ウエルテル、ヴィクター、ニコラそしてマリアも
「エマ、ひどいじゃないの! なんで私だけ呼ばれてないの」とマリアはかなりお怒りモードだった。
「エマ様、申し訳ありません。たまたまうちにマリアが遊びにきていまして」とニコラが謝っていた。
「マリアはみんながきてくれたら呼ぼうと思っていたわけで、マリアごめんなさい」
「おや、エマは僕たちがエマの頼みを断るかもしれないと思ったわけだ。かなり心外だ。そうだよね、ヴィクター」
「エマさんの頼みは最優先にしているのに、少し水くさいね、ウエルテル」
「確かに」
「エマ様がしょげていらっしゃるので、もうその辺でやめてあげてください」ニコラ偉い。大好きだよ。
「そのみんなもそれぞれの道を歩き出したので、邪魔はしたくなかったわけで」
「そういう気遣いは僕たちには無用だから」とウエルテルがトドメを刺してくれた。嬉しくて勝手に涙が溢れ出した。
「もう、男の子には女の子の繊細な気持ちがわからないのだから」
「エマ、みんな、あなたに協力がしたいのよ」
「ありがとう、マリア」
「ウエルテル、ヴィクターは海水を真水に変える建物内を一定の温度に調節する魔道具の開発をお願いするわ」
「ニコラとマリアは冬に栽培する野菜の管理をお願いします」
「エマ、その建物だけどまさかとは思うけど、あの五回建の建物?」
「そうだよ」
「ヴィクターどう思う」
「クズ魔石ではすぐに魔力が尽きる。魔獣クラスの魔石が最低でも百個はほしい」
「冬に野菜ってどうやって栽培するの?」
「エマ、あの建物に僕たちを案内してくる? 中がみたい」
私はウエルテル他三名を率いてスライムの建物を案内した。
「エマ、このスライムが入っている容器だけを温めるのはダメなのか?」
「それが海水を直に温めるとスライムが死んじゃうの。たぶんこのスライムって温める際に出る光の影響かもしれない」
「建物全体を十八度にするとスライムたちは一番活性化する習性なのがわかったの」
「そう言うわけで建物全体を十八度に保ちたいわけで」
「ヴィクター、この建物の中を回ってみようか」
「かなり大変だと思うね、ウエルテル」
ニコラとマリアはこっちにきてくれる。見せたいものがあるの。と言ってニコラとマリアにガラス製の温室に案内した。
「オット様、助手を連れてきました」
「エルヴィンの娘、お前の作った自動水やり機は便利だ。王宮の花壇にもつけたい」
「承知しました」
「ニコラ、マリア、こちらはオット様で私の父上の友人なの。冬に野菜を栽培する計画の責任者です」
「オット様、マリアと申します。よろしくお願いします、土魔法が使えます」
「オット様、ニコラと申します。よろしくお願いします。回復魔法が使えます」
「ワシはオットだ。マリアは貴族のようだが、野菜作りが仕事だが良いのか?」
「私は確かに貴族ではございますが、国が危機になっている際に身分がどうのなど、狭い了見は持っておりません」
「大変けっこうだ」
「エルヴィンの娘、二人とも合格だ」
「ありがとうございます。オット様」
「ねえ、エマ、私ね留学した際に国王陛下からお言葉を頂いたのね、なんとなくだけど、その時の気分になったの?」
「まさかだよね」
「オット様は前国王陛下だから、マリアは思い出したんだ。凄いね」
「エマ様、まさかオット様って国王陛下ですか?」
「ニコラ、前国王陛下と言ってほしかったね」
「ウッソーー」となぜか二人そろって唱和していた。二人は本当に仲が良い。
「じゃあ、私はこれで失礼いたします、オット様」
「エマ、私たちは?」
「オット様の指示に従って働いてくださいませ」
「エルヴィンの娘、王宮に自動水やり機頼んだぞ」
「お任せください」
マリアとニコラが私に助けを求めているような気がするが、気のせいに違いない。私はとっとと温室を後にした。
「エマ、魔物狩りに行くから同行をお願いしたい」
「エマさん、できればドラゴン級の魔石がほしい」
「ワイバーンとかグリフォンではダメ?」
「ダメではないけど一週間で魔力が尽きるし、この辺りからワイバーンもグリフォンもいなくなってしまって自然のバランスが崩れるので避けたい」
ドラゴン退治か? 小龍君を思い出ししまう。いけない、最近忙しくてお稽古に行っていないことを思い出した。
「ウエルテル、ドラゴンって大聖女国にはいないと思います」
「大聖女国の西、魔族の支配地域にドラゴンの谷がある」
「魔族の支配地域にあなたたちが立ち入ると魔族と結んだ協定をやぶることになるかも」




