メイ国の目的
「メイ国が、今まで無視をしていたユータリアになぜ使者を送って来たのかが不思議です」
「ユータリアは海水を真水に変える装置を開発したのだから、渇水で苦しんでいる国がユータリアに関心を向けるのは当たり前だと思うが」
「ユータリア内の貴族には試作品を公開しましたが、それほど大々的には公表していません」
「私がゾーラの基調講演で話したけど」
「はい? ゾーラって何ですか?」
「一言で言うと秘密結社とでも言うものか、しかし、事務局はメイ国にあってゾーラのメンバー二人の紹介があれば入会金金貨二十枚で簡単に入会できる。年会費はランクによって金額が変わるけどね」
「ゾーラは各国の首脳のクラブみたいなものかな。それぞれメンバーがゾーラの集まりで情報交換をしている。私もゾーラの創設に関わったのだよ。初めは私と一緒にただ食事をする会だったのが、段々規模が大きくなって今のようになってしまった」
「そのゾーラの講演会で賢者様は何を話されたのですか?」
「この水不足はさらに二年間続くという、水を制するものが世界を制すると、しゃべったと思う。余談でユータリアは海水を真水にする装置を開発した。すべての国にユータリアの装置が必要だとも話したな」
賢者様がこの騒動の火を着けたわけか。きっちり責任は取ってもらおう。
「メイは新興国だけあってフットワークが軽い。イン国はメイが動いたのを知ればやって来るだろうし、インが動けばリーベンもかな」
「何ですか?インとかリーベンとかって」
「海の向こうにある海軍国家のことだ」
「賢者様、イン国の軍艦やリーベン国の軍艦がユータリアに来るっていうことですか?」
「もちろん来る。講演の後も熱心に私の話を聴きにきた」
「私と直接話せるのはスターランクの者のみ。プラーネットランクはスターの者から聴くしかない、プラーネットの国々も続々ユータリアにやって来るのは間違いない」
続々とやって来るのか。勘弁してほしい。
「たぶん、メイなら大統領の親書には大人しく装置を渡せと書いてある。で、渡さなければ攻め込むとかって書いてあるだろうよ。あの国は力づくで相手を従わせるのが国是だから」
「それって脅迫ではないでしょうか?」
「新興国ゆえ、腕力で解決したがるのがメイの悪い癖だね。品に欠ける」
品とかそんな問題ではなく迷惑この上ない。
「ユータリアはどうすれば良いのでしょうか?」
「装置をくれてやれば良い。メイならスライムを使わずに海水から真水を作るかもしれないしね」
「スライムを簡単に増やせないのがあの装置の最大の欠点だから」
「承知しました。今製造中の魔道装置をメイ国に進呈しましょう」
「メイの軍艦を一隻沈めているからそれぐらいはしても良いと思う」
賢者様、けっこう痛いところを突いてきますね。
「王妃様、メイ国の使者でペルセル海軍提督が王城前に着いたのですが、貴族と役人の一部が王宮に入れてはならないと大反対をして、クランツ王子は近衛を率いて王城の前で、ペルセル提督が率いて来た軍隊と睨みあっています」
「グレイ様とウエルテル様が至急王城前に王妃様にお越し願いたいとのことです」
「賢者様、同行していただきたいのですが、私にはおそらくさばけないと思います」
「良かろう」
「私はユータリア国王妃のエマ、こちらは私の相談役のレヴィです」
「王妃殿、これは一体全体どう言うことなのでしょうか? 王宮にて待つと言われましたが、この者たちが我々を王城に入れません」
「説明は相談役のレヴィが説明します。ペルセル提督」必殺丸投げ。
「ペルセル提督、お初にお目にかかる。ところでバルモア大統領はお元気ですか?」
「レヴィ殿、バルモア大統領をご存知か?」
「バルモア大統領が副大統領の時代からの知り合いだ、バルモア大統領に真水製造装置のことを教えたのは私なのだから、要件は理解している。会談の場所は王都のホテルで行うことになっている。王城には後日招待する予定なので、了解してほしい」
「レヴィ殿、誠でしょうね? にわかに信じがたい」
「ペルセル提督、私の言葉を信じないと言うのか。どうも二隻の軍艦がエマ様が引いた停止線を超えているようだ。提督ならわかるであろう」
「承知した、ホテルへの案内をお願いする」
「グレイ、ウエルテル、提督をホテルにご案内してください」
「王妃様、承知しました」
うわー、すごい賢者様。なんとかなったよ。
「賢者様、ありがとうございます。それでですね。ホテルって何ですか?」
「メイの言葉で宿舎のことだよ」
「宿舎で会談をするのですか。これはユータリアでは初めてのことかもしれません。グレイとウエルテルがどうするのか心配です」
「王宮には入れないのはわかっていたことだから、グレイ殿もウエルテル殿も策は打っていたよ。私にあそこで会談をすると二人とも目で教えてくれた。エマ様は有能な臣下を持っていて幸せだね」
グレイ君は私の臣下かなぁ。ウエルテルは親友で私の臣下ではないのだけれど。そんなことより私は全然気が付かなかったよ。目の前のトラブルで周囲がまったく見えてなかった。




