尉がお腹に差した銃に手をかけたので「死にたくなければ、銃から手を離しなさい」と警告はした。
大尉は私の警告を無視して、私に向けて銃を発砲した。その銃声ともに大尉の姿が消えた。精霊の皆さんがお部屋を汚してはいけないと、生きたまま冥府に送ったみたい。
光のローブでぐるぐる巻にした兵士の皆さんを家の外に放り出して、私は二人がいつ戻って来ても良いようにお部屋を片付け、誰も入れないように家全体に結界を張った。
ミレーヌさんの件はこれで一件落着。フランソワさんは、ミレーヌさんを助けたい想いが体を突き動かすので、自分の意思で行動している。問題なしと。さて、仲の良い国王と王妃だけど、どうしたものか?
お茶でも飲んでゆっくり考えようかと思ったら、ディアブロさんがお茶を淹れてくれていた。
「エマ様、ユグドラシル様にお願いして来世でも夫婦か家族とかにしてもらえば良いかと思います。輪廻転生はユグドラシル様の担当ですから」
「ディアブロさん、夫婦じゃダメなの。あんなに仲が良いのに。私もああいう夫婦になりたい」
「エマ様には結婚は無理かと」
「ねえ、ディアブロさん、私って妻にはなれないわけなの。ちょっとそこに座って、ねえゆっくり話しをしましょうよ」
ディアブロさんはそそくさと消えた。




