グレイ君大聖女国に仕官する
「グレイ君はドワーフ王国に仕官したのね」
「ドワーフ王国では僕は客分でした。今回は帰国する理由として国王陛下から親書を託されました」
「バイエルンに戻るのね」
「ハンニバル様は私のことは忘れておられると思いますので、大聖女国に仕官したいと思っています。おそらく断れないと思いますし」
「ドワーフ国王から大聖女国について詳細に調査するように言われたわけかな」
「国王陛下からは、僕には確実に見張りが付くから、調査しないようにと言われています」
数年後、数十年後に報告するのかしら。あるいは大聖女国で出世してから恩返しかな。情報漏洩は困るけどね。ドワーフ国王とは情報の共有化をして行きたい。
「私、先日ウエストランドから戻ってきたのですが、海の向こうの国々がユータリアを狙っていると教えられたのですけど、それは真実かしら?」
「僕には答えられない質問ですが、ここまで傾いたユータリアですから、国力に余裕のある国が侵攻してきてもおかしくはありません」
「そうなんだ。グレイ君うちの外交を担当してもらえるかな?」
「僕、やっと帰国したばかりなのに、また外国ですか?」
「一週間の休暇をあげるから」
「わかりました。それで外交の責任者はどなたでしょうか?」
「グレイ君、うちって外交部門がないので一から作ってくださいね」
「グレイ君ならバイエルンともドワーフ王国とも同盟関係を密にできるでしょう?」
「エマ様、僕一人で外交部門を回せとは言わないですよね?」
「有能な人が入ればどんどん採用して、あっミーアさんの許可は取ってね」
「マジですか」
「マジです」
「グレイ君さえ良ければ、諜報部門もお願いできるかしら」
「過労で死ぬので勘弁してください」
「バイエルンから何人か引き抜きますけど、良いですよね」
「ハンニバルからの文句は私が引き受けます。優秀な人材がうちにくるのは大歓迎です」
「バイエルンとの同盟関係にヒビが入らない程度にはします」
「ドワーフ国王への返書はどうされますか?」
「技術者が育ってないのと、まだ実験段階で実用化にはもう少し時間が必要だと書いてもらえますか? 別に嘘はついていないので、調査報告書添付でも良いですよ」
「承知しました。今から取り掛かります」
「一週間、休暇してからで良いので」
「少しずつでもこなしておかないと休暇後、僕は倒れると思います」
「その時は私が治療するので安心してくださいね」
「ドワーフ王国に戻った方が僕は長生きできるかもしない」とグレイ君が言ったような気がした。そうだ。一度みんなの健康診断をした方が良いかもしれない。
「みんなさん、大聖女国では連日連夜お仕事が山盛りになっています。みんなさんは栄養剤やらを飲んで、食事も休憩も休暇も取れなくなっているのを知っています。ですから健康診断をして、過労な方には強制的に休んでもらうことにしました」
「先ずは女性から始めます」
「ミーアさん、三日間の休暇」
「ウッ仕事が溜まる」
「気にしないでください。一日の仕事量を一定にします、優先順位もつけます」
「ニコラ、三日間の休暇」
「エマ様、温室の管理が」
「オット様がします」
「マリア、三日間の休暇」
「エマ様、温室の管理は」
「父上がします」
「ダイキチさん、一週間の休暇」
「ウエストランドのこととかを調べたいのだが?」
「ウエストランドの食べ物とかを調べるのは良いと思います」
「ヴィクター、問題なし」
「エマさん、僕もかなり頑張っているのだけれど!」
「魔道具のアイデアがよくわくから、お休みはなしです」
「ウエルテル、一週間の休暇」
「一週間も私が抜けると、作業が止まる」
「ヴィクターに任せてください」
「オット様、問題ありません」
「当然だ」
「父上、問題ありません」
「好きなことをしているからね」
各部門の責任者の疲労は半端ではなかった。大聖女国には補佐する人材が本当に不足している。優秀な人材がほしい。絶対ほしい。王家の家臣には隠れた人材が多いので、本人の同意があれば、大聖女のに連れてきたい。彼らが抜けても、おそらく誰も気づかないだろうし。
ホーエル・バッハにも求人を出そうと思う。あそこは人材は多いのだけど、王家打倒にすぐにまとまるので困ってしまう。
将来のことより目先の幹部たちの過労をなんとかしないと、みんな倒れてしまう。これは医師としての判断だ。私はみんなの健康を守る責任者だから。




