キョム対策会議
「そう言うことでキョムというなんと言うか神よりも凄い何かがこの世界に現れました。それでみなさんのお考えを伺いたいわけです」
「エマさん、神よりすごい何かに僕たちができることってないと思うけど」
「はい、ヴィクターはキョムに呑まれます。諦めるのはダメです。つまり、みんなが何があっても諦めないで、足掻き続けるためにはどうしたら良いのかです」
「エマ、俺たちには希望も夢のあるけどよ、この国にはたくさんの人が旱魃で希望も夢もなくした。とくに王家統治の領地はひどい、俺の第六勘が次にキョムが現れるのは王家の領地だと言っている」いつからダイキチさんはスキル持ちになったのか。
「僕もダイキチさんの考えに賛成します。大聖女国民は最後はエマがなんとかしてくれると言う希望があるから、そう簡単には諦めない、けれども、王家の領民はもはや王家は一切信じていない。国教としての神の信仰もなくなった。彼ら、彼女らは絶望の淵にいる」
「だから、みんなにそれをどうしたら良いのか尋ねているわけなの」
「エマ様と私たちが王家の領民を癒せばよろしいかと思います」珍しくニコラが発言した。
「私もニコラの意見に賛成です」とマリアも賛意を示した。
「私たちと言われると、ウエルテルも僕も入るのかな」
「別に行きたくなければ、来なくてけっこうです」とマリアが冷たい声で言い放った。
「ヴィクター、もうすぐ仕上がる魔導具の完成を見たいのは僕も同じだけど、急いだ方が良いのも確かだから」
「エマさん、僕たちも行きます。何ができるかはわからないけど」
「看護師として私も当然同行しますから」とゆきちゃんが残されてはたまらないと宣言をする。
「では、明後日の朝、王家の領民を癒しに出発します」
会議終了後に「エマ、私は君に出会ったのはこれで三度目だ。三度とも王家の領地に行って領民に刺されて死んでいる」と青い小鳥さんが不安なことを言い出した。
「私が王家の領地に行くと死ぬ運命なのでしょうか?」
「今回は、エマだけではなく友人も同行する、ドラちゃんも一緒なのでこれまでとはいくつか違っている。ただ確かなことは王家の領民の中に、魔女殺しの短剣を持っている者がいる」
「十分注意をします」
大聖女国には野生の動物が居て、湖にはそれなりの水があった。国王の直轄地に近づくにつれて野生の動物は見かけなくなり、湖には一滴の水もなかった。私、けっこう頑張って王家の直轄地にも雨を降らしたのだけど、水はどこにいったのやら。
「エマ様、魔力の移譲をお願いします」
「ニコラ、ここは無人の土地なんだけれども、どうするつもりなの?」
「大地の悲鳴が聞こえます。この土地は死にかけています。今ならまだ癒せます。エマ様、どうかお願いします」
「エマ、お願い。私にも大地が悲しみに満ちているのがわかるの。ニコラの力になってあげて」
私には大地の悲鳴も悲しみも感じられない。けれども大気の悲しみはわかる。私は風属性が強いので土の気持ちに鈍いのだろう。
「ニコラ、気分が悪くなったらすぐに言ってね」
ニコラが古代の言葉だろうか? 謎の言葉を話し始めた。
「ペルマアン、コルデ、アンテクメイテ、アマバット、ガウディオ、リディオ」
なんとはなくだけど大気が心地よく感じられる。大地にも少し変化が、虫が土の中から出てきた。でも、そろそろ私の方がマズい状態になりそうだったので、ニコラへ魔力を移譲を止めた。
「ニコラ、ごめん。私が無理みたい」
「エマ様、大地に希望が戻ってきました。ありがとうございます」
「ニコラは大丈夫なの」
「はい、大丈夫です。問題ありません」
この程度の土地を癒すだけでもこれほど魔力を持っていかれるとなると、対策を考えないとダメだ。
「エマ、エルフの里に行って大地の精霊と契約するしかないと思う」
「青い小鳥さん、契約ってどんな契約をするのですか?」
「水の精霊はエマのことが気に入ったので、エマに協力している、前にも言ったが風属性と水属性はあまり相性が良くない。土族はさらに相性が悪い」
「エルフの里に行って土の精霊のところに案内してもらえ。それと私が一緒に行くとエマが嫌われるので、私はエルフの里で待っている」
青い小鳥さんは精霊の王なのに、本当に気の毒なとしか言えない。
「わかりました。私、今夜エルフの里に行きます」
「エマ、使い魔を先ぶれにエルフの里に行かせるようにな」




