バイエルン家当主エンドラ
長男も長女も鍛えに鍛えたけど、ここまでか。畑が良くても種の品質が悪ければこの程度が限界かしら。私の代で侯爵家から本来の公爵に陞爵するのは無理かも知れないと思っていた。二女が産まれた。顔は養子の顔に似ている。口をポカーンと開けたままだし、一目見て使い道がないと判断した。才能のカケラも感じない。名前すら付ける気にもなれなかったから、養子に任せたら、養子はやはり馬鹿だった。元婚約者の名前を付けるとはね。
あの養子の実家からお金を借りていなければ、あんな成り上がり貴族の三男なんて養子にするはずがなかった。父上があの三男は魔力量は多いし、もう少しあの家から金を貸してもらわないとやって行けないと、懇願されたから婿に入れてやっただけに過ぎない。こき使って使い捨てのつもりで家に入れた。
二女のアホヅラは見たくなかったので、好きにさせていたら、やはり父親同様に花を育てたりし始めた。マアそこまでなら目を瞑ってやっても良かった。
土に肥料として鶏糞が必要だからと自ら出向き、屋敷の食べ物と交換とはね。あれは貴族の娘ではない。あれは平民の商人と同じ。あれはバイエルン家の恥になる者。取り除くべき害虫、害虫は速やかに駆除しないといけない。しかしGの様な生命力でなかなか駆除出来ない。具体的なやり方は男爵に任せてある。しかし今度失敗すればもう我慢出来ない男爵を消そう。
養子の実家は金貸しをしていて貧乏貴族の家を乗っ取った家柄、下賤な家の出はこの侯爵家には不要、養子の親が死ねば養子に莫大な財産が入ると思っていたら、アホヅラの二女が相続してしまう。取り上げ様としたら王家の承認まで得ていて打つ手なし、いっそのこと二女を殺して奪おうかと調べたら、二女が亡くなると全額教会に寄附されるとはどこまで侯爵家を馬鹿にするのか。
弁護士のローレンスを排除しようとしたら王家と深い繋がりがあって、王家の不興を買いそうだ。それは我が家にとってはもっとも困る事態だ。公爵に陞爵するのに差し障る。それが先々代当主からの悲願なのだから。
害虫の駆除費用やらハンニバルの教育費にお金が掛かる。これ以上税金を上げると領内が騒がしくなる。領民が逃げ出し始めてる。無能な養子は何の対応も出来ないでいる。とは言え、無能を追い出すとお金が借りられなくなる。困ったことだ。
ハンニバルさえ、当主になればすべてが上手く行くはず。ハンニバルは本物の天才児、私が教えることを苦もなく覚えて行く。まだ1歳なのに本を読み出した。その内容が戦争に関するものばかりなのが少し気になるけれども。
長男は別宅に引きこもり、長女は毎日酒浸り、ハンニバル以外の子どもは全員不要だ。全員いらなくなってもまた子が出来た。長男、長女はハンニバルのための実験材料とでも思えば元は取れたか。しかしこのまま放置すると侯爵家の恥になる。男爵に命じて長女から始末しよう。長女は事故死。次は長男は病死が良い。だが葬儀が続くのは縁起が悪いかもしれない。長男は放っておいても病死するかもだけど。
アホヅラから始末する方が良いか。莫大な財産が教会に寄付されるのは業腹だけど。どの道自由にならない金などないのも同然。教会の覚えが目でたくなって公爵家への返り咲きに協力するはず、そうあってほしい。その経費と思うことにしよう。
私が学内に組織した暗殺隊にアホヅラは大人しく殺されていれば良かったのに、教師の命令に逆らって灰色熊の前に立って風魔法で灰色熊を倒したって聞いた時はびっくりした。あの熊は私が研究に研究を重ねて開発した変異体の熊で、並の魔法では傷一つつけられないはずが、バラバラに解体された。アホヅラがいつの間にそんな魔法を覚えたのか。予科に行かせてゴーモンに殺させようとしたのが裏目に出たか。おそらくゴーモンから、アイツの秘技を教えられたと考えた方が良い。
男爵には次の刺客は複数で一流どころを用意する様に指示しておこう。また、金がいる。私は毎日、毎日の金のことで頭がいっぱいだ。侯爵家に落とされて以後、王家から受ける仕事が激減した。王家からの信頼を失ってしまった。そう考えると私は生きて行くのすら苦しくなる。我が家は王家の忠実な家臣。王家とともに繁栄しなければ。大貴族たちの横暴が目にあまる。なぜ、王家は我が家にその始末を任せて下さらないのだろう。我が家は心からの忠誠を王家に捧げているのに。
害虫どもがいる間は王家からの仕事が入らないような気がしてならない。子が生まれたら本格的に害虫駆除に全力を注ごう。




