調査員さん無言になる
「調査員さん、大丈夫ですか?」と言いつつ気付け薬を嗅がせた。調査員さんは自分の足元に地面がないのに気付いてまた気を失った。メンタル弱いよ。
「調査員さん、落ちる心配はないので、お願いだから意識を保ってください」
「ドラちゃん、ちょっとだけ火炎を下の無人島に吐いてみてくれる」
無人島は一面火の海に変わった。ドラちゃんのちょっとだけで、島全体が大変なことになってしまった。とりあえず雨を降らして鎮火させて、すぐに植樹しないといけない。
「調査員さん、私はユータリアに侵攻してくるメイ国の軍艦にも同じことをするつもりです。あの無人島と同様にメイ国の軍艦も燃えるかしら」完全に脅迫だね。
「それとメイ国の軍艦の砲弾はここまで届くのかしら」
調査員さんは無言だったが、顔の色は蒼白だった。
「我が国の軍艦は鋼鉄製で、木造船のように燃えたりはしない」
「中の兵士が燃え尽きたら、軍艦がもらえるわけね。ありがたいわ」
「あんたは聖女ではなく悪魔だよ」
「私は善よりも悪よりに生きてきました。私が救うのは仲間だけ、国のトップになったのでその国民も守る対象にはしています。でも国民全員を守れないし、守る気もありません」
「あなたたちにはメイ国に帰ってもらうつもりです。ユータリア侵攻へのメイ国に国益はもたらさないと報告書を書いてもらえますか?」
「私は自分の見たまま、調査結果に裏付けられた事実のみを報告するだけで、後は上の人間がそれを読んで、読まないと思うが、どう判断するかは私にはわからない」
「軍艦四隻がユータリアに向けて出港したはずで、王都近くの湾に入ることになっている、彼らに危害を加えるのはやめてほしい」
「素晴らしい情報ありがとうございます。もう少し遊覧飛行を楽しみましょうか?」
「イヤ、私はこの歳まで高いところが苦手だとは思ってもいなかったが、足元に地面がないと落ち着かない。遊覧飛行は別の人としてほしい」
空を飛ぶのは楽しいのだけど、人によっては地面が必要なのか。調査員さんには元の留置所に戻ってもらった。
軍艦四隻で王都近くの湾にか。これは王都はまた大混乱になるなぁ。変な条約を結ばれても困るし、私はカバラさんに良いようにあしらわれていつの間にかウエストランドの女王にされるポンコツだし、役に立たない自信はある。適任者は外交担当のグレイ君、グレイ君一人だと、間違いなくグレイ君はドワーフ王国に逃亡するから、ウエルテルに補佐になってもらって、後は二人に丸投げしよう。
グレイ君は私を見るなり逃走しようとしたので光のロープで拘束した。ウエルテルがやってきてびっくりしていた。
「エマ、休暇中なのだけれど、急な呼び出しってなんだい。それとグレイさんはどうして拘束されているかな」
「グレイ君は逃げようとしたから、こうなったわけで。実は二人にお願いがあって休暇中のウエルテルには悪いけどここにきてもらいました」
「僕にメイ国と外交交渉って」
「相手は軍艦でやってきてます。頭から平和的ではありません」
「グレイさんも僕も王家の家臣ではないので、その役は果たせない」
「グレイ君、ウエルテル、国王の名の下にあなた方二人を外務卿に任じます」
「ウエルテル、これで良いかしら?」
「時間がないので今、摂政代行のクランツに紹介するから、後は適当にやって。私はウエストランドに行って軍艦を連れてくるから、軍艦には軍艦でしょう」
「エマ、最初から喧嘩腰はどうかとは思うけど」
うーーん相手は初めから平和的な交渉をするつもりはないみたいだし。
「クランツ王子いますか? 緊急事態です」
「エマ、緊急事態とは何だ!」
「メイ国という国の軍艦四隻が王都近くの湾に入ります」
「その軍艦の位置は? ワイバーン部隊に攻撃させよう」クランツに外交は無理だ。
「ウチの優秀な外交担当者を連れてきたので、外交はこの二人に任せてください。クランツ様は王都ので警備を固めてください。工作員がすでにユータリア全土にいるようですから」
「ウイルの暗殺もメイとかいう国の工作員の仕業かもしれない」
勝手な憶測で判断するのはやめてほしい。
「軍艦の位置は私が調べてきます。国王陛下のお加減はいかがですか?」
「日に日に良くなっている、お前のお陰だ」私の肩を鷲掴みにするのはやめて。肩の骨が折れるよ。
「では、軍艦の位置を調べてきます」とは言え言って王宮を飛び出したものの、海は広い。広過ぎる。使い魔をあちこち飛ばしたけれど収穫なし。
ウエストランドに行ってカバラさんに相談しよう。




