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王宮晩餐会

「モーゼル伯爵とウインザー侯爵のことを教えてほしいわけですか?」


 私は今、メンゲレ魔道具商会に来ている。



「はい、王宮晩餐会で何事も起こらないように、色々知っておきたいのです」


「エマ様、最初に言っておきますけど、二人の関係を知ると政治の世界から抜け出せなくなりますが、よろしいのですか?」


「仕方ありません。内乱もごめんですし、他国との戦争もごめんです」


「そうですか。モーゼルとウインザーは幼なじみで大の親友でツーと言えばカーの仲です」


「モーゼル派とウインザー派で常に争っていると聞きましたが」


「モーゼル派が大声を出して、ウインザー派が宥める。時によってはウインザー派が大事を出してモーゼル派が宥める。そういう関係です」



「モーゼルとウインザーが協力して王家の力を弱めてきました。エンドラが私に度々尋ねてきましたよ。なぜ王家はモーゼルとウインザーの始末をバイエルンに依頼しないのかとね」


「モーゼルとウインザーを消しても次が出てくるから意味がないと答えると、エンドラはとても不機嫌になっていました。『次が出てくればまたバイエルンが始末する』とかよく言ってました。そんなことをしたら王宮に出入りする貴族を全員始末しないといけなくなるのに」


「モーゼル伯爵領も、ウインザー侯爵領もそれほど大きな領地ではないのですが」


「鉱山ですよ、モーゼル伯爵領には銀山が、ウインザー侯爵領には金山があります」

「税金として一度王家の金庫に納めます。でもその後また自分たちの懐に戻る仕組みを作っています」


「王家はそれを黙認ですか?」


「バイエルンがいつ自分たちに襲いかかるのかがわかりませんからね」


「バイエルンは王家の忠実な番犬なのに」


「王権を簒奪さんだつしたものの潰せなくて残した家ですよ。誰が信用しますか?」


「バイエルンと暗殺対象の大貴族が潰しあってくれれば万々歳と思っているのが王家でした。今は完全に臣下のモーゼルとウインザーに国政を握られてお飾りですがね」


「皮肉な話、王家に絶対の忠誠を誓っていたのは最大の警戒対象だったエンドラのバイエルン家だけだった。今の王家に忠誠を誓っている貴族っているのでしょうかね。私は存じません」


「王宮晩餐会ですが、今回はモーゼル、ウインザーが共同して反対します。ここで自分たちの実力を他の貴族に示さないと、彼らは終わりですから」


「貴族会議の召集を求めてくるはず。まあ、エマ様ならアカデメイアに駐屯している第一軍団を王都に向けて進軍させるだけで、モーゼルもウインザーも逃げ出すので、問題にもならないですが、確実に王家の権威は地に落ちます」


「モーゼル伯爵派の貴族とウインザー派の貴族をこちらの味方につけることはできるでしょうか?」


「モーゼル、ウインザーから借りている金をチャラにすると言えば簡単に寝返ります。ただしその後が大変ですよ。エマ様、貴族たちが毎日のように金を貸してほしいと言ってくるので」


「それは困ります。返済されないお金は貸したりしません」


「貴族会議で王宮での晩餐会は行えないと決まった場合、王宮晩餐会は開催できないのでしょうか?」


「貴族会議の決定に従う義務は王族にはありません。ただ、王宮の厨房はウインザーが差配しているので、当日料理が出てこないでしょうけどね」


「そんなくだらない嫌がせを本当にするでしょうか? 子どもの嫌がらせではありませんか?」


「それをするのが貴族ですよ」


「王宮晩餐会の数日前から厨房の方には休みを差し上げましょう。もしかしたらそのままずっと休みでも良いですね、ウインザーの息の掛かった料理人は怖いですから」


「さて、エマ様今後どうされますか?」


「それを話す前に、もう一つ質問です。貴族会議で王宮晩餐会はできないと決定したのに、私が晩餐会を強行したらどうなりますか? 料理は私の方で用意します」


「貴族が一人も出席しない晩餐会になります。モーゼルとウインザーからお金を借りていない貴族は極々少数ですから」


「メンゲレ男爵、あなたも来ないのですか?」


「目立ちたくはありませんから」


「誰一人貴族の来ない王宮晩餐会ですか。それなら王妃主催の夕食会で十分ですね」


「モーゼル伯爵もウインザー侯爵もご自分たちの実力を見せつけて嬉しいでしょう。ただしその代償は支払ってもらいますけど」


「モーゼル伯爵の銀山とウインザー侯爵の金山に代理人を送ります。そのために聖女国から三個連隊を王都に寄越してもらいます」


「元々銀山も金山も王家直轄領でモーゼル伯爵もウインザー侯爵も国王陛下の代理人のはず。私物化されては困りますもの」


「代理人の護衛のために三個連隊を王都に向かわせるわけですか? でも代理人の引き受けてがモーゼル派だったりウインザー派の貴族だと意味がありませんけど」


「メンゲレ男爵とそのご友人をその候補に考えているのですが?」


「辞退します。魔道具商会が順調に成長しているのに、いつ出なくなるかわからないような鉱山の代理人なんてごめんです。それと私には友人はいません」


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