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王城の悪魔

「うーーーーん。困った」


「エマさん、どうしましたか? お腹でも痛いのですか?」


「ゆきちゃん、ディアブロさんから王城には悪魔がいるから注意しろって言われたの」


「それは厄介ですね。私の作戦なんてお見通しでしょうから」


「ゆきちゃんの作戦ってまだ聞いてなかったのだけど」


「この男の子に王城の牢を案内してもらって、マリアさんの弟さんたちを助け出して邪魔をする者はブッ飛ばして逃げる」


「あのう、僕偉くないので王城の牢には入れてもらえないですよ」


「それは、問題ないから、私が邪魔をする者はブッ飛ばすから」


 ゆきちゃんの作戦は極めて単純だった。


「エマさん、皆さん、今回の任務はマリアさんの弟さんたちの奪還なので、それ以外のことにはとらわれないでください」とニコラの方を見ながらゆきちゃんは話した。ニコラは顔を曇らせながらも、うなづいた。



「王城に悪魔がいるのなら、姿を隠すローブは着用せずに正面から進軍しましょう!」


「ゆきちゃん、ケガ人や死者が増えるから隠密裏にやりましょうね」


「相手の出方次第です」


「そうね、後二日で処刑だから、いざとなったら強行突入します」


「あのう、僕はどうなりますか?」


「牢まで案内してくれたら、どこへでも行ってくれたら良いよ」


「それってかなり無責任ですよ。最後まで僕を守ってください、お願いします」


「でも、君、フツ国から出ることになるのよ」


「僕はですね、すでに祖国を裏切っているので、フツ国にはいられないのですよ。ほとぼりが冷めるまで外国に逃げるしかないわけで」


「ミレーヌさんはどうします?」

「私はお兄様の元に戻ります。私は祖国を裏切ったとは思っていませんから」


「ねえ、君ね、王都にいる革命派の兵士って何人くらいいるの?」


「僕の名前はダニエルなので、そう呼んでください。兵士は五千人程度ですが革命軍に協力する王都の市民が三万人はいますからその人数も加えて考えてください」


「三万五千人ですか。大したことはないですね」


「こちらは、女の子が四人で、なんか悪魔が一人いますけど、武装した三万五千人に勝てるはずはありません」


「ゆきちゃん、戦争をする気! あなたはマリアの弟さんたちの奪還が目的だと言っていたわよね」


「エマさんと私とマリアさんで、三万五千人程度なら生き埋めにできますけど」


「エマさん、この子大丈夫ですか? 三万五千人ですよ」


「ゆきちゃんが言っているのは最悪、それもあるかなってことだよ」


「僕の人生って十六歳で終わりとは。彼女を作っておくんだった。恋愛したかった!」


「ダニエル君、心配いらないから大丈夫だって」ゆきちゃんは平常運転だ。



 王城の悪魔がどうでてくるのかが問題だけど。でも今、悩んでもしょうがないか。




 ダニエル君の案内で王城の前に着いた。光学迷彩ローブをミレーヌさんにも着用してもらって全員、姿を隠ている。


 ダニエル君が門番の兵士に通行証を見せた。


「ダニエル坊ちゃん。もう、帰れって言われたのかな」


「そうだよ。笑いたければいくらでも笑えば良いよ」


「冗談だよ、あの街だけ報告がなかったから心配していたんだぜ」


「報告は補佐官殿にな、リーダー様はお楽しみ中だから」



「おい、ダニエル彼女ができただろう」


「何を言っているんだよ。まだだよ」


「まだだよか? 頑張れよ女の子の匂いがするぜ。俺は鼻だけは良いんだ」


「ありがとう。頑張るよ」



 無事、王城の門を通過できた。王城の庭がやけに騒がしい。


「王城の庭は見ないで進んでください」とゆきちゃんが厳しい声で言う。


 私はその声が気になって見てはいけないと言われていた庭を見てしまった。そこは処刑場だった王城のベランダ、テラスのあちこちから、人々が、貴族の女の子が引きずられて処刑台に乗せられるのを今か今かと待って、歓声を上げていた。その時、カチャット何かが私の中で外れた音がした。


 突然、王城の空は真っ黒な雲に覆われた。雲の中から稲光が見える。青い小鳥さんが何かを言っているけど、大歓声で私には聞こえない。


 気がつくと処刑場に私は立って、「この娘が何をした。答えろ。お前たち」と叫んでいた。男が一人立ち上がって「この娘は貴族の娘だ。それがこの娘の罪だ」


 私の中で押し殺していたものが爆発した。「お前たちは許さない。私は絶対にお前たちを許せない」と繰り返しつぶやいていた。雷鳴が酷い。王城のあちこちに雷が落ちている。それと私の足元になぜか氷の短剣が地面に刺さっていた。


 王城の庭は落雷に当たって半死半生の人、氷の短剣で体のそこかしこを貫かれて動けない人たちで満ちていた。まるで地獄絵図のような有り様になっていた。


「エマ、正気を取り戻せ」と誰かが言っている。

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