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キョムって何?

「エミル君、キョムってなんですか?」


「僕の世界を餌にする生き物でも生き物でもない何か、僕を生み出した根源かな」


「僕ね、ドラゴンはほぼ無敵に作ったの。病気になっても勝手に治るし、ケガをしても時間さえかければ、元の状態に戻る。ただ数は一定程度しか増えないようにしたの」


「だからドラゴンは病気で死ぬことはありえない」


「では、元沼地で死んでいたドラゴンたちは病死ではないわけですか?」


「キョムに命を抜かれたのだと思う」


「僕もキョムには勝てないので逃げるしかないわけで」


「イアソー、キョムの痕跡を探してきて、そしてどこに行ったのか手掛かりもお願い」


「承知しました」


 イアソーさんがカラスになって飛び立った。


「僕がキョムから生まれたのは言ったよね」

「エミル君の親ですか?」


「僕はキョムから生まれて、キョムの空間は何もないうつろだったので、キョムの中に世界を作って生き物と生き物ではないものを作ったの」


「キョムはね、僕が在ることも僕が作ったものが在ることも認めない」


「キョムにしてみれば何もない状態が当たり前の状態なので、僕は異物なわけ」


「エミル君は逃げられるのですよね?」


「僕の作った世界もそれなりに広いからね、あるいは見逃してもらっているのかもね」


「私たちはどうなるのでしょうか?」

「過去幾つかの惑星がキョムに呑み込まれて無くなった」


「どうすれば私たちはキョムから逃れられるのでしょうか?」


「希望を持つこと、夢を持つ者はキョムは嫌うから、絶望しないことが一番大事かな」


旱魃かんばつで多く人が希望を失い、魔王の暴走で魔族たちが絶望したのでキョムを呼び寄せてしまったのかもしれない」


 魔王の暴走は母上のせいなのでバイエルン家、私の責任だったりする。困った事になった。


「キョムから逃れたドラゴンの赤ちゃんかあ、この子は希望だね」


「エマが育てると良いよ」


「でも、人間界の動物のミルクでは下痢をするし、大きくなったら牛一頭って私では飼えないです」


「はい、これでミニドラゴン化完了です」


「牛乳で育てられるようにしたし、人間の食事量で生きられるようにもしたし、この子が望めば本来の大きさにも一時的には成れる。言葉を話すようにすると龍の一族が怒るので、言葉は話せないけど意思疎通はできるようにしておいた」


「エミル君、私たちが絶望しなければキョムには呑まれないわけですよね」


「絶対ではないから」


「キョムに意思があるのかどうかもはっきりしないけど、嫌いなものは希望と勇気、大好きなものは絶望と悲しみなのは確かだよ」


「エマの場合は、おそらくキョムに呑まれてもどこかの惑星で死に戻っているから、存在がなくなることはないので安心だね」


「エマは輪廻の輪からどういうわけか外れているので、生まれた時からやり直せない呪いがかけられている。君って元々人間ではなかったかもしれないね、あるいは僕と同じキョムから生まれた異物かもしれない」



 私ってエミル君と同格なの。その割にできるこが死ぬけど死ねないってどんな呪いだよ。勘弁してほしい。それにしても旱魃かんばつからのキョムの出現って、この惑星は呪われている。


「沼の中央に極めて小さい穴がどこまでも続いていました」とイアソーさんがエミル君に報告していた。

「キョムはどこに行ったのかわかった?」


「また穴に戻ったと思います。キョムが通ったところはすべてなくなるので、沼の中央から出てドラゴンの生命を無に帰して、また元来た位置に戻ったようです」


「エマの抱いているドラゴンだけどうして生きているのかがわからない、ドラゴンの巣穴からなぜ離れたところにいたのかも?」


「ねえ、君どうしてお母さんたちがいる巣穴から出たのかな?」エミル君がドラちゃんに話しかけた。


「キュー、キュ、キュー」


「巣穴から落ちて、ブラブラしてたら拾われたわけね」


「キュー」


「このドラゴン君だけど、運が悪いみたいだけどとて運が良いドラゴン君みたい」


「キュ、キュキュ」


「ノリも良い子だ」


 ドラちゃんと話せるエミル君が本当に羨ましい。


「エマ、キョムがここにきたのは確かなので、この惑星をキョムから守ってほしい、よろしくお願いします」


「エミル君は?」


「逃げる先を考えておく、僕の書いている名著が失われてはいけないから」


「私たちと一緒にキョムと戦ってくれるとかは?」


「僕ね、キョムから生まれただけあってすぐに取り込まれてしまうから近寄れないの!」

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