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エルフの奴隷

「あれはエルフですね」

「間違いなくエルフの奴隷です。少し値段を見てきます。滅多に見ないエルフの奴隷ですから」


「お嬢様、金貨三千枚でした」

「私が購入しても問題はありませんか?」

「問題はないですが、金貨三千枚だと小さな貴族の所領が買えますよ」


 私としては何かとお世話になっているエルフのみなさんに恩返しがしたいので値段とかまったくどうでも良い。


 案内人さんが奴隷商人さんところに連れって行ってくれた。


「お嬢ちゃん、金貨三千枚即金で払えるのかい」


「今、ここでは無理ですね、明日には用意できます」


「お嬢ちゃんの他にもアレがほしいという人がいるので、既に前金を貰っている」


「既に売約済みでしたか。でしたら購入された方と交渉いたします」


「ウチとしては高く売れればそれで良いので、オークションすることにした」


 前金の意味がないじゃないか! 


「付け耳の人間は買いたくないので、本物のエルフか確かめさせてもらっても良いですか?」


「ウチはそんな詐欺はしないよ」


 商道徳に欠ける商人の言う事は信用できない。エルフが入っている檻に近寄ったら中のエルフさんが平伏してしまった。マズい悪目立ちしている。


「精霊様、申し訳ありません。このようなぶざまな姿を晒しまして、もし死ねとおっしゃるならこの場で死にます。お許しください」


「私はあなたを助けて、エルフの里に連れて帰りたいので、死んではいけません」


「里には戻れないです。外の世界が見たくて飛び出しましたから」


「アカデメイアで学部長をしているハンスさんのところはいかがですか?」


「ハンスが、どういうかですね。私、ハンスの耳をバカにしましたから」


「あなた、お名前は?」

「サラクです」


「サラクさん、どうして魔法を使って逃げないのでしょう?」


「首、両腕、両足に魔法封じのかせをはめられたので魔法が使えません」


「それって人用の枷なのでエルフの魔法を封じることはできないはずです」


「なんというか力が入らない」


「空腹ですか?」


「いつも腹は減ってます」


 周囲の人からエーテルをいただいてサラクさんにトランスファーした。


「力がみなぎってきました。これならいけます」


 サラクさんの枷がすべて砕けた。


「お嬢ちゃん、エルフに何をした。魔法封じの枷が全部砕けたではないか! エルフがこっちにファイアボルトを撃つマネをしているし」


「私たちはあの程度のファイアボルトで燃えることはありませんから。ご心配なく」


「私たちはどうなる!」


「ここは弱肉強食の悪党の世界ですから」


「お嬢ちゃん、金貨三千枚であのエルフを売った」


「奴隷商人さん、あのエルフはもうあなたの命令には従わないのでしょう?」

「金貨五百枚なら買っても良いですけど」


「足元をみたつもりか、ならば射殺すまでだ」


 商人としてこの人三流だよね。売れる商品を一時の感情で台無しにするなんて。


 奴隷商人の用心棒のみなさんが矢を放ったがすべて矢を放った人の元に戻って行った。


 私は既に風の精霊さんをサラクさんの護衛につけておいた。


「エルフの防御魔法は見事です」


 空中から「前金を返すとはどういうつもりだ。奴隷商人」と声が聞こえた。


「カバラ様、この娘がエルフを買いたいとおっしゃるので、オークションにいたしました」


「その大切な商品に矢を射掛けるとはどういうつもりだ」


「ご覧の通り魔法封じの枷がすべて砕けました。私どもに危害を加えそうでしたのでやむを得ず」


 私もヴァッサで空中に上がった。ポケットからドラちゃんが飛び出して戦闘態勢に入った。土の精霊さんも水の精霊さんもここぞとばかりに強烈に威圧を放っていた。


「娘、精霊魔法使いの上にドラゴンまで使役するとは、このウエストランドの守護者たる私の相手にとって不足なし」


 檻を壊してサラクさんが「前衛はこのサラクにお任せください」と私の前に立った。


「おい、娘、なぜエルフがお前を守るのか?」


「おい娘、ドラゴンをなんとかしろ! 街がパニックになっている」


「この国の守護者たるカバラ様がなんとかすればよろしいのでは」


「街一つ間違いなく消える。それに私の敗戦は確実だと思う」


「強烈な風で地面に叩き落とされて、大穴が開いて、その上から水が流し込まれて土がさらに上から降ってきて、ドラゴンの火炎で土が焼き固められる運命が見えた」


「カバラ様は未来視ができるのですか?」


「確定した未来しか見えない」


「私はエルフの件から手を引く。それと明後日、王宮にくるようにお願いする。ユータリア国の王妃殿、ではこれにて失礼する」


 マズい、みんなヤル気になっているのに相手が逃げた。あの山で模擬戦をして発散せないといけない。山が一つ丘になってしまった。


 街の上空に戻ると、奴隷商人さんと案内人さんが優雅にお茶をしていた。ガタイの良い人は犬と遊んでいた。


「奴隷商人さん、エルフさんをいくらで譲ってくださるのか決まりましたか?」


「金貨五百枚はさすがに無理ですから七百五十枚にします」


「8百枚で買いますから、エルフさんと案内人さんたちに貴族の従者の衣装の手配をお願いします」


「明後日、王宮を訪問するように言われたので」

 

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