侍女ミレーヌその2
「お前たちが魔法使いってことはユータリアが革命に干渉すると言うことか?」
「軍団長のエマさん、ご説明をお願いします」
丸投げされてしまった。急に丸投げされるとそうかこんな気持ちになるんだ。覚えておこう。そして、今後私が誰かに丸投げした時はその人に心からの感謝を捧げよう。
「正確にいうとですね、ユータリアはまったく関係ありません。私はユータリアのフス領第七軍の軍団長でしかありませんし、今回はマリアさんの友人として、弟さんたちを救出するお手伝いをするだけです。フツ国の政治とかに干渉するつもりはありません」
「俺は国に忠誠を誓っているのでお前たちに協力する気はない」
「マリアさんの弟さんたちが王城の牢にいるのがわかっただけで十分です。そのお礼に革命委員会とかいうのを潰しておきますね」と私がいうとフランソワさんが「止めてくれ、連中も俺の仲間だ」という。仲間だったらフランソワさんの生命を狙うはずがないのに。おかしい。
「ミレーヌさん、革命委員会というのはどこにあるのですか?」
「ええと、旧市庁舎でございます」
「ゆきちゃん、このままだとフランソワさんとミレーヌさんが危ないから、外の見張りの人たちと革命委員会の人たちを迷いの森に送るのってどうかしら?」
「良いんじゃないですか? 生命を奪うわけではないので」
私は空間に穴を開けると、ゆきちゃんが見張りの人を地面から取り出して穴に放り込んだ。
フランソワさんが心配そうに「アイツら大丈夫だよな」という。
「大丈夫ですよ。食べられたりはしませんから」
「フランソワさん、革命委員会とかいうグループが今日からなくなるので、この街の平民派のリーダーに復帰してくださいませね」
「エマ様、マリアお嬢様、私が旧市役所にご案内します」
「ミレーヌ、国を裏切るのか!」
「私は私の正義を貫きます。お兄様」
フランソワさんが、地面に座りこんでしまった。
「ミレーヌさん、良いのですか?」
「お兄様ならわかってくれます」とミレーヌさんが微笑んだ。
旧市庁舎前に着いた。ゆきちゃんは市庁舎の入口に向かって歩き出した。市庁舎の警備の人が「止まれ」と叫んだがゆきちゃんは構わず歩く。警備の人が発砲したけれども、ゆきちゃんは歩き続ける。二発目の弾丸を銃に装填する前に警備の人はゆきちゃんに放り投げられ、私が開けた空間の穴にスッと入ってしまった。ゆきちゃん腕を上げたね。
旧市庁舎の中に入るとざわめきが、ミレーヌさんを見たら「なぜ生きている」って言ってるし、全員まとめて迷いの森行き。旧市庁舎全体が結界に覆われていて逃げ道なしなので、結界内にいた人は全員迷いの森に行ってもらった。
例外が一名。「僕は今日王都から来ました」って言う男の子一人は王都案内役のために、一緒にきてもらうことにした。
「やっと赴任したと思ったらまた王都って」と男の子はぶつくさ言っているけど、フライングボードに乗ってるし、歩いてないし文句を言われる筋合いはないと思う。
「エマさん、部隊がいます!」とゆきちゃんが言う。
革命委員会の人が通報したのだろうか?
「あれは貴族狩りの部隊ですよ」と男の子が教えてくれた。
「私、公爵家の娘のエマと申します。お仕事ご苦労様です」と挨拶してみたら、兵士の皆さんがニタニタした顔で私に向かって駆けてきて穴に落ちた。穴に落ちなかった兵士さんはマスカット銃で私を銃撃した。マズい。精霊のみなさんが激怒している。青い小鳥さんを見ると目をつぶっている。
局地的な大嵐になって前方にいた兵士たちはどこかに行ってしまった。おそらく行き先は冥府だと思う。精霊さんたちにがっちり私は守護されているので、私を攻撃すると冥府に行ってしまうのを忘れていた。しくじった。ニコラの顔を見たら顔を伏せていた。
男の子は「悪魔だ」とつぶやいていた。
喉が乾いた。お茶を飲みたいと思ったら、ディアブロさんがお茶の用意私してくれていた。
「本日の茶葉はフツ国で取れた茶葉でございます。少し苦味がございます」と説明してくれた。少し苦味があるけど癖になるかもしれない、そんな味わいのお茶だった。
男の子が「本物の悪魔だ」とつぶやいたのが聞こえた。私は耳だけは良いのだ。
「エマ様、王城には悪魔がいるのでご注意ください」と言ってディアブロさんは消えてしまった。




