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土の精霊と契約

 エルフの里に着くとすぐに歓迎の宴が始まった。歓迎の宴終了後に土の精霊のいるところに案内してくれるそうなのだが、もう真夜中になったのに宴が終わらない。困った。青い小鳥さんは私の肩から飛びたってユグドラシル君のとこに行った。悲哀を感じてしまう。


「エマ様」

「何ですか? 水の精霊のみんなさん」

「この宴はおそらく一月は続くでしょうから、私たちが土の精霊のところにご案内します」


 エルフと人種では時間の概念が大きく違っていたのを忘れていた。エルフのみなさんには悪いけれども一月もエルフの里に居られないので、こっそり退席して水の精霊さんたちの後について行った。


「ズルいわよ」と声が聞こえた。

「ズルくないものねえ」


「まあ、前座はお払い箱ってことかなぁ」

「あなたたちって相変わらず性格が悪いわね」


「ごめん、ごめん。だっていつもあんたたちだけがエマ様のお側にいるのですもの、ヤキモチを焼いて当然でしょう」


「精霊の王様も一緒なのだけど」


「なんで役立たずの精霊の王様がエマ様と一緒にいるのかが謎だわね」


「そうね、そうね」


 青い小鳥さんはここに来なくて正解だっととしみじみ思った。


「土の精霊のみんな様」

「一緒にエマ様と行きます。どこまでも」


「水の精霊と土の精霊が合わされば大地は癒されます。キョムが現れたのは知っています」

「できるだけ早く大地を癒さないとまたキョムが現れます。最初に現れたのはドラゴンの谷の大地を至急癒さないといけません」


 私は真夜中星の明かりを頼りにドラゴンの谷に舞い降りた。私は気がついた。ニコラがいないことに、私では大地は癒せない。


「土の精霊のみなさん、私、大地を癒す方法がわかりません」


「エマ様は水の精霊と一緒に一の舞、二の舞、三の舞を舞ってくださるだけで、後は私たちが大地を癒しますから」


 私は水の精霊さんたちと一緒に舞を舞わった。夜明けが来た時、元沼だったところは湖に変わり、その中央から真っ白な光が天空に放たれた。


「エマ様、お疲れ様でした」


 疲れた。お茶が飲みたい。


「エマ様、今朝は幾つかの茶葉をブレンドしたものでございます」とディアブロさんがいつものように美味しいお茶を淹れてくれた。本当に勤勉な執事だ。ディアブロさんにお給料とか茶葉の代金とか支払っていないのだけれども、このままで良いのだろうか?


「ディアブロさん、いつもありがとうございます。私、ディアブロさんにお給料も茶葉の代金も支払っていないのですが」


「エマ様の冒険者ギルドの口座から私の口座に振り込まれております」


「ただ、そろそろエマ様の冒険者ギルドの口座の残額が少なくなってきていますので、冒険者としてのお仕事をする必要がございます」


 私って勇者でそして銀のプレート持ちの冒険者だった。この近くのギルドに行って仕事をもらわないといけない。久しぶりに冒険者バニラになるのか。


 冒険者ギルドに来たものの、何だろうこの寂れ具合は、依頼の掲示板には依頼の貼り紙がまったくない。酒場で飲んでいる冒険者も少ない。


 受付のお姉さんに尋ねてみた。「すみません、銀のプレート持ちの冒険者バニラですが何か依頼はありますか?」


「冒険者のバニラさんですか? そこにお掛けになって少々お待ちください」


 お姉さんさんは慌てて事務所に入ってしまった。私、知らない間に何かやらかしていないか不安になってきた。


「バニラ様、お待たせいたしました。ギルド長が会いたいとのことで二階の応接室にご案内いたします」


「ご高名な冒険者バニラ様にお会いできて光栄でございます」

 私ってそんなに長く冒険者はやっていなかったのだけど。噂が噂を呼んだかも。

「こちらこそ、ギルド長にお会いできて光栄でございます」


「バニラ様に依頼できる案件は一つございますが、依頼者の名前は聞かないことがこの依頼の条件でございます」


「その条件、承知しました」


「この地の魔物は餌が豊富な魔王領に移動いたしましておりません」


「それは冒険者にとっては大変なことですね」


「冒険者も魔物がいないと飯が食えないものですから、魔物領に入って魔物を狩ったりして生計を立てております」


「魔族と人種で交わした協定のことはご存知ですよね」


「承知の上での魔物狩りでございます」


 マズい、協定違反になってしまう。


「この地に残っている魔物はゴブリンぐらいです。ゴブリンもこの地にはもはや何もないのはわかっているので、魔族の領に侵入して掠奪をしており、魔族に見つかるとこの地の巣穴に逃げ込みます」

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