学校対抗戦その3
走るのって気持ちが良い。校庭を走るより、山道とかの方が変化があって楽しくなって来た。大木からファイアボルトが飛んで来たので、ウインドカッターで大木を切り倒したら、上手く逃げられなかったようで「助けて」とか言う声が聞こえた。ごめん、今競技中だから、その内、誰かが見つけてくれるでしょう。大木を切ったから叱責されるかも。でもファイアボルトを撃った人は話せないから大丈夫だと思おう。
先頭集団が折り返し地点を回って帰って来た。さすが選抜された人たちだ。でもウチの学校の生徒は誰もいなかった。もの凄く気楽になった。正選手は先頭集団に入っていない、私は補欠なのだから、楽しく走ろう。折り返し地点に着てもウチの選手とは出会えなかった。どうしたのだろう心配になって来たので、スピードを上げた、もしかして私と間違われて襲われたかも知れないから。崖下とか見ながら走ったけど、誰も落ちてはいなかった。更にペースを上げた。
いつまで走ってもウチの学校の代表選手に会えない。とうとう先頭集団の後ろについてしまった。うっかりしてみんなを追い抜いたのかも。私は笑いだしてしまった。
私ってチームメイトの顔も名前も知らなかった。もしかしたら坂道で追い越した子たちだったかも。
マズい、周囲を囲まれた。シールドが4枚目まで破られた。強い。更にシールドを張り直す。破られても破られてもシールドを張り直す。次にエアーカッターを私の周囲を旋回する様にとばした。刺客は近づけば切られるのも構わず接近してきた。一人の刺客の足を5枚の風の刃で切断した。囲みが破れたので更に風刃を増やす。足、胴体を切られて次々に倒れて行く刺客たち。
ここはさっさと逃げないと、後詰めの刺客が来るかもと、更にスピードアップ。先頭集団をあっさり抜き去った。競技場に戻った所で、競技場入口で大爆発が起こった。これって前の私がやろうとした事だわ。風の魔法で瓦礫を小さく取り除いてその穴に私は潜り込んで競技場に入った。
入口が大爆発したため観客が全員避難している。大会委員も避難誘導にあたっているので、ゴールにはテープすらないけど、余分にトラックを一周した。大笑いしているミカサに手を振ったら、手を振り返してくれた。
爆発事故が起こったことで、長距離走は無効試合になった。幻の大会新記録を私はマークした。風がとっても気持ち良かった。
着火魔道具の試作品が出来た。耐久性も高いがもの凄く大きい。専用カバンが必要になるくらい。私はポケットに入るサイズまで小さくしたい。それと一つ一つ手作りだと量産が出来ないのが問題、人によって回路図を描くのが上手い人下手な人が当然いるので、品質が一定しないのも問題だったりする。私の発想って父方の商家の発想だと思う。私は貴族ではなく、商人が適しているかも。ダメだ私は大学に進学したい。でも医学部かあ。医師と言う肩書きで薬を売る商売は儲かるかも。夢は膨らむ。けど、医学部だよね。最難関大学だ。やたら忙しいので満足に勉強が出来ない。困ったものだ。
父上から手紙が来た。母上が妊娠したこと、どうも早産になりそうで、心配しているそうだ。大丈夫だって、母上はエリザベートのお産が一番楽だったって言っていたから、あっと思ったらもう産まれていた。そう返事を書こうかと思ったけれども、私が四女の彼女に成るわけにはいかないので、心配ですねと平凡に返事を書いた。母上の判断は感謝状と懲罰室はマイナス評価の判定で帰省したら、母上からお言葉をいただくので覚悟しておくようにとの事だった。その前に生きて帰省できるだろうか。そこが問題だと思うよ父上。
私は、競技場の観客席にいた初老の紳士が気になっている。たぶん、あの人が私を始末する係だと思っている。ミカサは何も言わないので、尋ねてはいないのだけどとても気になっている。私を消そうとしている実行犯に具体的指示を出している人間のことが知りたい。
「エマ、学校対抗戦面白かったね、競技場の入口をドカンとやるのはさすがにやり過ぎだと思ったけどね」
「そうですね、あの爆発で死者が出なかったのは不幸中の幸いでした」
「私の配下がかなり取り除いてあれだから、全部爆発してたら、間違いなく死者が数百人は出ていたと思う」
母上も私と考えることが一緒だ。あと先考えず自分がスッキリすることしか考えてない。本当に我が家は雑なんだから。