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バイエルン家当主(仮)の回想そして苦悩

父上の回想です

 私はバイエルン侯爵になってしまった。私の家は男爵家。元々は金貸し。貴族にお金を貸して富を築いて来た家。貧乏貴族にお金を貸して返済が出来なかったので、その家を乗っとった。成り上がり貴族でしかない。


 私の父は貴族の娘と結婚し私たちにはとりあえず、貴族の血が入った。兄二人は極々普通の人間で魔力もほとんど持っていない。家業の金貸し業の他、運送業、貿易商と色々手を広げていた。


 私は農業とか魔道工学が大好きでその研究者になる予定だった。婚約もしていたのだが、父上に呼ばれて、婚約者のエマとの婚約を解消する様に命令された。びっくりしてその理由を尋ねると、私の魔力量に目を付けた侯爵家から婿にほしいと命じられた。


 侯爵家には逆らえないので、お前には悪いが侯爵家に養子で入ってほしい。婚約者のエマの家には多額の解消料を支払うと言う事で了承済みだと、エマの家の格では当家に逆らえば潰されるので、了承する以外の選択肢はなかっただろう。


 妻のエンドラが事実上の侯爵家の当主で、私は雑務を担当している。お飾りの当主でしかない。



 長男、長女は妻が名前を付け、徹底的に英才教育を施して高等部を優秀な成績で卒業し、二人とも法律学部に進学した。どちらか優秀な方が侯爵家の時期当主になるはずだった。当主になれなかった者は養子に出される事になっていた。


 二女が生まれたが、エンドラは育てるのを嫌がって名付けさえ放棄したので、私はエマと名付けた。もちろん元婚約者の名前だ。エマはごく普通の幼児で、5歳になるまで基本文字もあまり読めず、平凡な娘だった。


 エマは、突然、私が昔書いた本を読みだし、植物に適した土作りをし出した。さすが、私の娘だ。とは言え根っからの貴族のエンドラには疎まれた。エマは貴族として失格、侯爵家から追放だと言い放った。


 エマは何と我が家の絶対君主エンドラに、5歳にして歯向かう様になった。その結果、貴族の子弟から恐れられている幼稚部予科に放り込まれた。



 私は、エンドラに隠れてあらゆる伝手(つて)を頼ってエマに危害が加えられない様に手を回した。私の心配は杞憂(きゆう)に終わった。予科で類稀(たぐいまれ)な魔法のセンスを開花させ、予科から高等部に飛び級をした。


 行軍訓練の際突然現れた灰色熊の変異体の魔物に正面から立ち向かったと聞いて、私は気を失いそうになった。結果はエマの魔法により灰色熊を撃退し、教師、生徒を守ったと、校長より感謝状が贈られた。しかし妻のエンドラは教師の命令に違反したのは侯爵家の名誉を汚すものだと激怒していた。


 侯爵家は王家の番犬なので、命令を絶対に遵守することが家法となっている。エンドラはエマのやる事なす事すべてが気に入らない。


 ハンニバルが生まれた。ハンニバルは本物の天才だった。なんと生後一月で言葉を話し出した。エンドラの関心はハンニバルの教育に集中した。おそらく次の侯爵家の当主はハンニバルで決まりだと思う。


 今まで、侯爵家の当主の座を争っていた長男、長女は目的を失い、長男は別宅に引きこもって本宅にはやって来なくなった。長女は当主にはなれないと思った途端に勉強を放棄し社交界で未来の夫探しを始めた。長女の性格はエンドラそっくりなので、かなり苦労している様だ。侍女にそれとなく尋ねるとお酒を飲む量が日増しに増えているらしい。


 エンドラはハンニバルに続いて妊娠した。医者によれば早産になりそうなので、周囲が十分注意する様に言われたのだけれども、エンドラに諫言(かんげん)出来る者がいないため苦慮している。


 エマから手紙が来た、6歳にして学校対抗戦の選手に選ばれたと誇らしげに書いてあった。私は嬉しくてしばらく涙が止まらなかった。


 長男の引きこもりをどうすれば良いのか、長女の日々増えて行く酒の量を減らすにはどうすれば良いのかが私の悩みの種になっている。長男、長女がエンドラの勘気に触れればエマ同様に命の危険がある。


 エマには類稀(たぐいまれ)な魔法のセンスと、私の母上が残した財産と叡智があるのでエンドラから何をされても乗り越えて行くだろう。しかし、長男と長女は容易に潰される。しかし私には何も出来ないのが歯痒い。


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